2013年10月07日

toujyouka016.jpg 女性の人権をアピール?

アメリカへ外遊中の安倍晋三首相が、9月25日にNY証券取引所の演説で
「ゲッコー発言」、ハドソン研究所の演説で「右翼と呼べ発言」
出て来たことをお話したのでした。

引き続き9月26日は国連総会で、安倍首相の演説がありました。
このスピーチの主題がなんと「女性の地位の向上」なのですよ。
実際スピーチの後半のほとんどが、女性問題のお話に当てられています。

「第68回国連総会における安倍内閣総理大臣一般討論演説」

 
ご存知のように、安倍晋三氏はジェンダーに関しては因習・反動的で、
女性の人権なんておおよそ理解のとぼしい人物です。
「家族のカチ」にこだわって夫婦別姓に反対するし、
「純潔思想」を信奉して性教育に反対しているし、「親学」は支持しているし、
政権の政策も女性手帳とか育児休暇3年とかゼロ歳児保育への反対とか、
おかしな方向にむかっています。

そんな人が「女性の地位の向上」なんて国連総会でアピールして、
どういう風の吹き回しかと思うところです。
どうも自分が政権を取ってから、従軍慰安婦問題で日本が国際社会から
批判を浴びたので、その不信感を拭うのが目的のようなのですよ。

それならとうぜん慰安婦問題に対して謝罪と賠償をするといった、
日本が責任を果たすことを約束するのが本来だと思います。
ところが安倍首相の演説に慰安婦問題のことはぜんぜん出て来ないのです。
ようするに慰安婦問題への批判の矛先をそらすために、
「女性の地位の向上」なんて言い出したのだろうということです。

それでも、スピーチの大半を女性政策に当てることになったのは、
国際社会から「日本は女性の人権に理解がない」と思われているのを
安倍首相なりに気にしていて、なんとかしなければと思っている、
ということではあるようですね。


スピーチが女性の地位問題の話題になってから最初のところで、
女性の労働力率の向上による経済活性化のお話をしています。
「ウィメノミクス」という、最近現れた造語も出て来ます。
安倍首相が聴衆の印象をよくしようとしていることが伺えますね。

世に、ウィメノミクスという主張があります。
女性の社会進出を促せば促すだけ、成長率は高くなるという知見です。
女性にとって働きやすい環境をこしらえ、女性の労働機会、
活動の場を充実させることは、今や日本にとって、選択の対象となりません。
まさしく、焦眉の課題です。
「女性が輝く社会をつくる」--。
そう言って、私は、国内の仕組みを変えようと、取り組んでいます。

おそらく日本国内の財界からも要求があるのだろうと思いますが、
このあたりは、これまでも国内でおなじことを安倍首相は話しています。
女性の労働力率に触れたことは、わたしは意外性はないです。
実際、将来の少子化にともなう労働力不足を補うためにも、
経済成長のためにも、日本は女性の労働力率を高めるべきだというのは、
よく言われていることです。

「「男女平等は二重の効果」UNウィメン事務局長が講演」
「「男女平等が経済成長の源泉」 OECDが報告書」


問題は、本当に効果的な政策を実行するか、ということですよ。
とくに女性が妊娠・出産後も仕事を続けられることが大事であり、
妊娠・出産を理由の解雇をなくしたり、保育所を充実させることが、
直接的でもっとも効果的な施策になるでしょう。

ところが、こないだのタスクフォースや、育児休暇3年の導入
といったことを見ていると、とても女性の労働力率の向上に
効果的な施策に理解があるとは思えないのですよね。
あまり効果のない、見当違いな施策ばかりやって終わりそうに思います。
効果的な施策はたいてい、安倍氏が信奉する「家族のカチ」に抵触しますから、
安倍政権が積極的になりそうにないと思われるわけです。

ついでながら、安倍氏のような人が言う「女性重視」というのは、
「女性の権利のため」ではなく、「経済のための女性利用」ではないか、
というのは、よく言われることですね。
女性の権利にもともと理解がない安倍首相が言うので、
余計に「お金のため」というのを疑われるということです。


スピーチの大半は、開発途上国の女性の地位向上のことに割かれています。
イスラム圏の女性のお話を例に出し、アジアやアフリカの女性たちの
医療・保健水準の向上や、進学率・教育水準の向上に言及して、
そのために日本が経済支援などの支援をすることを話しています。

これは国内向けには巧妙なやりかただと、わたしは思いますよ。
女性の人権にあまり理解のない日本人は「日本は男女平等のすすんだ先進国で、
解決するべき女性差別は開発途上国にある」などと思っています。
そうした人たちが自分の認識を保ちつつ、「自分たちは人道的」と
自尊心をくすぶられ、そして慰安婦問題のような日本国内にある
自分たちの女性差別とは向き合わないですむからです。

それにしても、
憤激すべきは、21世紀の今なお、
武力紛争のもと、女性に対する性的暴力がやまない現実です。
犯罪を予防し、不幸にも被害を受けた人たちを、物心両面で支えるため、
我が国は、努力を惜しみません。
のくだりがとても偽善的だと思います。
本当に憤慨するなら、従軍慰安婦問題こそ早急に解決するはずだからです。

