9月6日エントリで、婚外子の相続差別に違憲判決が下されるという
民法改正史上の大ニュースをお話しましたが、
この違憲判決に反対する人たちもとうぜんいるのでした。
以下のトゥゲッターで、ツイッターで憤慨した人たちがまとめられています。
「「婚外子」相続差別違憲判断に憤慨する人々」
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違憲判決が発表されてから数時間のうちに、すごい数になっているのですよね。
こういう人たちの存在は、わたしももちろん予想していましたが、
こんなにたくさん出てくるとは思わなかったです。
反対意見はつぎの4つに大別できるようです。
1.「差別ではなく区別」
2.「家制度の崩壊」
3.「正妻や嫡出子涙目」
4.「中韓の連中がどうたら」
1.については、人はだれしも親を選べず、婚外子として産まれたのは
本人にはまったくの偶然ですから、自分の努力でどうにもならないことが理由で
法定相続額に格差があるのは、とうぜん差別になります。
その前に嫡出概念があるというだけで、じゅうぶん差別的だと言えます。
日本の婚外子の相続差別は、国連人権B規約と子どもの権利条約に反し、
国連委員会からくりかえし勧告を受けているれっきとした差別であること、
そして欧米の民主主義国では嫡出概念がとっくになくなっていることくらいは、
憤慨している人たちも知っていてほしいものです。
2.については、婚外子の相続差別を撤廃すると、高度経済成長期の
標準家族を理想とする「正しい家族」幻想が崩れる、ということだと思います。
自民党のお歴々の大好きな「家族のカチ」を守りたいのですね。
本当に崩れるのはご自身の中にある「幻想」なのですが、
彼らは現実と幻想の区別がつかないもののようです。
「違憲判決は不倫を推奨する」などと言う人もいますが、
不倫が不貞行為で離婚の原因となりうることは、違憲判決の後も変わらないです。
違憲判決はなにも不倫の推奨などしていませんよ。
3.は婚外子の相続差別撤廃に反対する核心だろうと思います。
「愛人の子どもが出て来て遺産を要求する」という
しばしば引き合いに出されるシナリオが念頭にあるわけです。
婚外子の相続差別が戦後の民法でも維持されたのは、
正妻の立場を守るためだったので、反対派の関心がここに集中するのは
無理もないこととは言えるかもしれないです。
「愛人の子どもがとつぜん現れて遺産を要求する」という状況が
実際にはどれだけありえるのか、という疑問があります。
相続を要求するからには、男性は子どもの認知をしています。
認知していないと、遺産を相続することはできないからです。
また愛人は男性に養育費を請求すると思います。
養育費を払っていれば、家計から差し引かれることになります。
こうしたことを、正妻やその子どもたちに隠していられるのでしょうか?
婚外子差別が不倫の抑制に本当になるのか?という疑問もあります。
「婚外子に差別があるから、不倫をするのはやめよう」なんて
考える男性がどのくらいいるのか?ということです。
不倫する男性は、相手の女性との関係を「お遊び」と考えていることも多いです。
認知を嫌がって逃げ回る男性なんてのもざらにいます。
産まれてくる子どもの立場を考えて不倫を控えるなんて、
とても考えにくいことだと思います。
違憲判決で「正妻」が不利になるという意見もありますが、
妻の法定相続額が2分の1というのは、婚外子の相続差別が廃止になっても変わらず、
婚外子がいるせいで取り分が減ることはないです。
また愛人が相続できるようになると勘違いしている人も
いるみたいですが、愛人が相続できないのも変わらないです。
「正妻」の権利は違憲判決の後もなんら変わらないですね。
そもそも、よそで愛人を作って子どもを産ませるくらい
女性観のひずんだ男性が、いまどのくらいいるのかと思います。
戦後の新民法になってら家族意識が変化して、
愛人に子どもを産ませる男性はめっきり減ったのではないかと思います。
婚外子の相続差別は、すでに時代に合わなくなった法律とも言えます。
現在婚外子差別が問題になるケースでありがちなのは、
未婚の女性が妊娠して、相手の男性に逃げられた場合と言われています。
この女性がべつの男性と結婚してその男性の子を産むと、
おなじ女性に対して、婚外子と婚内子がいることになり、
遺産相続で競合することになります。
「婚外子がいる場合の相続はどうなる?」
婚外子というと、自分の知らないところで暮らしているイメージが、
とくに相続差別撤廃の反対派には強いのかもしれないです。
実際の婚外子の置かれている立場はもっとさまざまで、
婚内子といっしょに暮らしていることもいくらでもあるわけです。
4.にいたっては意味不明ですね。
「キミたちのあたまの中は中国と韓国のことしかないのか」と言いたいです。
察するに、中国人や韓国人の女性が日本人男性の愛人となって、
子どもを産んで遺産を請求するシナリオでも考えているのかもしれないです。
そんなことにメリットがあるなら、いまでもやっているでしょうね。
相続差別反対の人は、婚外子は相続できないと思っている人もいるようですが、
婚外子の相続額は現行民法でも婚内子の半分あります。
それだけでもお金目当ての人にはじゅうぶんなはずだからです。
その前に、人の遺産をせしめたいのなら、すでに嫡出概念がなくなっている
欧米の民主主義国へ行って、それをやっていると思います。
実際には、そういう遺産をせしめることはもちろんないわけで、
中国や韓国を持ち出す人の被害妄想にすぎないことがわかります。
彼ら憤慨している人たちに、どれだけ当事者性があるのかはわからないです。
じつは当事者性などなく、「婚外子の相続差別廃止はなんかサヨクっぽい」
と思っているので反対しているのかもしれないです。
ようするにイデオロギーのお題目と考えているということです。
国籍法改正のときもそうでしたが、しばらくしたら婚外子のことなんか
さっくり忘れて、べつのターゲットを探しているかもしれないですね。
それから憤慨している人たちは、少子化問題はどう考えているのかと思います。
すこしでも子どもを産みやすい社会にするなら、
婚外子差別なんて出産のハードルはなくしてしかるべきことです。
彼らは少子化が進んでもかまわないと思っているのでしょうか?
それとも子どもを産むハードルは温存したまま、
子どもの数を増やしたいなんて虫のいいことを考えているのでしょうか?
付記:
つぎのコラムは、婚外子相続差別の違憲判決についてのポイントや、
民法改正後の遺産相続や介護の問題について、Q&A形式で解説されています。
とてもよく書けているよいコラムだと思います。
ご覧になるとよいでしょう。
「「婚外子」相続差別違憲判断について小町脳的Q&A」
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