国連の拷問禁止委員会で第2回日本政府報告書の審査があり、
そのとき日本の刑事司法は中世並みと言われたことを、
6月9日エントリでお話したのでした。
この審査では従軍慰安婦問題に関する勧告もありました。
「政府や公人による事実の否定、元慰安婦を傷つけようとする
試みに反論するよう」というコメントもあったのでした。
ここには橋下大阪市長の「慰安婦必要」発言も意識されています。
「慰安婦中傷の阻止勧告 「法的な責任を認め、関係者を処罰する」よう
国連委、日本政府に」
「慰安婦問題、国連委が勧告 「日本の政治家が事実否定」」
「国連委、慰安婦中傷の阻止勧告 日本政府に要求」
ところが驚くべきことに、安倍内閣は6月18日に、
この拷問禁止委員会からの勧告は「法的拘束力を持つものではなく、
締約国に従うことを義務づけているものではない」とか
「日本政府の立場は何回となく会見している。
政府として改めて発言することはない」などと言ってのけたのですよ。
しかも答弁書に書いて閣議決定までしているのです。
「慰安婦めぐる国連委勧告「従う義務なし」 安倍内閣」
(はてなブックマーク)
「国連勧告、従う義務なし 答弁書閣議決定」
「【東京】緊急院内集会:国連勧告「従う義務なし」に異議あり!
国際人権基準に背を向ける国・日本」
条約に批准した以上、締結国は委員会からの勧告に従って、
国内の法律や制度を整える努力をする義務があるはずです。
なにを開き直ったことを言うのかと思います。
ここまで傲慢なことを言うようになったかと、わたしは思いましたよ。
日本は国連の審査では、いつも「日本の立場を説明する」と言って、
のらりくらりと「官僚答弁」をして、勧告に従う気がさらさらない
ところを見せつけて、委員たちをいらつかせるのが相場です。
条約に批准することの意味や、国連の委員会からの勧告とは
どういうものなのかの意義を、日本政府はわかっていないということです。
それでもかかる「開き直り」が日本政府のやりかただということを、
閣議決定によって公式に確認するほど面の皮が厚いとは、
さすがのわたしも思っていなかったです。
はてなブックマークはとうぜんながら批判が大半です。
「安倍もシャラップということか」と言われたり、
戦前に日本が作った満州国が国際連盟から受け入れられず、
日本代表が退場したことなどが引き合いに出されています。
安倍内閣の閣議決定は、それくらい危険な国連否定ということです。
わたしが気がかりなのは、今回のことが前例になって、
ほかの条約や勧告に対してもおなじように「法的拘束力がないから
従う義務がない」とか「日本政府の立場は説明した」などと言って
無視するようになるのではないか、ということです。
日本政府は女子差別撤廃委員からも、民法改正を行ない、
夫婦別姓を導入し、婚外子差別を廃止することを求められています。
いまでも日本政府は民法改正を放置しているのですが、
ますますもって従来通りの開き直りを正当化するようになる
恐れがあると、わたしは懸念するわけです。