2013年06月09日

mar0006.gif日本の人権外交の実態

5月21-22日にジュネーブで、国連の拷問禁止委員会の
第2回日本政府報告書の審査が行なわれたのでした。
そのときの様子、とりわけ日本政府側の代表である「人権人道大使」の
上田秀明氏の態度がすさまじかったので、お話したいと思います。

「日本の刑事司法は『中世』か」
(はてなブックマーク)
「上田人権人道大使に見る、世界に恥ずかしい「人権外交」」
「日本政府代表 国連で「笑うな、黙れ」」

 
日本の刑事司法は、取り調べの可視化が議論になることも
しめしているように、国際的にも立ち遅れが目立ち、
拷問委員会からきびしい勧告がいくつも出ています。
取り調べに弁護人の立ち会いがないとか、取り調べ時間が無制限とか、
冤罪を生み出す素地が多く、虚偽自白、起訴前拘禁などの問題もあります。

委員からの質問に対して、日本側の代表はといえば、
いつも通りの「官僚答弁」でのらりくらりだったのでした。
条約を守って国内状況を改善しようとする誠意や意志が
おおよそ見られないものであり、委員たちをいら立たせるものでした。
かかる日本代表の態度は、国連のどの委員会の審査でも
おなじ調子なので、容易に想像できると思います。

「「人権後進国」日本  言葉が通じない国として国連でバカにされている」


そこへアフリカのモーリシャスのドマー委員が、的確なコメントを入れます。
「自白に頼りすぎではないか。これは中世の名残である。
日本の刑事手続を国際水準に合わせる必要がある。」

日本の刑事司法は、なんと「中世」と言われたのですよ。
ところがこれを聞いた上田人権人道大使は、なにを思ったのか
「日本は人権先進国のひとつだ」などと言ったのです。

この発言を聞いた会場の参加者たちは、あきれて物も言えなかったのでしょう、
声を押し殺して苦笑する雰囲気をしめしたのですよ。
そうしたら上田人権人道大使は、「なぜ笑うんだ、笑うな、
シャラップ、シャラップ!」と叫んだのでした。


「中世」と言われたら、そのコメントを真摯に受けれいて、
日本のひどく遅れた刑事司法制度をなんとかしなければと
深刻に考えるのが、こうした場で求められる態度のはずです。
そこへ「日本は人権先進国」なんて、まるで無反省で
開き直ったことを言うのは、どういうつもりかと思います。

日本の人権意識の程度が現れたということでしょう。
「小池振一郎の弁護士日誌」のエントリにもありますが、
「アフリカの委員なんかに言われたくない」という気持ちが
あったことも考えられます。

「笑うな、シャラップ!」の見苦しさには、ことばもないです。
上田氏はなにが問題なのか、本当にわかっていないのでしょう。
委員のかたたちは、日本はこういう代表を送るから
こういう刑事司法制度なんだと、むしろ納得したかもしれないです。


これをご覧のかたでしたら、「日本は人権先進国」なんて
言う人がいたら、なにをうぬぼれているのかと思うでしょう。
民法改正だって、女性差別撤廃委員から毎回おなじ勧告を
受けていて
、あまりにひどいのでフォローアップまで
要求されているのに、一向に改善する見込みがないからです。

勧告を守って国内の人権状況を改善する気がぜんぜんないのに、
いったいどこが「人権先進国」なのかと思います。
現に、この拷問禁止委員会の日本政府報告書の審査でも、
日本代表は誠意のない「官僚答弁」をやったばかりです。
会場が失笑するのも当然だと思います。

しょせん日本は「経済だけ発達した開発途上国」なのかもしれないです。
ちなみに韓国は、国連の各種委員会の勧告を守って、
国内の人権状況をどんどん改善させています。
アジアの「人権先進国」という観点から言えば、
韓国はすでに日本を追い越してきているそうです。


上田氏を批判するのは簡単ですが、じつは「ふつうの日本人」の感覚も、
上田氏と同程度ではないかという気が、わたしはしています。
「日本は人権先進国のひとつで、アフリカ人なんかに
批判されたくない」と思っているのではないか、ということです。
その意味で上田氏は、日本社会全体のうぬぼれを代表したのでしょう。

