話題の旬は過ぎたようですが、やはりわたしのブログでも触れておきます。
スケート選手の安藤美姫さんが、4月に出産していたことを明かしたのでした。
未婚母で婚外子であり、父親がだれかなのは伏せておくとのことです。
そして子どもを産んでいたことに対して、安藤美姫さんに対する
バッシングが世論でもマスコミでもネットでも過熱したのですよ。
以下、バッシングを批判するエントリだけ、リンクしておきます。
「姫は城を出て母になる」
(はてなブックマーク)
「安藤美姫選手に対する常軌を逸した集団マタニティ・ハラスメントについて」
(はてなブックマーク)
「週刊文春を責めても始まらない」
(はてなブックマーク)
わたしに言わせると、バッシングする人の神経がわからないですよ。
子どもが産まれたのですから、すなおに祝福して当然と思うからです。
シングルマザーでは競技との両立は大変なのではないかと
思うのでしたら、応援こそするところだと思います。
攻撃してさらに追いつめることをして、どうするのかと思います。
安藤美姫のフェイスブックでも、誹謗中傷をする心ない人が殺到しました。
内容のひどいコメントは削除するなど、対処をせざるをえなくなっています。
「安藤美姫のFacebookに誹謗中傷… 運営側が対応を発表」
「誹謗中傷、執拗な取材……“出産告白”の安藤美姫サイドが困惑」
安藤サイドはつぎのようにコメントしています。
バッシングが常軌を逸していることが、伺えるというものです。
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「ここ数日、第三者を愚弄したり、汚い言葉を使ったり、
さまざまな生き方を選択した女性に対して差別的であったりといった
コメントも目にするようになりました。
名誉毀損にあたる場合もありますし、セクシャルハラスメントそのもの、
と思うものもあります」
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バッシングする人の意見は、これをご覧のかたの想像通りでしょう。
ひとつは、子どもを持ちながら仕事を続ける女性への無理解です。
「シングルマザーとして子育てをする大変さがわかっているのか」
「アスリートなのに、妊娠するなんて自己管理が甘い」
「子どもを育てながら競技に集中できるのか。
周囲への迷惑を考えないのか」といったたぐいものです。
このような出産と仕事の両立を認めない考えかたが、
出産か仕事かの二者択一を女性に突きつけることになり、
すくなくない女性の生きかたを狭め、ひいては少子化を招いていることは、
言うまでもないことだと思います。
前にカリフォルニアで、出産か仕事かの二者択一を突きつけて、
現地の女性社員から訴えられた日本企業のお話をしたのでした。
それでこういう考えは、企業社会のおやじのものなのかと思うところですが、
じつは幼稚園児を持つ母親にも見られるのでした。
出産に対する偏見に根の深いものがあると思います。
バッシングする人たちのもうひとつの意見は、
「避妊しないのはなぜ?」「入籍もせずにいきなり出産ですからね」
というたぐいのもので、未婚母や婚外子に対する差別です。
「結婚してから子どもを産まなければならない」という
「正しい家族」像や、「すべての出産は男に属していなければならない」という、
男性中心的な考えが依然として根深いのでしょう。
ヤワラちゃんが「ママでも金」と言っていたときは、
メディアも世論もとても持ち上げたことをを引き合いに出して、
今回の安藤美姫の場合と大違いだと言うかたもいます。
谷亮子の場合は、結婚してから婚内子を産んだのであり、
いわゆる「正しい家族」像に合致するから、祝福されるのでしょう。
それから、安藤美姫が子どもの父親を伏せているので、
だれなのかを執拗に詮索する向きもあります。
安藤美姫本人が伏せたいと言っているのだからむやみに詮索せず、
不明のままにしておくのが、プライバシーに対する当然の配慮だと思います。
ところがそうは考えない人が、ずいぶんとたくさんいるようです。
父親を詮索するメンタリティは、ひとつはやはり「すべての出産は
男に属していなければならない」という考えかもしれないです。
父親がだれか知ることで、じつはだれに属するべき
子どもだったのかを知って、安心しようというのでしょう。
あるいは、「「安藤美姫の父親、誰だろうねー」などと
ニヤニヤしながら」話したという高齢の男性がいるというから、
単純に「だれとやったのか知りたい」という、
すけべ根性で詮索しているかもしれないです。
安藤美姫さんの「子どもを産んでいた」という告白は、
日本社会が依然として、子どもを持ちながら働く女性に対して理解がないこと、
そしてシングルマザーや婚外子に対して差別的なことを、
期せずしてはっきりさせたことになります。
わたしも、家族やジェンダーに対して因習・反動的な人たちが
こんなにも多いと知って、ちょっとびっくりしました。
日本で民法改正が進まないのも、少子化が進むのも無理もないことだと、
あらためて思うしだいです。
付記1:
