反映されなかった幻の条文というものがあるので、ご紹介したいと思います。
現在の日本の状況を鑑みると、これらの条文が削除されたのは、
かえすがえすも残念になってきます。
https://twitter.com/ramuyaman/status/330188925001936896
https://twitter.com/ramuyaman/status/330189105243774977
幻の草案第19条。
「妊婦と乳児の保育にあたっている母親は、既婚、未婚を問わず、国から守られる。
彼女達が必要とする公的援助が受けられるものとする。
嫡出でない子供は法的に差別を受けず、法的に認められた子供同様に、
身体的、知的、社会的に成長することに於いて機会を与えられるものとする」
これ、ベアテが一生懸命書いたんだけど、
民政局の男性スタッフに消されちゃったんだって・・・・・・。
前半は母性の保護です。
この条文があれば、妊娠や出産をしたあとの職場復帰も
いまよりもっとやりやすくなっていただろうと思います。
保育所の充実や育児に関する手当ても、もっと熱心に導入されていたでしょう。
当節流に言う「少子化対策」が、もっと進められていたわけで、
出生率の低下ももっと小規模にすんだのではないかと思います。
とくに「既婚、未婚を問わず」と明記されているのが特徴的だと思います。
事実婚夫婦やシングルマザーの生活も保障するわけで、
ライフスタイルの多様性が実現していたことが予想されます。
子どもが産まれてもすぐに婚姻届けを出さないという、
現在の北欧諸国にありがちなタイプのかたも、もっと多かったでしょう。
後半では、婚外子差別をはっきりと禁止しています。
この条文があれば、法律婚の妻の立場を守るために、
婚外子の相続差別に転嫁する現行民法は憲法違反となりますから、
GHQに許可されなかったことになります。
ベアテ・ゴードンは、ご存知のように子ども時代に日本で過ごし、
日本女性が権利を保障されない悲惨な存在であることを見てきたので、
それを強く意識して、現行憲法の24条を書いたのでした。
草案で婚外子差別を厳格に禁止する条文を書いたのは、
日本人の家庭の中では、婚内子、庶子、私生児が
複雑に対立していた事情も、おそらくよく知っていたのでしょう。
ベアテ・ゴードンのこの草案は、民政局の男性スタッフによって
削除されるという、とても残念なことになるのでした。
彼らは日本国憲法に入れるのに、なにが好ましくないと考えたのか
という問題がありますが、1940年代の当時は、
女性の妊娠・出産と仕事の両立や、婚外子差別に対して、
欧米の民主主義国でも理解がなかったことはたしかでしょう。
かかるライフスタイルの多様性に対する理解が出てくるのは、
欧米の民主主義国でも、1980-1990年ごろになってからのことです。
ベアテ・ゴードンの幻の草案は、グローバルスタンダードの
40-50年先を行っていたことになります。
将来、先進国がライフスタイルの問題に直面することを、
1940年代当時に見越していたのかもしれないです。