家族観について書いた、なかなか興味深い記事があるのでご紹介します。
「家族」というと「血のつながった人たち」をイメージしますが、
「家族=血縁」という思想が定着したのは、日本では比較的最近というお話です。
「<イマジン>第4部 はぐくむ/1(その1) 血縁超えた家族の形」
「イマジン:第4部 はぐくむ/1(その2止) 過渡期にある家族 他人とつながる」
一般に「家族」と聞いて思い浮かべるのは、夫婦と子ども世帯だと思います。
これが「家族=血縁」思想のコアということなのでしょう。
ここから19世紀の終わりに明治民法で定められた家族制度の影響や、
第二次世界大戦後に普及した、「夫が外で働き妻が専業主婦で子どもはふたり」
という「標準家族」思想の影響を予想するかたもいるでしょう。
家族観が現在のようになったというか、「家族」という概念が普及したのは、
高だか100年ほど前のことなのでした。
したがって前述の予想は当たっていそうですね。
実際、明治民法によって近代的な家族制度が定められることで、
「家族」とは「血のつながった人たち」という意識が広まっていくのでした。
========
「家族」という言葉はいつ生まれたのか。
東京大の岩本通弥(みちや)教授(民俗学)は「婚姻や血縁で成り立つ『家族』
という考えが日本で普及したのは、わずかこの100年のこと」と話す。
それまでは、使用人や居候など、血縁がない者と暮らすのが当たり前だった。
離婚や再婚も多く、今よりも、ずっとゆるやかな家族観があった。
それが変わったきっかけは、日清戦争後に制定された明治民法だ。
親族の範囲や親子、婚姻などが規定された。これを機に、血縁が重視され始める。
人の移動や職業選択の自由など近代化を背景に核家族化も進み、
日本の家族は段々と「小さな家族」になっていく。
========
明治民法の規定によって夫婦同姓が「常識」化した、というのは
よくご存知のことだと思いますが、「家族=血縁」という意識も、
おなじように明治民法の制定によって、作られていったということですね。
「法律が意識を作る」というのは、よくあることだと言えるでしょう。
「家族=血縁」というのはもとは欧米のキリスト教国のカチカンでした。
夫婦同姓と同様、「家族=血縁」思想も、欧米諸国から輸入したことになります。
明治民法による家族制度の整備は、いろいろなところにおいて、
欧米的な家族観を日本に導入した、ということになりそうです。
========
「大きな家族」は、明治中ごろまでは珍しくなかった。
奉公先で技術を身につけ、大きくなる子どもも多かった。
首都大学東京の姜恩和(カンウナ)助教(社会福祉)は、
「韓国や、欧米などキリスト教文化圏では、血筋を重んじたが、
日本は血にこだわらず家の存続を最優先した」と語る。
========
第一次世界大戦後、ヨーロッパでは戦争孤児に救済の必要から養子制度が広がり、
「家族=血縁」という思想は薄らいでいくことになります。
日本では逆に「家族=血縁」思想が強化され、養子縁組が減って行きます。
この傾向は第二次世界大戦後に強まったとあるので、
「標準家族」思想の普及とも関係がありそうです。
========
血統を重視してきた欧州では20世紀、第一次世界大戦で急増した
戦争孤児を育てるため、養子制度が広がった。
一方、日本では、未成年の養子は急減するなど次第に血縁が重んじられていく。
戦後のベビーブームで子どもの数が急増したことに加え、
「医師による出生証明が必要になったことで、他人の子を自分の子として
届け出ることが難しくなった」(岩本通弥東大教授)ことも背景にある。
海外の動きと相反した動きが、日本で進む。
========
「家族=血縁」思想は、輸入元の欧米諸国ではどんどん捨てているのに、
日本では輸入当時に近いかたちで後生大事に守っているということです。
このあたりも夫婦同姓とおなじと言えますね。
冷戦崩壊以降、欧米の民主主義国は「パートナーシップ法」という、
よくご存知の婚姻に準じた扱いを受けられる制度をつぎつぎと導入し、
事実婚や同性カップルの権利を補償するようになっていくのでした。
========
今の日本は、法的な家族になるのには婚姻か養子縁組しかない。
これに風穴をあけるかもしれないのが「パートナーシップ法」だ。
同性カップルに、財産の相続や税金控除など、夫婦同様の権利を保障しようと、
1990年代に北欧から広まった考え方だ。
フランスでは、対象を異性同士にも広げ、
事実婚のカップルなど多様な人がこの制度を利用し始めた。
特別配偶者法全国ネットワーク共同代表、赤杉康伸さん(38)は、
「国際的には、同性間の婚姻を認める『第2ステージ』に入っている。
パートナーシップ法すら導入されていない日本とは開きがある」と話す。
========
21世紀初頭のいま、世界のトレンドは同性結婚を認めるところに来ています。
記事でも「第2ステージ」と書いてありますが、いまだ夫婦別姓さえ
認められない日本は、世界の動きからすっかり取り残されたことになります。