2013年09月12日

toujyouka016.jpg 外国から見た汚染水対策

福島第一原子力発電所から、放射性物質による汚染水が
海に流され続けている
ことが、こないだからずっと話題になっています。
よりによって参院選のすぐあとに、東京電力が発表したところに、
政治的意図を感じるものがありますね。

ブエノスアイレスで開かれた、国際オリンピック委員会(IOC)の総会でも、
原発事故や汚染水のことに関心が集まることになったのでした。
日本のオリンピック招致委員会は汚染水対策についてIOCで発表する前に、
外国メディアの取材を受けることになったのでした。

 
ところが外国メディアは、日本側の釈明を聞いてとても印象が悪くなったのです。
「失望した」「意図を理解しない答え」とはっきり言っているのです。
つぎの記事にその様子が報じられています。

「汚染水説明理解されず 五輪招致 海外記者「失望した」」
「汚染水説明理解されず 五輪招致 海外記者「失望した」」(全文)
(はてなブックマーク)

「福島第1・汚染水:海外メディア辛辣報道」(1/2)
「福島第1・汚染水:海外メディア辛辣報道」(2/2)
(はてなブックマーク)

日本の招致委員会は当然事前に想定問答を作ったのですが、
朝日の記事によると、「水や食べ物は安全」「住民は普通に生活している」
「東京は全く問題になっていない」といった内容だったとあります。
ところが外国メディアの質問は6問中4問が汚染水対策でした。
すでに日本と外国とのあいだで意識がずれていることになります。


これはわたしの想像なのですが、日本の招致委員会は「東京は安全か?」が
外国人の関心ごとだろうと考えたのではないかと思います。
それで「東京は全く問題になっていない」のようなことを
想定問答で考えて、会見で述べることにしたのだろうと思います。

実際の外国人の関心は、「原発事故の対策はきちんとできているか」
ということにあったのではないかと、わたしは想像しています。
それで現在の大問題である汚染水対策に質問が集中したものと思います。
(東京が放射能で危険だと思っている人なんて、外国の記者団の中には
いくらなんでもいないのではないかと、わたしは思いますよ。)

「東京は福島から250キロ離れている」という日本側の釈明も、
東京の安全を強調したくて出てきた発言であることは想像にがたくないです。
そして事故対策ができているかに関心がある人がこれを聞くと、
「復興そっちのけでオリンピックをやろうとしている」とか
「東京さえ安全なら福島はどうでもいい」とでも言いたげな
事故対策に不熱心なもの言いに聞こえるのだと思います。


日本側が考えていた外国人の関心と、実際の外国人の関心が
かくもずれていたのはどういうことなのか、という問題があります。
これはわたしに言わせれば、日本側は原発事故の対応や被災地の復興を
軽視していたのに対して、諸外国は原発事故対応や被災地の復興を
ずっと重視している、ということではないかと思います。

毎日の記事を見ると、外国メディアはこぞって日本側の原発事故対応や
被災地の復興がいい加減であることを批判していて、
日本政府や東京電力に対する不信感をあらわにしているとあります。
もともと日本側の汚染水対策に対して、外国メディアは不信を
いだいていた
のですが、日本のオリンピック招致委員会の釈明は、
それを裏付けたことにもなりそうです。

日本国内なら原発事故対応や被災地の復興なんて不熱心でも
世論はさほど批判しないし、どうということはないのかもしれないです。
ところが諸外国はそんな態度は容赦しないということです。
ヨーロッパでは日本の対応をこんなふうに見ているそうです。
あながち的外れでもないと、わたしは思いますよ。

「ヨーロッパでの「日本の風評」--東日本大震災から2年」
ヨーロッパで今、ささやかれているのは「フクシマ」のことではない。
日本という国は、政府がやるべきことをやらず、
福島以外の国民は見て見ぬふりをして、福島の人々だけに原発事故のツケを
負わせるようなアンフェアな社会だという「風評」だ


朝日の記事を見ると、日本のオリンピック招致委員会は
「「これで説明できる」と余裕も見せていた」とあります。
日本側は本当に国内向けの理屈で、諸外国を納得させることができると、
思っていたのかもしれないです。

