2013年07月16日

toujyouka016.jpg 安藤美姫バッシング(2)

7月13日エントリで、安藤美姫さんへのバッシングのことを
お話しましたが、そのバッシングの極みというべき事態も起きています。
週刊文春が7月4日に、「安藤美姫選手の出産を支持しますか?」
などというアンケートを、ウェブで実施しようとしたのです。
プライバシーを詮索する出歯亀根性ここに極まるという感じです。

「緊急アンケート! 安藤美姫選手の出産を支持しますか?」(文春のページ)
(はてなブックマーク)

「安藤美姫さんに関する週刊文春のアンケートとそれに対する一般の反応」
「週刊文春「安藤美姫選手の出産を支持しますか?」 アンケート実施で炎上→中止に」

 
アンケートの質問はつぎのふたつです。
--------
1)あなたは安藤美姫選手の出産を支持しますか?
2)子育てをしながら五輪を目指すことに賛成ですか?
--------
これらは7月13日エントリでお話した、バッシングのふたつの論点
「未婚母が婚外子を産むのは好ましいか?」
「子どもを持った女性が仕事を続けてよいか?」
について、まさに訊こうとするものになっています。
その意味では「世論の関心」をよく汲み取ったと言えるでしょう。

そもそも人が産まれてくることに対して、他人が支持したり
支持しなかったりするものなのかと、当然思うところです。
支持しないのは「この命は産まれてくるべきでなかった」ということですが、
他人がそんなことを決められるというのでしょうか?

これについては、あなたが産まれたことに関して、
「あなたが産まれたことは支持できるか?」なんて他人が議論していたら、
どう感じるかを考えれば、よくわかることと思います。
安藤美姫さんの娘さんが大きくなったとき、自分の出生に関して
かかる「自分の存在の是非」を議論していたと知ったら、
いったいどのように感じるかと思います。

文春のアンケートはあまりに下衆すぎるというので、
はてなブックマークはものすごい数が付いて、
「週間世の中」の第一位に輝いてしまいました。
もちろんほとんどすべてのコメントが、アンケートを批判しています。


かくして猛烈な批判が来たので、翌日の5日には、
週刊文春はこのアンケートを中止することになりました。
早々に中止したのはよかったと、わたしは思います。
アンケートのページは、つぎのようなおわびの文章に変わっていました。

「安藤美姫選手出産アンケートについて」

このおわびについても、いろいろと批判の余地はあると思います。
なによりわたしが問題だと思ったのは、安藤美姫さんと
その娘さんに対する、直接のおわびがないことです。
もっとも傷つけた被害者に対して直接なにも言わないのは、
どの程度本気で謝っているのかと、誠意を疑いたくなるところです。


そういえば、女子柔道の暴力事件が話題になったときも、
全日本柔道連盟や日本オリンピック委員会のおエラいさんたちは、
国際柔道連盟や自民党にだけ謝罪して、
被害にあった当の選手たちにはおわびしなかったのでした。

それから「慰安婦必要」発言の橋下徹大阪市長も、
アメリカには謝罪したけれど、肝心の元慰安婦のかたや
沖縄のかたには、謝罪していないのでした。

これらを見てくると、週刊文春だけが特別ではないことになります。
「被害者よりも自分の保身を優先する」とか「よくわからないけれど、
騒ぎを静めるためにとりあえず謝っておく」というのが、
「日本的な謝罪」なのかもしれないです。


付記1:
東京スポーツもかなり下衆な記事を書いたのでした。
週間文春のアンケートよりひどいとも言えそうです。

「美談じゃ済まされない…スケート連盟に抗議殺到
「ちゃんと性教育しているのか」との声も」

(はてなブックマーク)

付記2:
TBSも「安藤美姫の父親知りたい?」という主旨の
アンケートを実施して、批判を受けていました。
アンケートは6日で、週刊文春のアンケートが中止になった翌日に
こんなことができるというのが、すごい感覚だと思います。

「「安藤美姫の父親知りたい?」TBSアンケートに非難」
(はてなブックマーク)

付記3:
週刊文春のサイトは、いまは跡形もなく消えています。

posted by たんぽぽ at 22:41 | Comment(6) | TrackBack(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
この件については、文章を商売にしている週刊誌編集社が、何という文章力の劣化だと呆れ果てましたね。
たんぽぽさんも言われている通り、「出産を支持しない」とは「生まれてくるべきではなかった」と言うことで、イコール「中絶すべきだった」と言うことです。江戸時代の遊郭の経営者の発言ですよ、こんなの。
そんな冷酷な意思表示を、自分では直接はせず読者にさせようというような卑劣な出版社は、たとえそれが『単に表現方法を間違えた結果』であったとしても、『単に表現方法を間違えた結果』などと言う言い訳は認められませんよ。
出版社の商品は文章なのですから、食品会社が間違って毒入り食品を販売してしまったのと同じことだと思います。
即ち、週刊文春は直ちに廃刊させるのが適当だと思います。
Posted by ニャオ樹・ワタナベ at 2013年07月17日 12:44
このエントリにコメント、ありがとうございます。

