タイトルの通り、3年3ヶ月の民主党政権がなぜ失敗したのかを検証しています。
言うまでもなく「失敗から学ぶ」というのはとても大切な姿勢です。
民主党の将来のみならず、日本の議会制民主主義のためにも、
失敗の原因をじゅうぶん検討して、将来のために活かしたいところです。
わたしはまだ読んでいないのですが、本屋さんで探して読んでみようかと思っています。
こういう徹底検証した本を書いてくれるかたがいるというのは、
まがりなりにも民主党は期待されているということですし、
まだまだ民主党というのは幸せなのかもしれないです。
すこしだけ新聞記事になっているので、ご紹介したいと思います。
毎日の記事が内容についてややくわしく書いています。
「水説:民主「失敗の本質」=倉重篤郎」
「「楽天のように、立ち直りをするぞ」 民主・海江田代表」
「日本再建イニシアティブ『民主党政権 失敗の検証』プロジェクトメンバーと意見交換」
毎日の記事を見ると、民主党政権が失敗した原因のひとつは、
「マニフェスト政治の誤用」としています。
一つはマニフェスト政治の誤用である。その完成度が高いほど、
つまり実現すべき政策の財源、工程表を詳細、かつ具体的に明示すればするほど、
政権はその後の状況変化に対応する柔軟性を奪われ、
一方で、計画通りにすべてを行うのが不可能な現実の中で、
約束違反という批判を必然的に招来する。その負の側面にあまりに無頓着だった
自民党政権時代は、政治とは公共事業を引っ張ってくることでしたから、
それ以外の政策には有権者もさほどの関心を持つことがなく、
マニフェストはほとんど重視されなかったのでした。
書くことも内容がほとんどない抽象的なことばかりで、
ぶっちゃけなにもしなくても「公約を守った」と言えるしろものでした。
民主党政権ではそうした自民党政権時代の反省もあって、
マニフェストの内容をかなり細かいところまで具体的に書いたのでした。
ところが細かく書きすぎて、政権獲得後の状況変化に対して
柔軟な対応ができなって、マニフェストが守れなくなり、
「公約違反」という印象を植え付けることになったということです。
ふたつ目の失敗の原因は「統治能力の欠落」としています。
二つ目に、統治能力の欠落である。政府与党間の意思決定システムと
政策実現に必要な国会対応がなっていなかった。
人事バランスの悪さから、要職に何度もつく日なた組とそうではない
日陰組の乖離(かいり)が顕在化した。
そんな中で消費増税など本来は政策対立であるべきものが、反小沢(一郎氏)か否かを
めぐる属人的対立と一体化、ある意味、党分裂に陥るのは必然だった。
意思決定システムについては、今年の3月3日エントリでご紹介した、
「落選議員が語る民主党崩壊」という記事でも指摘があったことです。
仕組みが不明瞭なトップダウン方式なのですね。
意思決定のプロセスや手続きがふじゅうぶんで、どこでなにをしたら
「党としての決定」となるのかはっきりしないのでした。
実際、民主党という組織はガバナンスがひどいらしく、
決まったことに従わないとか、思いつきでなにかをとつぜんやり出す、
ということが日常茶飯事だったりするのですよね。
しかもこれを末端の議員ではなく、幹部が平気でやるというていたらくです。
小沢一郎氏やその周辺の議員たちの「造反」も、不透明な意思決定システムゆえに、
反主流派を納得させられなかったことから来ているのもあるようです。
そして本来は政策の対立だったものが、小沢派対反小沢派という、
属人的議論に転化することになったのでした。
つぎのことはとくに大事だと、わたしは思います。
民主党支持者の中にも、ひたすら「小沢一派」のせいにする人がいますが、
民主党内にもおなじような論調があるものと思います。
この本の特徴は、だからといって小沢氏に失敗の原因を押しつけがちな
民主党内の議論にはくみしていない点だ。
「小沢一派」はていのよいスケープゴートなのだと思います。
本質的な原因は、このエントリも含めて、いままでわたしが
お話してきたような、民主党の体質にあるのだと思います。
よって民主党がいまのままであるなら、たとえもう一度政権を取ったとしても、
また失敗してだれかのせいにして終わるのだろうと思います。
わたしがちょっと安心したのは、この『民主党政権 失敗の検証』という本の
読書会を民主党のプロジェクトチームが開いていることです。
ようするに民主党はなんとかして支持と信頼を回復するべく、
みずからの失敗の原因と向き合おうとしているということです。
良薬は口に苦し、忠言は耳に逆らうと言うが、こうしてまとめられた貴重な本を糧とし、
民主党は再生に向けて頑張っていかなければならない。
会の冒頭、海江田万里代表は「こういう本を作っていただき、
そのために貴重な聞き取りをしていただいた。
私も聞き取られる側でお話をさせていただいたが、
この検証を貴重な糧としてがんばっていかなければならない」とあいさつした。
いまの民主党が支持されない理由は、みずからの失敗と向き合わず、
責任転嫁したり、「反党分子」をすぐ「粛清」したりと、
体質が共産党のよう(失礼!)になっていることも大きいと思います。
今年の5月の公開大反省会の調子では、ぜんぜんだめということです。
読書会を開くというのは、まがりなりにもそうした体質から
本気で脱却しようとして、模索をしているということであり、
これは一定の評価と期待をしたいところだと思います。