死刑判決が下されるという事件がありました。
「インド集団レイプ殺害事件、4人に死刑判決」
「インド全土に抗議拡大の集団レイプ事件、被告4人に有罪」
この集団レイプは昨年12月に、当時23歳の女子学生が
バスを偽装した車の中で、酒に酔った男たちから鉄パイプで暴行され、
集団レイプされたあげく、路上に裸同然で放り出されたというものです。
この女子学生はシンガポールの病院に運ばれたのですが、
約2週間後に治療の甲斐なく亡くなったのでした。
「レイプされたインドの女性死亡 入院先のシンガポールで」
レイプ犯の男は6人ですが、ひとりは未成年なので厳罰は受けないことになります。
起訴されたのは5人のはずですが、死刑判決が出たのは4人です。
あとのひとりがどうなったのかは、資料がないのでわからないです。
インドで被害にあったのに、なぜシンガポールの病院に運ばれたのかもわからないです。
外国の病院でないと治療設備がないくらい、深刻な被害だったのでしょうか?
それともインドの病院では身柄が危険だと思われたのでしょうか?
きわめて残忍な暴行事件と言わざるを得ないですが、
インドではこのような恐ろしいレイプが起きうる背景があります。
女性をめぐるインド社会の問題については、つぎの記事にくわしく書いてあります。
ご覧になるとよいでしょう。
「インドを揺るがすレイプ殺人 なぜ悲劇は後をたたないのか。」
簡単に言うと、インド社会には「女性がいかに残酷に虐待されても、
暴力をふるった男を罰する必要はない」という社会通念があるということです。
警察も裁判所も、女性が性被害にあっても軽視して積極的にならず、
加害者が無罪となるケースが多くあります。
捜査機関は、女性が殺されたとしても深刻に受け止めることなく、
きちんとした証拠収集も行わず、多くの場合立件すらしない。
証拠が保全されないため、また、裁判所が女性に対する暴力を軽視しているため、
多くのケースが極めて不合理なかたちで無罪となる。
昨年は、レイプの被害者の女性が警察に被害を訴えたところ、
警察から加害者と結婚するよう逆に進められ、
絶望して自殺してしまったという事件も起きている。
集団レイプの被告の男4人は、全員無罪を主張していました。
これだけの残忍な事件を起こして、なぜ無罪が主張できるのかと思うところですが、
上述の「男が女性を虐待しても罰せられない」という社会通念があるので、
自分たちも許されると思ったのでしょう。
このニューデリーの集団レイプ事件は、インドで性犯罪に関する
世論を強く喚起するきっかけとなりました。
女性の安全確保を要求する声がきゅうに高まり、性犯罪に対する厳罰化を
求めるデモを、若い世代の人たちが起こしたりもしています。
とくに女性のかたは、いっこう改善されない性犯罪の扱いに
フラストレーションがたまって、その怒りが一気に爆発したのかもしれないです。
「強姦事件で揺れるインド 厳罰化求め若者ら連日デモ」
インド政府もこうした世論の動きを受けて、性犯罪の厳罰化に乗り出します。
強姦罪の刑罰を引き上げ、酸攻撃罪やストーカー罪を
新しく設けるといった内容を盛り込んだ、大統領令を提出します。
国会がはじまる前に先立って、この大統領令を大統領は署名しており、
法改正をすみやかに行なうべく力を入れていることがわかります。
「インド、性犯罪厳罰化へ 強姦罪に死刑適用も」
残忍なレイプ犯たちに厳罰が下されたことは、もちろんとてもよかったです。
でも判決が死刑ということに、引っかかるところはあると思います。
「死刑廃止」といういまの国際社会の流れに逆行するからです。
強姦の最高刑が死刑となったのも、上述の大統領令によるものです。
まさに当のレイプ犯たちによって喚起された、性犯罪の厳罰化を求める
世論を受けて死刑が導入され、それが適用されたことになります。
国際人権団体の活動家は「これまでインドは死刑を認めない立場を採ってきたが、
この1年でその姿勢は大きく後退した」とコメントしています。
インド社会全体が死刑容認に向かっているのでしょう。
レイプ犯の被告人たちの弁護士も「終身刑が決まりであり、
例外的な場合にのみ死刑が適用されるということを裁判所は留意すべきだ」と述べて、
死刑を課さないことを求めていました。
「インド集団レイプ殺害事件、4人に死刑判決」
こうした死刑反対の意見は、あくまで「死刑廃止」という立場からのもので、
「残忍なレイプ犯たちは厳罰に処するべきだ」という考えは
変わらないことは、お断わりしておきたいと思います。
また、容疑者の一人は刑務所での拘留中に、首を吊って死亡しているのが発見されました。警察は自殺として処理したそうです。
なお、死刑が国際社会の流れに逆流する、といいますが、死刑を用いでもしなければ抑制することができないほど、性犯罪が横行しているとも言えるのではないでしょうか。
例示としては適切ではないかもしれませんが、女性専用車両を作らなければならなかった背景にも通ずる気がします。
>彼女がシンガポールの病院に運ばれたのは、臓器移植のためらしいです
そういうことだったのですね。
医療設備ではないけれど、外国でないと受けられない治療だったわけだ。
>容疑者の一人は刑務所での拘留中に、首を吊って死亡しているのが発見されました
こちらはそういうことでしたか。
拘留中に亡くなった可能性も、考えなかったわけではないですが。
どちらも情報提供ありがとうございます。
もしかすると報道している日本語の記事があったのかもしれないけれど、
わたしは見つけられなかったのでした。
>死刑を用いでもしなければ抑制することができないほど、
>性犯罪が横行しているとも言えるのではないでしょうか
ご指摘のことは、たしかに言えると思います。
実際、インドの性犯罪は、それくらいひどいですからね。
性犯罪の被害者の人権と、死刑囚の人権の折り合いはむずかしくなりますね。
わたしなりにこういうことは考えましたが。
http://bit.ly/16o81W3
ソースはこちらです。
www.nytimes.com/2013/03/12/world/asia/suspect-in-india-gang-rape-found-dead-in-jail.html
www.nytimes.com/2013/09/12/world/asia/prosecutors-seek-death-penalty-in-india-rape-case.html
頭にhttp://を入れてください。
Death penalty india rapeのキーワードでググると出てきます。
日本語の報道では詳細が不明だったので、探してみたのでした。
>http://www.nytimes.com/2013/03/12/world/asia/suspect-in-india-gang-rape-found-dead-in-jail.html
>http://www.nytimes.com/2013/09/12/world/asia/prosecutors-seek-death-penalty-in-india-rape-case.html
ご紹介ありがとうございます。
自殺したという容疑者の家族のかたは、自殺でなく他殺だと言っているのですね。
日本語の記事も結構配信されていたようなので、日本語の記事も探せば
あるのかなと思っていたんだけど、やはり英語の記事を検索したほうがいいのですね。