2013年08月03日

toujyouka016.jpg ナチスの手口に学べ?

すでにすごい話題になっていることですが、
麻生太郎副総理大臣が、なんと「日本の憲法改正もナチスの手口に学べ」
という主旨の、とてつもなくとんでもないことを言ってしまったのです。
それでここ連日、非常に大変なことになっています。

「麻生副総理の憲法改正めぐる発言の詳細」(書き起こし)
(はてなブックマーク)
「麻生副総理の「ナチス憲法」発言の音声」(録音)

「ナチスの手口」発言が出て来たのは、7月29日の夜に行なわれた
「国家基本問題研究所」が主催する講演会です。
このとき麻生氏は、これから安倍政権が進めようとしている
日本の憲法改正についてお話をしていて、そこで出て来たものです。

 
問題の箇所はつぎのようになっています。
だから、静かにやろうやと。憲法は、ある日気づいたら、
ワイマール憲法が変わって、ナチス憲法に変わっていたんですよ。
だれも気づかないで変わった。あの手口学んだらどうかね。

「あの手口」となっていますが、ここではワイマール憲法が機能停止して、
ナチスの全権委任法が制定されたことを話していますし、
前のほうでも、ワイマール共和制が終焉して、
ヒトラー・ナチスが政権についたお話をしています。
「あの手口」というのが、ヒトラー・ナチスが権力を握って
全権委任法を可決させた過程を指しているのはあきらかです。

基本的人権と議会制民主主義を徹底的に否定し、
第二次世界大戦という未曾有の惨劇を招いて、全人類の歴史に
大いなる重荷を残した独裁体制の手口にならおうという発想が、
まったくの言語道断であることは言うまでもないことです。

「静かにやろう」というのは、国内の護憲派や野党やマスコミや、
韓国、中国と言った外国にやかましく批判されることなく、
国民の知らないあいだに改憲してしまおう、ということでしょう。
憲法という国の基本に関わることは、国民的議論があって当然なのに、
いつのまにか憲法を変えてしまおうという考えも、とんでもない独善と言えます。


講演会を開いた「国家基本問題研究所」というのは、
民間の団体ですが、櫻井よしこ氏が理事長をやっています。
改憲や国防軍の創設、原発推進、慰安婦否定などを標榜していて、
あきらかに国粋主義のシンクタンクであることがわかります。

ようは「お仲間内」が集まっている会合だったということです。
その意味では安心できるところであり、参院選で自民が圧勝したこともあって、
麻生氏は気を抜いていたのもあるのかもしれないです。

動画を見ると、麻生氏が「あの手口学んだらどうかね」と
しゃべったところで、聴衆からどっと笑い声が出るのですよね。
「ナチスに学べ」というのが笑うところだと心得る
聴衆の政治感覚はいったいなんなのかと思います。
これだけでもどういう人たちの集会なのかが、見て取れるというものです。


>国際社会の動き

「ナチスの手口に学んで改憲」という非常に恐ろしいことを、
副首相の座についている政治家が言ったというので、
国際社会はとうぜんこれをこぞって問題視することになります。
「ナチスの手口」発言について、麻生氏を批判した外国メディアの記事を
いくつかご紹介しておきます。

「「ナチスのように改憲」主張した麻生副総理、失言か信念か(1)」
「Japan Deputy PM Taro Aso retracts Nazi comments」
「Japan’s Finance Minister Retracts Statement on Nazis」
「Japan should follow Nazi route on revising constitution, minister says」
「Nazi-Vergleich in Japan: Vize-Premier lobt Hitler-Taktik」
「Japon. Quand le vice-Premier ministre veut << s’inspirer >>
de l’Allemagne nazie」


つぎの記事をたくさんリンクしているツイートも、ご紹介しておきます。





のっぴきならないのは、「サイモン・ウィーゼンタール・センター」という
ロサンゼルスにあるユダヤ人権団体が抗議声明を発表したことです。
ユダヤ人は言うまでもなく、ヒトラー・ナチスの迫害の対象でした。
よってナチスを肯定的に扱う言動には、きわめて敏感になるわけです。
「麻生氏講演:米のユダヤ系人権団体が抗議」
「ナチス発言「世界に謝罪を」 米ユダヤ人人権団体副代表」

このユダヤ人団体は、国際的にもきわめて影響力が強いようで、
そのむかし日本の雑誌『マルコポーロ』が、ホロコースト否定の記事を
載せたことで抗議して、廃刊に追い込んだ実績があります
麻生太郎氏と自民党政権は、大変な相手を敵に回したと思います。
対応いかんによっては、橋下氏の「慰安婦必要」発言以上に
深刻な事態に追い込まれることにもなりかねないです。

「サイモン・ウィーゼンタール・センター」が抗議声明を
出したのは7月30日ですが、麻生の「ナチスの手口」発言は
29日の夜ですから、対応がきわめて早いことになります。
おそらく講演を聴いただれかが、連絡をしたのかもしれないです。


>国内メディアの動き

日本の国内メディアの動きは、例によって最初は鈍かったです。
ややくわしい記事を書いたのはスポーツ新聞だけでした。
読売はごく短い記事を載せただけですし、
朝日にいたっては「ナチス」のことは触れていなかったりします。
主催した「国家基本問題研究所」の名前はなく、
「都内の講演会」とか「東京のシンポジウム」とか書くだけです。

それでも外国の団体やメディアが批判しているのを見て、
国内メディアも「ナチスの手口」発言を取り上げはじめたようです。
7月31日に東京新聞が麻生氏の講演の要旨を掲載し、
8月1日になると朝日が、外国メディアが麻生氏を批判していることを
紹介する記事を書き、「国家基本問題研究所」の名前も出て来ます。

1日になるとようやく国内メディアの記事が増えてきます。
つぎのように、麻生氏の閣僚辞任や安倍政権の責任にまで言及する、
はっきりした批判をする社説も、出てくるようになりました。

「麻生氏「ナチス」発言 看過できない重大問題だ」
「社説:麻生氏ナチス発言 撤回で済まない重大さ」

国内メディアは、本来外国より早く動いてしかるべきものです。
外国で批判されたから国内メディアが動き出すというのは、
いつものこととはいえ情けないかぎりだと思います。

posted by たんぽぽ at 23:38 | Comment(0) | TrackBack(0) | 政治・社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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