ヒトラー・ナチスの惨劇は、二度と繰り返してはならない過ちとして、
すべての世界人類が教訓とすることです。
それにもかかわらず、政治家が「ナチスの手口に学べ」などと言うのは、
全世界に対する挑戦と言ってよいことだと思います。
ユダヤ人権団体「サイモン・ウィーゼンタール・センター」も、
麻生副首相は、ユダヤ人のみならず、ヒトラー・ナチスの被害を受けた
世界のすべての人たちに謝罪する必要があるという、声明を出しています。
「麻生氏講演:米のユダヤ系人権団体が抗議」
「ナチス発言「世界に謝罪を」 米ユダヤ人人権団体副代表」
麻生太郎副総理は8月1日には早々に、「ナチスの手口」発言を
撤回するというコメントを出すことになります。
無理に正当化を図るとかえって首が絞まることになるので、
早いうちに引っ込めたほうが無難と考えたものと思います。
「ナチス政権を例示、麻生氏が発言撤回 「誤解招き遺憾」」
「麻生副総理、改憲巡る「ナチス政権」発言を撤回」
「麻生氏がナチス発言を撤回」
「「国際社会、敵に回す」 政権に麻生ショック」
まわりの閣僚たちも、「麻生氏は正式に撤回したからこれで解決だ」
とばかりに、いっせいに幕引きムードを作ろうとします。
第一次安倍政権のとき、閣僚の失言が相次いで支持率を下げたので、
このあたりのリスク管理に敏感になっているのでしょう。
傷口が広がらないうちに、終わりにしてしまおうということですね。
発言撤回についての麻生氏の弁明は、つぎのようなのですよ。
「憲法改正については、落ち着いて議論することが極めて重要と考えている。
この点を強調する趣旨で、十分な国民的理解や議論のないまま進んでしまった
悪しき例として、ナチス政権下のワイマール憲法に係る経緯をあげた」
「誤解を招く結果となったので、ナチス政権を例示としてあげたことは撤回したい」
ようは「ナチスは反面教師として挙げた」と言いたいわけです。
いったいどこが「反面教師」にしているのかと思います。
発言の全文を見ても、「ナチスの手口」を肯定的な意味で
真似をしようと言っているとしか、受け取れないと思います。
麻生氏は「誤解を招く結果となったので」とも言っていますが、
あれが「誤解」だと言うのなら、「誤解」するよりないと思いますよ。
「真意はそうではない、みなさんの誤解だ」と言って、
受け取り手のせいにするのは、「日本的な」釈明かもしれないです。
あれのどこをどう受け取ったら「反面教師」になるんだ?
ナチスを肯定しているとしか受け取れないではないか?
というかたは、もちろんたくさんいらっしゃります。
いくつか麻生発言の検証をしているエントリがあるので、
つぎにご紹介したいと思います。
「麻生副総理、ナチスに学べ発言撤回の陳腐な釈明」
「麻生副総理の「ナチスの手口を学んだらどうか」発言を批判する」
「麻生太郎のナチス発言を国語の受験問題的に分析してみる」
麻生太郎氏も「ナチスの手口」発言はもう撤回したのだから、
「真意は理解してもらえた」として、終わったことにするという構えです。
麻生氏を必死になって擁護している人たちはいざしらず、
それ以外のかたは国際社会も含めて、「反面教師」というのが
「真意」だと言われても、理解できるはずもないことです。
「麻生氏「真意、理解してもらえた」 辞職を否定」
また「サイモン・ウィーゼンタール・センター」の声明にある、
世界に向けた謝罪もするつもりはないと言っています。
ところが全世界が教訓とする人類史上最悪の人権侵害国家を、
副首相の座にある政治家が肯定的に扱ったのですから、
その影響を考えて、世界におわびをするのがとうぜんでしょう。
そして麻生氏は、野党が要求する閣僚や議員の辞職もしないとしています。
欧米の民主主義国では、今回の麻生氏くらいナチスを肯定したら、
閣僚辞任は当然のことで、政治生命さえ危ぶまれるものとなります。
(それなりに社会的地位のある人であれば、どんな職業であっても
その居場所がなくなりかねない事態になります。)
閣僚も議員もやめないというのは、ことをあまりに
