出生届けには嫡出、非嫡出の区別をするチェック欄があります。
この欄の存在が婚外子に対する差別を助長するとして
違憲性を争う裁判があったのですが、1審、2審に続いて最高裁でも
婚外子側が敗訴という残念な結果なったので、ご紹介しておきます。
判決はすこし前の9月26日に出ています。
「嫡出子の届け出義務「不可欠でない」最高裁、合憲判断も」
「婚外子差別は消えず 出生届記載は合憲」
「法の下の平等を定めた憲法14条に反しない」という判断で、
5人の裁判官全員が「自治体の事務処理上、記載は不可欠とまではいえないが、
差別的な扱いを定めた規定ではない」という判決で一致しました。
それでも「記載内容の変更など、制度見直しの検討が望まれる」
という補足意見がついて、制度改正の必要性は言及しています。
9月4日には婚外子の相続差別に違憲判決が出たのですが、
出生届けのチェック欄は差別性は認められなかったことになります。
相続格差は金銭がかかわるので、生活にも影響して利害が大きいですが、
出生届けの記載だけなら不利益は小さいということかもしれないです。
相続差別に違憲判決が出たことは反響が大きかっただけに、
今回の出生届けの合憲判断は、残念さがいっそう大きいと言えます。
記事に出ている原告の弁護士のコメントを引用しておきます。
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代理人の藤岡毅(つよし)弁護士は
「(憲法上の疑義がある、とした)一審判決よりも後退した」と批判。
戸籍法改正などを求めた過去の国連勧告に言及していない点にも触れ
「四日の大法廷が国際情勢を意識していたのとは対照的で、大いに不満」とし
「国は補足意見を尊重し、規定の削除を含め、
戸籍法の抜本改正を早急にしてほしい」と話した。
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相続差別の違憲判決の影響を受けて、出生届けの嫡出、非嫡出のチェック欄は
なくす方向で、法務省は戸籍法の改正も進めてはいます。
「違憲判決の波及効果」
問題は安倍政権・自民党がどこまで積極的になるかですよ。
婚外子差別の撤廃は、彼らの信奉する「家族のカチ」に
まともに抵触しますから、もっとも手をつけたくないところでしょう。
例によって政権内・党内から反対意見が噴出しないかと気がかりです。
この訴訟の原告のご夫婦は嫡出・非嫡出を区別するチェック欄に反対して、
出生届けを出しておらず、ずっと戸籍と住民票がない状態でした。
今年の1月に世田谷区が職権で、お子さんに戸籍と住民票を作成しています。
「出生届のない子に住民票」
追記:
わたしははじめ、原告夫婦のお子さんには、住民票だけあって
戸籍はないのかと思っていました。
このブログの1月26日エントリ「出生届のない子に住民票」でも
「戸籍はおそらくないままだと思います」とわたしは書いています。
実際は「戸籍の職権記載を受けての住民票作成」ということであり、
戸籍がさきに作られていたのでした。
1月23日の日経新聞の記事では「次女が戸籍に記載され、
区も住民票を作成した」と書いてあります。
「出生届ない子に住民票作成 東京・世田谷区、職権で」
日経新聞の記事および、この情報を教えてくださったかた、
まことにありがとうございます。