安藤美姫が子どもの件に関してコメントを出しています。
謝罪するいわれのないことなのに、「深くお詫び申し上げ」ています。
謝罪を余儀なくさせられるところに、日本的なものを感じます。
「フィギュア:安藤美姫のコメント全文」
付記2:
小田嶋隆氏の記事を見ると、安藤美姫に対するメディアの態度は、
30年前とくらべるとずっと控えめだと書いてあります。
今回の安藤美姫バッシングはえげつないと思うのですが、
それでもむかしよりはましになっているみたいです。
正直、これにも呆れるんですよ。安藤さんがどれだけ傷ついたことか。それが、一過性の消費性コンテンツとして扱われたわけでしょう。
安藤さんの恐怖と怒りは、おそらく消えないですよね。でも、バッシングに加担した人たちの興味はすぐによそに移って、忘れてしまう。不公平だ。
それと、家族構成なんてものを気にするのは、市役所だけで充分です。安藤さんのプライベートがどうだろうと、それで自分の生活に何の影響があるわけではない。
>それが、一過性の消費性コンテンツとして扱われたわけでしょう
完全に「ねた」として消費されましたね。
まさに「スポーツ選手のゴシップ」として扱われたと思います。
世論というのはこうした場合、いつでも無責任ですね。
(責任の取りようなんてないんだけど。)
それでも安藤美姫さんとしては、早く嵐が去ってほしかったでしょうし、
その意味では早々に収拾がついてよかったのだろうと思います。
>安藤さんの恐怖と怒りは、おそらく消えないですよね
まったくですね。
いままでずっと出産のことを隠していたのも、もっともなことだと思います。
それから当の娘さんが大きくなって、自分の出生に関して
こんなことがあったと知ったら、どう思うかと思います。
世界トップレベルのアスリート。そして若くて美人。
比べて我が身を振り返ると…うむッ、振り返るのは止めよう。
でも、振り返ってしまった者達は思うのです。
不公平だ、と。
彼女を不幸にしたい、と願うのです。
temaは想像します。
もしも、安藤美姫の鼻がもう少し低かったら、このバッシングも変わっていたであろう、と。
自分はフィギュアスケートが好きで、だから前シーズン彼女が出場しなかったことにとても心配していました。
なので、出産をしていたという話しを聞いて、むしろほっとしたんです。
なにか重大で深刻なことが起きて、このまま消えてしまうのではないかとすら思っていたのですから、むしろ母親になったと聞いて、さらに応援する気持ちになりました。
ですので世間のバカやろ様のくだらない戯言はどうでもいいです。
ただひたすら、彼女がフィギュアに打ち込めるように祈るだけです。そして願わくば、彼女が嫌われ続けていたオリンピックの表彰台に立てますように。
>世界トップレベルのアスリート。そして若くて美人
>振り返ってしまった者達は思うのです
そうですねえ...
未婚母で出産ということでしたら、さほどやっかまれないのではないかな?
それでも、芸能人とかスポーツ選手とか注目度の高い人に対しては、
自分の中にある「理想像」を勝手にかぶせようとする人も、
すくなからずいるようですね。
未婚母で出産というのは、その「理想像」から大きく外れるから
攻撃の対象になるということだけど。
「トップレベルのアスリート」で「若くて美人」なので、
よけいに外野がそのような「理想像」をかぶせようとしている、
ということはあるかもしれないです。
>だから前シーズン彼女が出場しなかったことにとても心配していました。
ああやはり、ずっと表舞台に出ていなかったのですね。
妊娠して出産したことを、隠したくなるのは当然でしょうけれど、
よくずっと知られずに来たと思います。
>出産をしていたという話しを聞いて、むしろほっとしたんです
>むしろ母親になったと聞いて、さらに応援する気持ちになりました
ずっとどうなったのかわからなかったかたが、
元気にしていたことがわかったのだし、その理由が出産して母親になった、
ということなのですから、安心してさらに応援するのが、
ふつうのファンの反応というものですよね。
なにはともあれ、応援している安藤美姫さんが
今後も活躍することがわかったのはよかったですね。
安藤美姫も、元々、技術的素養は十分にあるんでしょう。出産は母体に少なからぬ負荷をかけるものだとは思いますが、母となったことの経験や自信が演技に現れるようになれば、荒川静香の後に続く「魅せるフィギアスケーター」として返り咲く可能性もあるかも。
などと考えて応援するところだと思いますが、ほんと、日本のスポーツ界は遅れまくっていますね。
あと、「浅田真央VSキム・ヨナの日韓対決」的はおバカな視点だけで、女子フィギアスケートに注目しているネトウヨ君達が、祭りのネタとしてこの件に喰いついたのは、安藤美姫にとってはツキが無かったかもしれません。
このエントリにコメント、ありがとうございます。
>「魅せるフィギアスケーター」として返り咲く可能性もあるかも。
>などと考えて応援するところだと思いますが、
そのように「達観」した視点で評論できるファンは、
どうやら日本にはあまりいないようですね。