軽視しすぎていると言わざるを得ないです。
麻生太郎氏の発言は、すでに国際社会が批判するところとなっています。
麻生氏や自民党の対応は、はなはだ不誠実と言わざるをえないです。
国際社会はこの程度では麻生氏を許すことはないと思われます。
このあとの展開が注目するところです。

FÜR FRIEDEN, FREIHEIT / UND DEMOKRATIE
NIE WIEDER FASCHISMUS / MILLIONEN TOTE MAHNEN
平和と自由と民主主義のために、
二度とファシズムなきよう、何百万もの死者は警告する
野党もマスコミも、こう言う時に徹底的に糾弾することが出来ないようなら、存在意義は無いでしょう。
どう考えても、「撤回します」と言って撤回できるような内容ではないですよね。本当に撤回したいならば、「今後は、憲法を変える話題は二度と触れません。賛同もしません。」くらい言わない限り、撤回にならないでしょう。(するとは思いませんが)
議員辞職勧告が妥当だと思います。
(それが可能かどうかはさておき)
このエントリにコメントありがとうございます。
>ネトウヨ安倍政権の国民軽視な本音が、図らずも世界中に発信されてしまった、
「国内外のだれにも反対されず国民の多くが知らないあいだに
改憲してしまいたい」という、不埒な願望が出てしまいましたからね。
>野党もマスコミも、こう言う時に徹底的に糾弾することが出来ないようなら、
マスコミは例によって保身的で動きが鈍いですね。
野党もこれまた例によって頼りないのではないかと思います。
いちばん期待できるのは、やはり例によって外圧になりそうです。
>「ナチス云々」とかは(実際の世界史と合致しようとしなかろうと)、
>実にそのまんまのたとえで、
自民党の憲法草案は明らかに人権否定で、時代を逆行するものですからね。
そういう指摘もいくつかあります。
http://bylines.news.yahoo.co.jp/shivarei/20130802-00026952/
http://ht.ly/nz7j5
>「撤回します」と言って撤回できるような内容ではないですよね
まったくですね、撤回したくらいではぜんぜん済まないですよ。
ご指摘の通り改憲を棚上げにするくらいは必要でしょうね。
>議員辞職勧告が妥当だと思います。
それくらいとうぜんと、わたしも思いますよ。
日本の国内世論に、そこまでさせる力はぜんぜんないでしょうけれど。
いつも愛読しているmewさんのブログのTBから来ました。
たんぽぽさまのお考えは私に近いのでうんうんとうなずきながら読ませていただきました。
ところで話は変わりますが、このトピックの麻生ナチス発言、許すべからざるトンデモ発言ですが、サイモン・ウィーゼンタール・センターについては正直に言うとあまり期待しないほうがよいかもと思っています。
今回の麻生発言について公明党からほとんどコメントが聞かれませんね。私が聞いた唯一のものがおそらく記者からの質問に答えたものでしょうが太田国土交通大臣のもので「問題発言であるが、既に撤回しているので問題ないと思う」(すみません、テレビで見たので言葉は正確ではないかもしれませんが、そういうニュアンスの非常に及び腰のものでした)でした。これを聞いて公明党支持ではないにしても本当にがっかりしたものです。
そして公明党の支持母体創価学会とサイモン・ウィーゼンタール・センターは非常に親しく人的交流なども行っております。
例えば
http://www.sokanet.jp/hbk/heiwa.html(創価学会の公式HPです)
もちろんユダヤ人はナチスの最大の被害者ですから、公明党とは違うかもしれませんが、いろいろな思惑が交錯すると思いますので、案外期待するほどのことにはならないかもしれません。
もちろん私自身は安倍麻生許すまじと思っております。昨日の野党の門前払いなんて本当に酷いですよね。
わたしのブログにようこそお越し下さりました。
>たんぽぽさまのお考えは私に近いのでうんうんとうなずきながら読ませていただきました