日本はいつのまにか国際社会から取り残されたのですが、
多くの日本国民は気がつかずにいるのではないかと思います。
このあたりは、人権条項に関して国際社会から
日本は手厳しく批判されていることを、日本のマスメディアが
積極的に報道しないことも、手伝っていると思います。

posted by たんぽぽ at 18:19 | Comment(8) | TrackBack(0) | 政治・社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
たんぽぽ様
なんじゃ、こりゃ????ですな・・・読んだだけでも絶句してしまいました。

下記サイトに、日本政府が「人権人道大使」に求めている役割について、以下の通り書かれています。
http://blogs.yahoo.co.jp/jnicc_org_tk05/64054929.html
===
「人権人道大使」という役職が第一次安倍内閣の時代に創設され、・・・(略)・・・しかし
創設された理由は、日本の人権外交を「推進」するためではなく、これを「擁護」するためだ。
即ち、人権人道大使は人権人道スポークスマンなのだ。
===

日本の人権意識が「中世」と言われたからこれに噛み付いた、と言う上田なにがしの行動は、「日本における人権人道大使に求められる職責」にあくまで忠実であった、と言うことらしいです。
根本からズレてるということですかね。超場違いとでも言うか・・・んなの、笑われるに決まってんじゃん。
笑われているのは、この上田なにがしだけではない、そこに垣間見える日本政府の人権外交方針そのものと言うことですな。

こんなんじゃ、北朝鮮拉致問題なんて、解決する訳がありません。少なくとも国際社会の支援はあり得ないでしょう。
諸外国から見たら、もはや非人道国家同士のいがみ合いにしか見えませんよ。チンピラ同士が街で喧嘩してても、誰も仲裁には入ろうとしませんよね。

追伸:東京新聞には記事が出たようです。下記参照ください。
http://blogs.yahoo.co.jp/jnicc_org_tk05/64047421.html
Posted by ニャオ樹・ワタナベ at 2013年06月10日 12:48
この件は、何というか日本の外交の総体や、日本社会の人権認識そのものの拙さを象徴しているな、と思いました。
…が、まとめきれる気がしなかったので(嗚呼)、ここでは北朝鮮拉致問題と慰安婦問題を絡めて具体的な話をしてみたいと思います。

たんぽぽ様もニャオ樹・ワタナベ様も、慰安婦問題については

「元慰安婦は全てが「狭義の強制連行」をされたものではない(寧ろ、朝鮮半島では少数派)」
「しかし、強制連行が「狭義」か「広義」かは本質的な問題ではない」

というところは共有されているかと思います。

実は、北朝鮮拉致問題も同じで、

「甘言により海外へ連れ出された後、北朝鮮に送りこまれた」

ケースも、警察庁は拉致被害者として認定してるんですね。
慰安婦問題否認論者が使う「狭義の強制連行」「広義の強制連行」の定義にあてはめるなら、これは「広義の強制連行」ならぬ「広義の拉致」であるにもかかわらず。
(まあ、警察庁は慰安婦問題に首突っ込んでないかな…)

これらは吉見氏が『日本軍「慰安婦」制度とは何か』の13〜14ページで書かれていたことなんです。

「この北朝鮮拉致被害者が認定されるなら、従軍慰安婦の人達の被害も認められるべきである」

みたいな流れで。
(吉見氏は、この手の発言を何度かされているようです)

これ、逆のことも考えることが出来ます。

「日本が河野談話を見直し、「広義の強制連行」の加害性を否認するような新しい談話を出した場合、「広義の拉致」による拉致被害者を救うための普遍的な論理を日本は打ち出せなくなる」

まあ、当然ですよね。自国の「広義の強制連行」の加害性を否認しておいて、他国の「広義の拉致」を非難するって、どんなダブスタだよって話ですし。
「「広義の拉致」なので対応の必要なし」
と返されたらどうするんでしょうか。

全部の国が自国に都合の良いダブスタを振り回したら収拾がつかなくなるし、何よりそれが行くところまで行って戦争になった場合、現代の軍事技術では色々シャレにならないんですよね。
だからこそ、