すくなくとも、バッシングする人たちと比べると、ずっと目立たない。
これは日本のスポーツ界の遅れというより、
日本人の家族観の遅れなのだろうと思います。
未婚母や婚外子、子どもを持って仕事を続ける女性への風当たりですね。
安藤美姫は期せずしてその「代表」にさせられたのだと思います。
>ネトウヨ君達が、祭りのネタとしてこの件に喰いついたのは
あらあら、ネトウヨ諸氏も食いついたのね。
ネトウヨの動向はわたしは追ってないので、わからないんだけど、
やはりバッシングしたのだとは思いますが。
安藤さんを叱る女性の意見は
「これからどうするの!」「本当に大丈夫なの?」といった案じる気持ちが根底にあるのに対して
安藤さんをバッシングする男性のコメントは「(すいません不適切な語句なので書けません)××な女だ!」といったあくまで誹謗中傷ばかりでした
こんな所にまで性差が現れるのかと愕然とした覚えがあります
障害者差別・中韓差別・犯罪被害者差別
あらゆる差別を主導するのは常に男性です
そして確かに存在するはずのマトモな男性は、自分が狂った男から口撃されるのを恐れて沈黙を守るだけです
わたしのブログにコメント、ありがとうございます。
>安藤さんが自ら公表した理由は
そういえば、わたしはそこまで考えたことはなかったけれど、
子どもが大きくなって、これ以上隠せないと考えたからかもしれないです。
妊娠して出産するまでのあいだ、よく隠していられたと思います。
自分から公表する前に、マスコミに見つけられたら、
もっと悪しざまに扱われたかもしれない、ということは考えられますね。
>こんな所にまで性差が現れるのかと愕然とした覚えがあります
安藤美姫さんに対する非難の性差も、じつは考えたことなかったけれど、
男女で立場が違う問題ですから、自分の立場を基準にして考えることで、
性差が現れることは考えられますね。
女性はやはりこれからシングルマザーとして
生活していくことに対する心配が意識されるのでしょうね。
男性は女性の性を「管理」することが意識されて、
未婚で産むなんて「不道徳だ」という感情が先行するのでしょう。
性を「管理」するという立場に立てば、おのずと差別的になりますね。
>そして確かに存在するはずのマトモな男性は、
>自分が狂った男から口撃されるのを恐れて沈黙を守るだけです
実際、「お道徳」にやかましい差別主義者がやっかいなので
だまってしまう人も、すくなからずいるのかもしれないです。
でもわたしは、もうすこし楽観したいかもしれないです。
安藤美姫さんを応援する気持ちを、率直に表わす男性もきっといると。
[2013年09月01日 03:31]のコメントを削除いたしました。
わたしのつたないブログにお越し下さり、ありがとうございます。
ていねいにご覧下さっているようで恐縮です。
コメントをくださったこと、まことにありがとうございます。
いただいたコメントは、投稿規定に反することはまったくなく、
ぜんぜん問題ないですので、ご安心いただけたらと思います。
じつはお返事を書こうと思って、ちょうど考えているところでした。
もしよろしければ、これからも遠慮なくコメントをいただけると、
とてもうれしく思います。
以前、コメントを寄せさせて頂いた者です。
つたない内容が恥ずかしく、削除申請を致しましたが、状況の推移に思うところがあり、管理人様のお言葉に甘えて再度コメントさせて頂きます。
私はデビュー以来、安藤美姫選手を応援している者です。
例の告白をTVで観た時に最初に思ったことは『元気になって良かったね』。
競技に復帰することも、出産も、その父親のことも、全ては彼女の意志に基づく決定で、一介のファンというだけの他者が踏み込むべきことではないと思いました。
安藤選手は現在、ドイツの国際大会で第2位となり、ISUが定める五輪出場資格をクリアし、先週の横浜大会で国内復帰戦を優勝しています。しかし、日本スケート連盟は『五輪で戦えるレベルに達していない』との理由で強化選手認定を見送りました。
演技自体は、体力不足による疲れから精彩には欠けるものの、ジャンプミスはわずかな誤差の範囲であり、全体に手堅くまとめたといえる内容でしたが…(他の選手だったら確実にそう評価されているはず)
にも関わらずニュースの見出しには『ソチ黄色信号』『厳しくなった』『間に合わない』というネガティブな言葉ばかり。
今はずいぶん沈静化していますが、よく見ればやはり世間(≒たんぽぽさんの仰る『性を管理する側』。+『選手を管理する側』)は安藤選手を許していないということがまざまざと現れていると思います。
ネット上にこんな言葉がありました。
『安藤さんがきちんとお相手の方のことを公表して、妊娠・出産に至る経緯と、未入籍である理由を包み隠さず正直に告白して、誠心誠意謝罪する姿勢を見せていれば、世間の理解は得られたはず。とにかく事態を沈静化させたいなら、隠し事をするのは良くない』
つまり、
安藤美姫 = (出産という)罪を犯した女
と言うことなのでしょう。
たった一人の女性をすら許そうとはしていない。
これが2013年における日本人の総意なのでしょうか?
政治家や知識人と言われる人々が盛んに言っている男女同権とか、女性の多様な生き方とか、所詮うわべだけの、例えば入試試験のテンプレ回答でしか無く、まだまだ一人一人の意識には根付いていないとつくづく思い知りました。
もし、この一連の出来事について、安藤選手に落ち度があったとするならば、ただ一つ。
『彼女は世間を信用しすぎた。』
ことにつきると思います。
前回、《知らない間に差別を受けている事実に気づかず、慣れさせられて、無自覚に従っていることが多い》と書き込んだ覚えがあります。
(リンク先の幼稚園の先生のエピソードには本当に胸が痛みます。同時に理不尽さに怒りも。)
私が安藤選手に強く共感を覚えるのは、彼女の行動に触発されて、深い内省を呼び覚ますからだ、と、こちらの記事を拝見して気がつきました。
大変興味深く拝読しております。今後のご活動に期待しております。
わたしのブログにコメント、まことにありがとうございます。
>例の告白をTVで観た時に最初に思ったことは『元気になって良かったね』。
>競技に復帰することも、出産も、その父親のことも、
>全ては彼女の意志に基づく決定で、一介のファンというだけの他者が
>踏み込むべきことではないと思いました
それが良識的なファンの反応ですよね。
しばらく姿が見えなくて、あるときふと無事な姿が確認できたのですから、
まずは安心することだと思います。
父親がだれか伏せるというのも、安藤美姫さんが自分なりに考えての
ことでしょうから、それを尊重することだと思います。
他人が批判したり、興味本位で詮索することではぜんぜんないですよね。
バッシングしていた人は、ファンというほどはないのかな?とも思います。
ちょっとスケートのことを知っている、くらいの人が、
目くじら立てて叩いていたのかもしれないです。
>日本スケート連盟は『五輪で戦えるレベルに達していない』との理由で
>強化選手認定を見送りました
安藤美姫選手が、ソチオリンピックの強化選手認定を見送られたのは、
わたしも聞きかじっていました。
やはり未婚の母で婚外子を産んだことが、判断に入ったのかなとも思います。
>『安藤さんがきちんとお相手の方のことを公表して、
>妊娠・出産に至る経緯と、未入籍である理由を包み隠さず正直に告白して、
>誠心誠意謝罪する姿勢を見せていれば、世間の理解は得られたはず。
>とにかく事態を沈静化させたいなら、隠し事をするのは良くない』
これが世間一般の偏見を表わしているのでしょうね。
婚外子に対する差別、「男に属さない出産」への不寛容。
安藤美姫さんは、なにも悪いことしてないのだから、謝罪するいわれはないし、
プライベートなのだから、都合悪くなくても隠しておきたいこともある、
ということがわからないのでしょうね。
>たった一人の女性をすら許そうとはしていない。
>これが2013年における日本人の総意なのでしょうか?
日本人の家族やジェンダーに対する偏見を、あらためて見たと思いましたよ。
ある程度は予想されたことなんだけど、ここまで激しいとは思わなかったです。
>《知らない間に差別を受けている事実に気づかず、慣れさせられて、
>無自覚に従っていることが多い》
人はだれしも、あらゆる差別心から解放されているとは、言えないですからね。
他人ごとと考えず、他山の石としていきたいと、わたしも思います。
>(リンク先の幼稚園の先生のエピソードには本当に胸が痛みます。
>同時に理不尽さに怒りも。)
幼稚園とか保育園ではめずらしくないらしいです。
圧力をかけるのが女性というのも衝撃的です。
>大変興味深く拝読しております。今後のご活動に期待しております
応援ありがとうございます。
つたないブログですが、これからもがんばりたいと思います。
またコメントいただけたらさいわいです。