9月4日に婚外子の相続差別に違憲判決が出ましたが、
家族法に関するほかの問題にも望ましい影響が出てほしいと思うところです。
以下の記事で取り上げられているのでご紹介したいと思います。
「<家族と司法>多様性を求めて/上 相続差別、違憲判断 「私は2分の1じゃない」」
「<家族と司法>多様性を求めて/中 別姓は「わがまま」か」
「<家族と司法>多様性を求めて/下 「無戸籍児、解消を」」
「上」はメインの婚外子の相続差別のことが、くわしく出ています。
記事のあとのほうで、わたしもよくお話するヨーロッパの民主主義国では、
嫡出概念がすでに廃止されていることに触れられています。
ドイツとフランスが最後だったのですね。
ヨーロッパで婚外子差別が設けられたのは、キリスト教の思想の
影響を受けて、夫婦関係を守るためとされています。
それがやがて女性の権利や子どもの権利を尊重するようになり、
嫡出概念が廃止されていくのでした。
ヨーロッパはみずから作り出した差別をみずから克服したということです。
それから最後に、戸籍法49条を改正して、出生届けの嫡出・非嫡出の
区別をチェックする欄を廃止することを検討しているという、
9月13日エントリでお話したことが出ています。
「中」は夫婦別姓です。
選択的夫婦別姓の導入は、婚外子の相続差別撤廃と合わせて、
長いあいだ民法改正の課題として、いっしょに扱われてきたのでした。
この機会に選択別姓の実現を求める動きもやはりあるようです。
記事を見ると自民党内の動きがすこし書いてあるのですが、
「政府内には、別姓とセットの法案を出せば、相続格差の撤廃すら
危うくなるとの懸念も広がる」なんてありますよ。
夫婦別姓なんて、彼らの信奉する「家族のカチ」に、まっこうから抵触しますからね。
婚外子の相続差別廃止だけでも、じゅうぶんやりたくないでしょうから、
この上夫婦別姓もいっしょになんて、彼らにはなおさら無理だと思います。
でもこういうお話があるということは、婚外子の相続差別廃止と
いっしょに選択別姓も法案提出しようという意見が、
自民党内でも出ているということではあるのでしょう。
それにしても記事の見出しにあるのですが、
「夫婦別姓は女のわがまま」などと言う人は、いまだに健在なのですね。
結婚しても苗字を変えないのが「わがまま」なら、
大半の男は当然のように結婚改姓しないどころか、
結婚相手の女性に改姓させてとうぜんと思っているのですから、
輪をかけて「わがまま」ということになるはずです。
こういう「男の輪をかけたわがまま」に気がつかず、
「女のわがまま」と言ってはばからない人は、男性の非改姓権は自明と思っていて、
夫婦別姓は女性だけの問題だと思っているのでしょう。
「下」は「離婚後300日」規定と、女性のみの再婚禁止期間です。
前者は離婚後300日以内に産まれた子を前の夫の子と推定するという規定で、
後者は女性に半年間の再婚を禁止しているという規定です。
これらは産まれてくる子の父親がだれになるのかを
はっきりさせる「父権の推定」のために設けられたものです。
「父権の推定」のためというのが、男性中心的の感がありますね。
これらは記事でも紹介されていますが、女性にとって出産や結婚の足かせとなり、
女性が新しい生活を始める上で妨げになるのでした。
これらの規定は、明治時代に医学があまり発達していなかったときに、
とにかく子の親を決める方法として導入されたものです。
現在はDNA鑑定など親子鑑定の方法が発達していますから、
こうした不確実な規定にもとづく必要はないと言えます。
それより女性の生活を守るほうが、ずっと大切なことでしょう。
今回の婚外子の相続差別の違憲判決を受けて、
こうしたことにどれくらいはずみがつくか、という問題はあるのですよね。
メインの婚外子の相続差別を含めて、これら民法や家族法に関することは
世間的にはほとんど話題になっていないようです。
あまり推進の機運は盛り上がらないまま過ぎていくのではないか
という気が、わたしはしています。