・飢える人を出来るだけ少なく
・理不尽な暴力にさらされる人を出来るだけ少なく

みたいな建前を指針として共有し、その中で腹芸やるのが現代の外交なわけで。

日本の様々な人権問題(最低賃金のことも指摘されてましたよね)に関する勧告と、それに対しての日本政府の振る舞いを照らし合わせると、

「この国の政府とは「建前」を共有できてないんじゃないか」

と警戒されるのも至極当然ですよね。
…というか、日本の有名無名の言論(大手メディアからねっとまで)を見ていて、貧困に対しての冷淡さとか見ていたら、単に政府上層だけにとどまる問題ではない、ということも…日本通の外国の方なら普通に分かってそうなのが、凄く、頭を抱えたくなります。
Posted by 七重 at 2013年06月11日 02:23
ニャオ樹・ワタナベさま、
このエントリにコメントありがとうございます。

>なんじゃ、こりゃ????ですな・・・読んだだけでも絶句してしまいました

日本が国連の各種委員会からの勧告に不誠実なのは、
いまに始まったことではないんだけどね。
ついにここまで来たかというか、なるべくしてなったのでしょう。


>http://blogs.yahoo.co.jp/jnicc_org_tk05/64054929.html
>日本の人権意識が「中世」と言われたからこれに噛み付いた、
>と言う上田なにがしの行動は、「日本における人権人道大使に求められる職責」に
>あくまで忠実であった、

ご紹介ありがとうございます。これは恐れ入りましたね。
どうりで国連からなにを言われても、自己正当化の居直りしか言わないわけです。

>こに垣間見える日本政府の人権外交方針そのものと言うことですな。

第一次安倍内閣のときに作られたポジションですからね。
(ある意味安倍らしいと言えるけれど。)

でも、「ふつうの日本人」の感覚が、じつはこの程度なのではないかと、
わたしは思うのですよね。
「日本政府の人権外交方針」は、「ふつうの日本人」の
人権意識を反映しているのではないかと思います。


>東京新聞には記事が出たようです。下記参照ください。
>http://blogs.yahoo.co.jp/jnicc_org_tk05/64047421.html

ご紹介ありがとうございます。
って、わたしも記事を見つけて、エントリでリンクしたけど、ね。
http://twitpic.com/cvbxcw
Posted by たんぽぽ at 2013年06月11日 08:49
七重さま、こちらにコメント、ありがとうございます。

>何というか日本の外交の総体や、日本社会の人権認識そのものの拙さを象徴しているな、と

わたしもそう思います。
「笑うな、シャラップ!」は、日本社会全体の人権に対する
意識の現れであり、上田秀明氏はそれを代表したのだと思います。
上田を批判するのは簡単だけど、「他人ごと」ではないのだと思います。

>「日本が河野談話を見直し、「広義の強制連行」の加害性を否認するような
>新しい談話を出した場合、「広義の拉致」による拉致被害者を救うための
>普遍的な論理を日本は打ち出せなくなる」

北朝鮮の拉致問題では、「広義」と「狭義」の区別なんてしないのですよね。
そのあたりについて、ちょうどこんなツイートがありますね。
http://bit.ly/14vznFP
http://bit.ly/13zOmM2

ようは、自分が被害者のときは、声を大にして被害を訴えるのに、
自分が加害者のときは、矮小化して責任逃れをするということですね。
そういう日本のダブルスタンダードを、国際社会が問題視するようになれば、
拉致問題で日本を支持・協力する国はなくなるかもしれないです。


>・飢える人を出来るだけ少なく
>・理不尽な暴力にさらされる人を出来るだけ少なく
>みたいな建前を指針として共有し、その中で腹芸やるのが現代の外交なわけで。
>「この国の政府とは「建前」を共有できてないんじゃないか」
>と警戒されるのも至極当然ですよね

「日本はかかる指針を共有していない」という認識が、
国際社会で定着して、「日本はもはや異質」と考えるようになったとき、
国際社会は日本に対してどのように扱うかですよね。

>日本の有名無名の言論(大手メディアからねっとまで)を見ていて、
>貧困に対しての冷淡さとか見ていたら

「自力で生きていけない人たちを国や政府は助けるべきだとは思わない」
という人が日本には38%もいて、自己責任の国と言われる
アメリカよりも割合が高いのですよね。
https://twitter.com/alicewonder113/status/266903327671988224

最低賃金のことは、社会権規約委員会から勧告が出ていますね。
生活保護の切り下げによって、ますます最低賃金が下がる恐れが出て来ます。
http://kotayan.seesaa.net/article/365267086.html


>ということも…日本通の外国の方なら普通に分かってそうなのが、

わたしもそう思います。
とくに最近は、女子柔道の暴力事件、峯岸みなみの丸刈り事件、
猪瀬都知事の「イスラムは喧嘩ばかり」発言、
橋下の「慰安婦必要」発言と、国際的に注目されることが
立て続けに起きていますから、日本の人権事情についての理解が
広まっているのではないかと思います。

そしてわたしがもっと問題だと思っているのは、
日本国内でこれらがあまりはっきり認識されてないことですね。
日本のメディアは人権事情の立ち遅れを大きく取り上げないですからね。
日本人がはっきり知らないまま、外国人ばかりがよく知っている、
という事態になっていくかもしれないです。
Posted by たんぽぽ at 2013年06月12日 09:05
日本に生まれたこと自体が不幸と最近、私強く思います。
アジアの人たちに対する差別、同和問題、そして、忘れがち(これが国の意図)であるアイヌ民族、沖縄のこと、女性、子供の人権。言い出したら、まだまだある。労働者の人権も。
人の足を踏んでいる側は、踏まれた者の痛みはわからない。
日本の人権意識が、あまりに異質と思う。
Posted by モモチン at 2015年09月09日 12:18
モモチンさま、いらっしゃいませ。
わたしのブログにコメント、ありがとうございます。

>日本の人権意識が、あまりに異質と思う

「シャラップ上田」のようなのんきな(?)認識は、
とくに国内メディアが日本の人権状況について、
あまり報道しないことがあると思います。

それで「日本は経済大国なので、人権水準も高いほうなのだろう」
なんて漠然と思っているのかもしれないです。
こんなこともありましたし。
http://taraxacum.seesaa.net/article/422481171.html


人権概念自体を適切に理解している人が、日本には少なそうですね。
「自分の尊厳や生活を守るためのもの」という意識がとぼしく、
「他人さまのために配慮を要求される、面倒な約束ごと」
くらいに思っている人が多いのかもしれないです。
このあたりは教育の不徹底が原因だと思います。
Posted by たんぽぽ at 2015年09月09日 21:59
たんぽぽさま、いろいろご教示いただき、ありがとうございました。大変参考になりました。
実は、9月の連休谷間に旭川に行くのですが、旭川旅行にあたり、アイヌ民族のことに興味が沸き、自分なりのちょっとした研究をしてみました。私もアイヌ民族の置かれた境遇等をほとんど知りませんでした。ネットで調べただけでも、迫害、差別の激しさを知り、こんなことも知らない自分が恥ずかしいの一言です。大阪府下で育ったために、差別の問題は、多少は、知識と自分なりの「問題意識」はあると思っていたのに、です。まさに知らないことは、「罪」です。
旭川市内に「川村カ子トアイヌ記念館」、「アイヌ墓地」、「知里幸恵資料館」等があり、回ってみるつもりです。

ANAのマイルを貯めて、海外(フランス、ドイツ)に行く夢を持っていましたが、今年は大変な円安で断念しました。せっかく貯めたマイルなので、せめて有意義に使いたいと思い、一部だけを使い、旭川へ、アイヌ民族についての見識を広めるための旅です。

たんぽぽさまもこのページをご覧の方も、ぜひご感想を伺いたいです。
Posted by モモチン at 2015年09月10日 21:12
モモチンさま、またコメントありがとうございます。

>9月の連休谷間に旭川に行くのですが、旭川旅行にあたり、
>アイヌ民族のことに興味が沸き、自分なりのちょっとした研究をしてみました

ご旅行なのですね、行ってらっしゃいませ。
ご自分の研究をかねての旅行なのですね。
実りあるものになることを祈ります。

>大阪府下で育ったために、差別の問題は、多少は、
>知識と自分なりの「問題意識」はあると思っていたのに、です。
>まさに知らないことは、「罪」です

差別問題といってもたくさんありますから、
すべてについてくわしくなるのは、難しいと思います。
問題意識を持って、自分なりに調べてみようという姿勢になることが、
大事なのだろうと思います。


>ANAのマイルを貯めて、海外(フランス、ドイツ)に行く夢を持っていましたが、
>今年は大変な円安で断念しました

それはとても残念ですね。
かわりに研究旅行に行くことになったのも、
なにかのおぼしめしなのかもしれないです。
Posted by たんぽぽ at 2015年09月11日 21:46
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