>イコール「中絶すべきだった」と言うことです。江戸時代の遊郭の経営者の発言ですよ、

まったくなにを血迷ったのかと思います。
安藤美姫バッシングがそれだけヒートアップして、
見境がなくなる人が出て来た、ということかもしれないです。

>そんな冷酷な意思表示を、自分では直接はせず読者にさせようというような卑劣な出版社は

わたしも、自分で記事を書かないで読者に言わせる
というやりかたに、ある種の卑劣さを感じましたよ。
どこかで汚いことに手をつけたくない、という意識があったのかもしれないですね。

>『単に表現方法を間違えた結果』などと言う言い訳は認められませんよ

おわびのページで、「出産そのものを否定したり、働きながら子育てを
することを批判しているような印象をあたえてしまいました」
なんて書いているけれど、そう受け取るしかないですよね。
そうでないというなら、どういう印象を与えるつもりだったのかと
思うのですが、それは書いていないですしね。
Posted by たんぽぽ at 2013年07月17日 19:18
たんぽぽさま、先日はレスありがとうございました。
私は安藤さんのファンでもあるので、こちらにもコメントさせていただきます。

まさしく、この問題は人権感覚のリトマス紙、試金石になった出来事でした。
私がこの件に関して最もリベラルさを感じたのはミヤネ屋という番組でコメンテーターとして出ていた浅野史郎さんが熱っぽく
「頑張ってほしいですね、応援してますよ、僕はこの件で急に安藤さんのファンになりましたよ」と語ったことです。

大変な茨の道だとは思いますが、安藤さんにはぜひ頑張っていただいて、またあの美しく力強い演技を見たいです。
Posted by アイマイミー at 2013年08月10日 09:49
アイマイミーさま、またまたお越し下さりありがとうございます。
こちらにもコメントどうもです。

>私は安藤さんのファンでもあるので、

ファンのかた、結構いらっしゃるのですね。
ファンとしては、とても気になる事件でしたね。

>まさしく、この問題は人権感覚のリトマス紙、試金石になった出来事でした

本当にそんな感じでしたね。
家族やジェンダーに関して、因習的な人がずいぶん多いものだと、
わたしはちょっとびっくりしましたよ。


>「頑張ってほしいですね、応援してますよ、
>僕はこの件で急に安藤さんのファンになりましたよ」

おおお、すばらしいですね。
浅野史郎さんというのは、もと宮城県知事のかたかしら?
http://bit.ly/j3OfkC

この件で、安藤美姫さんを応援するようになったかたも、
きっとまだまだいらっしゃることと思います。
安藤美姫さんはいろいろと大変だと思うけれど、
こうした新しいファンもいることを糧にがんばってほしいですね。
Posted by たんぽぽ at 2013年08月11日 22:57
こんにちは。

>浅野史郎さんというのは、もと宮城県知事のかたかしら?

そうです、そうです。
あのミヤネ屋という番組のコメンテーターはけっこう酷いんですが(読売だからしょうがないかと思います)安藤さんの話題のときたまたま浅野さんがいらしてよかったです。ああいう話題のときに良くも悪くもその人の本性が出ますね。

私はたんぽぽさまに考えは近いのですが、あまり知識がありませんので、読ませていただいて知識を増やしていきたいと思っています。
Posted by アイマイミー at 2013年08月12日 18:15
アイマイミーさま、またまたコメントありがとうございます。

>>浅野史郎さんというのは、もと宮城県知事のかたかしら?
>そうです、そうです。

おお、やはりそうだったのですね。
浅野史郎さんは2007年に東京都知事選に立候補したのですよね。
イシハラの対抗として期待されたし、わたしもささやかながら
このブログで応援したのですが、残念ながら及ばなかったのでした。

今回の安藤美姫さんのコメントで、浅野さんはやはり良識あるかただと、
あらためて確認できてよかったです。

>私はたんぽぽさまに考えは近いのですが、あまり知識がありませんので、
>読ませていただいて知識を増やしていきたいと思っています

わたしのつたないブログで知識を増やしていただけるなんて、
こちらこそもったいないくらいの光栄です。
浅学非才ながら、精一杯がんばって書いていきたいと思います。
これからもよろしくお願いしますね。
Posted by たんぽぽ at 2013年08月12日 23:08
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