ご同意くださりありがとうございます。
>今回の麻生発言について公明党からほとんどコメントが聞かれませんね
政権与党に参加しているので、安倍政権に気を遣っているのでしょうね。
自分たちの寄って立つ基盤なので、まともに攻撃しないわけで、
こういうところは立ち回りがいいと思います。
>そして公明党の支持母体創価学会とサイモン・ウィーゼンタール・センターは
>非常に親しく人的交流なども行っております。
>http://www.sokanet.jp/hbk/heiwa.html
ご紹介ありがとうございます。
見たところ、サイモン・ウィーゼンタール・センターと創価学会との関係は、
共同でホロコースト展を開いたくらいのようですね。
これくらいでしたら、サイモン・ウィーゼンタール・センターと創価学会が
親しい関係にあるというほどでもないように思います。
なので、サイモン・ウィーゼンタール・センターが
公明党の気を遣って麻生批判を遠慮することはないと、わたしは思います。
創価学会との過去のちょっとした関係より、ユダヤ人迫害の権化である
ナチス肯定を一国の副首相がやったことのほうが、
サイモン・ウィーゼンタール・センターにとっては、
はるかに重要だと思うからです。
>昨日の野党の門前払いなんて本当に酷いですよね。
予想された事態ではありましたね。
つぎの臨時国会のころまでには、ほとぼりが冷めるのを狙っているのでしょう。
ジャジーと申します。
もちろん、麻生氏がナチ信者というつもりは毛頭ありませんが、
思想云々というよりも、麻生氏が「中途半端にかじった」知識をひけらかし、自らを物知りに見せようとして大失態を演じたというのが本当のところでしょう。
ワイマール憲法が「いつの間にか」有名無実化していたというのも大間違いで、実際はナチス政権による弾圧が大きかったようですね。
吉田茂氏(麻生氏の祖父・元首相)、麻生太賀吉氏(麻生氏の父・元政治家)が今回の騒動を聞いたら、きっと「お前をこんな人間に育てた覚えはない!」と嘆くことでしょうね。
日本国内では、「表現の誤り」「撤回」で通すのかもしれませんが、海外、特に欧米では通らないでしょう。
外国(特に米国)から指摘され、初めて辞意を表明する・・・日本の政治家の、いつものパターンが繰り返されるのだと思います。
わたしのブログにコメント、まことにありがとうございます。
>ワイマール憲法が「いつの間にか」有名無実化していたというのも大間違いで、
>実際はナチス政権による弾圧が大きかったようですね
そうなのですよね。
全権委任法可決についての麻生太郎の認識も、かなり違っているのですよね。
「静かに、気づかれないうちに」ということはぜんぜんなかったのですね。
国会議事堂放火事件を共産党のせいにして徹底的に弾圧したり、
共産党議員を逮捕・拘束して採決に参加できないようにしたりと、
ナチスは反対勢力に対して暴力を相当に使ってかなり騒々しかったし、
国民のみんなもよく見て知っているうちに成立したのでした。
http://d.hatena.ne.jp/hazama-hazama-hazama/20130730/1375167452
http://blogs.yahoo.co.jp/konishi_hiroyuki_524/18047640.html
http://kousyoublog.jp/?eid=2985
>きっと「お前をこんな人間に育てた覚えはない!」と嘆くことでしょうね。
世襲議員が親や祖父と政治的立ち位置が異なることは、
めずらしくないのだけれど、ここまで来るとかなりひどいですね。
>海外、特に欧米では通らないでしょう。
日本的謝罪は、とうぜんながら欧米の民主主義国は受け付けないですね。
いま欧米諸国は夏休みなので静かみたいだけど、
8月の末か9月になったら、また批判を始めるかもしれないです。
国内の世論や野党がいくら批判しても、麻生や安倍政権は馬耳東風でしょうね。
麻生が辞任することがあるとしたら、外圧だと思います。
外圧でようやく動くというのは、本当にいつものパターンですね。