日本軍従軍慰安婦で、多くの女性たちを性的暴力にさらして、
その被害者たちを物心両面でぜんぜん支えていないのに、それを棚に上げて、
ウィメノミクスとか持ち出したり、開発途上国の女性の地位向上を
声高だかに唱えたところで、しらじらしいだけだと思います。
問題はスピーチを聴いている外国のかたたちがどう受け止めるかです。


さきにもお話したように、安倍首相の国連総会のスピーチの目的が、
「女性の地位向上」を唱えることで、従軍慰安婦問題から国際世論の
矛先をそらすためと思われるので、おのずとこうなるということです。

9月21日の毎日新聞を見ると、安倍首相が行きの飛行機に乗る前に、
日本政府関係者がこんなコメントをしています。

「安倍首相:女性の人権重視、表明へ 国連演説」
日本政府関係者は「今回は現在と将来の
女性の活躍について議論する場となるだろう」と語り、
慰安婦問題について改めて説明する場にはならないとの見通しを示した。

「現在と将来が大事」というのは、安倍首相が慰安婦問題について
批判されたとき、それをかわすための常套句のひとつです。
日本国内ではこのやりかたは結構うまくいくので、嫌になってしまいます。
国際社会相手におなじやりかたが通用するかどうかですね。


関連サイト:

「安倍首相:女性の人権重視、表明へ 国連演説」
「国際貢献アピールに腐心=タカ派懸念、払拭狙うー安倍首相」
「安倍首相の二重性…慰安婦問題には触れず女性人権強調」
「日本軍「慰安婦」問題解決全国行動から安倍首相への緊急抗議声明」
「安倍晋三は女性を経済成長の道具として使いたいだけのように見えます。 (国連総会演説)」

女性の地位問題以外のことについては、こちら批評があります。

「国連総会で「日本の成長は世界の利得、日本の衰退は世界の損失」と叫んだ安倍首相」

posted by たんぽぽ at 20:15 | Comment(2) | TrackBack(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
Lはじめまして

私もこのスピーチには色々と思うところがありました
以前からずっと疑問だったのは女性の活用と言われる中でよく聞くのが、これからは労働人口が減るから男性だけではやっていけないとか不景気で男性だけの収入では不十分だからとか、そういった理由から女性の社会進出を唱える意見です

これって管理人様も触れられておりますように女性の権利のためではなく、経済利用しているだけでは?と疑問に思うのです
労働人口が足らなくなるからとかそういったやむを得ない理由で女性の社会進出を語るのか?と
男性一人でも十分稼げたら、人口が減らなければ女性の社会進出は必要ないのか?権利はないのか?と


働くというのは権利でもあると思うのですよね
働きたい、自分の能力を活かしたい、昇進したい社会から認められたいという思いを持つ女性もたくさんいると思うんです
そういった女性達の人としての権利として語ってほしいなと思いますね

産むということは女性にしかできないことです
ですが、育てることは男性にも当然できることです
そしてもちろん家事も男性にもできることです

日本では女性が社会に進出すれば男女平等みたいなことになっていますが、本当の男女平等はそれだけでなく男性が家庭進出することも欠かせないと思っています

有能な意欲ある女性が仕事を続けられないのは社会にとって損失であるのはもちろん人権面からみても問題だと思います
女性だからと昇進などで差別したりは立派に人権侵害だと思いますし

一刻もはやく社会システムが変わり、真の意味で女性が活躍できる社会になってほしいと思います



Posted by りほ at 2013年10月07日 23:41
りほさま、いらっしゃいませ。
わたしのブログにようこそお越し下さりました。
コメントありがとうございます。

>女性の権利のためではなく、経済利用しているだけでは?と疑問に思うのです

ご指摘のような心配はもっともだし、また疑問を持つ必要があることですね。
「経済発展のために女性の活用を」と言っている人がいたとき、
「この人には女性の権利という意識はあるのだろうか?」ということは、
つねづね問いかける必要があると思います。
http://taraxacum.seesaa.net/article/312845361.html

労働力不足とか経済発展がおもな関心の人は、
「女性の活用」を手段としか考えない可能性がありますからね。
そういう女性を客体視している人は、経済が発展したら
女性は必要なしと思って、女性を労働市場からふたたび締め出して、
もとにもどしていく可能性があるわけです。

経済発展のために女性に機会を作ると言われている場合、
「女性の権利がメイン」という意識をしっかり持っていないと、
女性が働く権利は定着しないのだと思います。


>日本では女性が社会に進出すれば男女平等みたいなことになっていますが、

まだまだ「女性の問題」と思われているところは多いですね。
むしろ変わるべきことが多いのは、男性の意識のほうなくらいですね。

>本当の男女平等はそれだけでなく男性が家庭進出することも欠かせないと思っています

まったくですね。
http://taraxacum.seesaa.net/article/368561639.html
日本の男性は家事労働に費やす時間が短く、
それが女性の家事労働の負担を大きくする、という一面もあると思います。

このあたりは男性の意識もあるのでしょうけれど、
それよりもだらだらと会社に居続ければ評価されるといった、
日本の企業風土にも原因があると思います。
Posted by たんぽぽ at 2013年10月08日 21:46
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