毎日の記事にはフランスRTL放送の記者のコメントが引用されていて、
「情報を公開せず、疑惑が浮上するとまず全否定する。
ほとぼりが冷めたころに事実を認めるので非常にずる賢い。
日本人や日本メディアの忘れやすい気質を利用している」と、
日本側のやりかたを手厳しく批判しています。
日本のやりかたは外国では通用しないことが、あらためてしめされていますね。

原発事故の対応や被災地の復興は、本来日本国内の問題なのに、
外圧がかからないとまともに進まないのかという気もしてきます。
日本国内は軽視しているのに諸外国が重視していることや、
日本国内の理屈が諸外国ではぜんぜん通用しないことなど、
「ナチスの手口」や「慰安婦必要」など、最近相次いでいる
失言のたぐいとおなじようになっていると言えそうです。


付記:

ご存知のように2020年のオリンピック開催地は東京に決まりました。
これをもって日本の原発事故対応や被災地の復興対策が、
国際オリンピック委員会をはじめ世界に理解されたなどと、
安倍政権や東京電力は思ったりしないでほしいところです。

原発事故対応や復興支援については、諸外国は依然として
日本政府や東京電力に対して不信をいだいていると思います。
東京が開催地に選ばれたのは、そうしたマイナス要因を差し引いても、
イスタンブルやマドリードよりはましと思われた、というだけだと思います。

posted by たんぽぽ at 23:32 | Comment(2) | TrackBack(0) | 政治・社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

はてなブックマーク - 外国から見た汚染水対策 web拍手
この記事へのコメント
シルト「フェンス」と言ったって要は「布」ですから、水は自由に行き来しています。でなきゃ、潮汐によるフェンスの内外の水位差でフェンスが破れますよ、たぶん。東電も、少なくともトリチウムは全く引っ掛からずに、フェンス外に出ていることを認めています。フェンス外の海に、排水溝を通じて直接漏れていると言う話もあります。

そんな状態を、当事国の首相が、あろうことか「完全にコントロールしている。」などと世界に向けて発信してしまうなんて、無知とか大ボラとか、そんな生半可な言葉ではとても表現しきれない、物凄い話だと思います。

「そこまで言い切ったからには、言った本人(安倍政権)が、責任持って汚染水を封じ込めろ。」と言う意見もあるようですが、本当にそうなれば勿論喜ばしいのだけれど、「予算付けたらあとは東電任せ」感がありありじゃん、と思うのは私だけ?

くれぐれも「2020年福島切りンピック」とはならないように願う私でした。
Posted by ニャオ樹・ワタナベ@モバイル at 2013年09月13日 13:56
このエントリにコメントありがとうございます。

>「完全にコントロールしている。」

IOCの総会で、安倍は堂々とプレゼンテーションしてましたね。
あと「完全にブロック」とも言っていましたね。
「コントロール」「ブロック」発言は当然批判されることになります。
http://matome.naver.jp/odai/2137857886283198801
http://bylines.news.yahoo.co.jp/mizushimahiroaki/20130908-00027937/

そしてこの「コントロール」「ブロック」が東京電力の認識と食い違っていて、
実質的に否定されるというオチになるのですよね。
安倍は東京電力から直々にはしごを外された感じですね。
http://mainichi.jp/select/news/20130910k0000m040073000c.html

>無知とか大ボラとか、そんな生半可な言葉ではとても表現しきれない、物凄い話だと思います

わたしが連想したのは6年前の「消えた年金」ですよ。
このときも安倍は自分が責任を持つと大見得を切ったけれど、
実際はとんだていたらくだったのでした。
解決したのはのちの民主党政権の3年間ですね。


>くれぐれも「2020年福島切りンピック」とはならないように

こういう人たちもいるのですよね。
おなじことを思っている人たちは、案外多いのではないかとも思います。
まとめに出てくる人たちはそれを正直に言ったというだけで。
http://togetter.com/li/562454
Posted by たんぽぽ at 2013年09月14日 17:20
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック