2013年11月03日

toujyouka016.jpg 違憲判決に挑戦する自民

これまでお話してきたように、婚外子の相続差別の違憲判決に対して、
自民党内で反対派が猛反発を始めて法務部会で了承ができず
民法改正の法案提出ができない状況に陥っているのでした。

「違憲判決に反対論噴出」
「違憲判決に反対論噴出」
「伝統的な家族とはなにか?」

 
マスメディアも自民党のていたらくというか思い上がりを批判する記事が、
すこし出て来ているので、ご紹介したいと思います。

「社説:最高裁を軽視 自民党は思い上がるな」
(はてなブックマーク)
「自民党の右バネが心配だ」

「「最高裁に従う必要なし」 婚外子相続で自民法務部会が“放言”連発」
(はてなブックマーク)


毎日新聞の記事に、10月29日に法務部会で出た反対派の発言が出ています。
10年以上前の民法改正の法務部会が再来したようですよ。
「国権の最高機関が、司法判断が出たからといって、ハイハイと従うわけにはいかない」
「自民党として最高裁の判断はおかしいというメッセージを発するべきではないか」
「違憲審査権があるからといって、オートマチックには受け入れられない」
「最高裁決定によれば、安心して婚外子を産めるようになってしまう」

最高裁から違憲判決が出たのですから、立法府はそれに従うのが当然ですし、
自動的に受け入れなければならないものです。
これらの人たちは三権分立が理解できないのでしょうか?
いったいなにを考えているのかと思います。

自民党のやっていることは、もはや婚外子や家族のことに留まらない
三権分立への挑戦であり、違憲立法審査に対する否定にいたっています。
民主主義の根幹に関わることであり、もっと深刻にとらえることだと思います。


法務部会の大塚部会長は、新しく党内に「家族を取り戻す特命委員会」と
設置することと、法務省内に相続制度の問題点を検証する
ワーキングチームを立ち上げることを提案したのでした。
部会長としては了承してほしくて、妥協策を一生懸命考えたのでしょう。
それでもこんな交換条件が必要になるのも非常識だと思います。

頑迷な反対派議員たちは、これでも「結婚している夫や妻の権利を
保障する方策もなければ納得できない」と言って反対するのでした。
違憲判決ですから、「方策」などなく無条件で民法改正をするのが本来です。
それでも「方策」が必要というなら、具体的にどんな「方策」を
考えているのか出していただきたいと思います。
でなければ、それこそ反対のために「ただ言っているだけ」になります。


マスメディアは上記リンクのように、日経の記事は「やや節度に欠ける発言」と
表現が控えめですが(「やや」ではなく「かなり」だろう)批判はしています。
毎日の記事は「自民党は思い上がるな」と、なかなかはっきりと
見出しに書いていて、結構強い批判となっています。

日刊ゲンダイは政治評論家の森田実氏からコメントを取って、
自民党こそ傲慢で暴走していると、もっと露骨な批判をしています。
ゲンダイはもともとこういうメディアですから、さもありなんではあります。
「今の自民党には歪んだ考え方を持っている議員が多すぎます。
憲法を守り、決めた法律には従う。それが法治国家の基本です。
国会議員は率先して憲法を守る義務がある。
最高裁が違憲と判断した場合、立法府が速やかに改正手続きに入るのは当然のことです。
それなのに、司法の暴走だとか、憲法が悪いと言うのは傲慢だし、
法の支配について理解がなさすぎる。暴走しているのは自民党の方です」

「傲慢」というのは、わたしも思ったですよ
「暴走しているのは自民のほうだ」という意見もありましたし、
森田実氏とおなじことを思った人は、きっとたくさんいると思います。


それでも全体的にマスメディアはまだまだ低調のような感じです。
法案提出が握りつぶされたと決まったわけではないので、
様子見をしているのもあるのかもしれないです。

わたしが見たところでは、世論がおとなしいと思います。
自民党政権がやることなので、なにをやってもだんまりなのか、
三権分立や違憲立法審査権への挑戦・否定が深刻だと思わないのか、
自分と直接関係ないので興味もわかないし、なにが問題なのか
そもそもがよくわかなってない、という人も多いのかもしれないです。

posted by たんぽぽ at 17:10 | Comment(6) | TrackBack(0) | 民法改正一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
もし自民党の改憲が実現したらその「新憲法」を根拠に、いままでの違憲判決や憲法上の権利と認めた判決などが無効とされそうで怖いですね。それは右からの革命とでもいうことになるでしょう。
Posted by 御光堂 at 2013年11月03日 17:31
御光堂さま、おひさしぶりです。
こちらのエントリにコメントありがとうございます。

>もし自民党の改憲が実現したらその「新憲法」を根拠に、

それはじゅうぶんありえることですよ。

婚外子に関しては、相続差別を合憲にすることが、
自民党の憲法草案のそもそもの目的でしょうからね。
今回の違憲判決が気に入らなくて、「憲法を改正しよう」などと公言する
反対派が自民党にいるくらいですし。

自民党の改憲が実現したあかつきには、もう一度裁判を起こして
婚外子の相続差別をなくした規定をふたたび違憲にして、
相続差別があるもとの条文に戻すことになりかねないと思います。
Posted by たんぽぽ at 2013年11月03日 17:44
正しい家族幻想な連中も、さすがに相続差別については折れたようですね。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131105-00000565-san-pol

それでも「婚外子」と言うカテゴリーは断固死守するつもりらしいですが。
そのカテゴライズ自体が差別であることに気付かない、気付こうとしない、気付きたくない、つくづく哀れな連中だと思います。
そう言う哀れな連中に限って、声だけはデカいから、困ったものですよね、まったく。
Posted by ニャオ樹・ワタナベ@モバイル at 2013年11月06日 18:13
ニャオ樹・ワタナベさま、
こちらにコメントありがとうございます。

>正しい家族幻想な連中も、さすがに相続差別については折れたようですね。
>http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131105-00000565-san-pol

ご紹介ありがとうございます。
最高裁の違憲判決に従ってくれたのは、ひとまずよかったと思います。
一時は判決に従う気配がぜんぜんなくて、しつこく抵抗を続けて
臨時国会での法案提出は無理かもと、思い始めていましたからね。

>それでも「婚外子」と言うカテゴリーは断固死守するつもりらしいですが。

住民票の嫡出・非嫡出のチェック欄はそのままにするのですよね。
「家族のカチ」信仰の人たちに、そこまで期待するのはそもそも無理なのでしょうけれど。
彼らにとっては相続差別をなくすだけで、もはや妥協しがたいことでしょうし。

>そう言う哀れな連中に限って、声だけはデカいから、

そうなんですよね。
あちらさんは「信仰」がかかっているから、おのずと必死になるのでしょう。
まともな主張をする側はそれでいつも損しますね。
素朴な「言論の自由」信仰はここでも崩れるということです。
Posted by たんぽぽ at 2013年11月06日 22:07
今折れたとしても、憲法改正すれば覆せると思ってそうですね。
自民党の憲法改正が実現したら一体いくつの法律が「改悪」されることか。
Posted by 御光堂 at 2013年11月08日 06:28
御光堂さま、またまたコメントありがとうございます。

>今折れたとしても、憲法改正すれば覆せると思ってそうですね

西田昌司なんて「現行憲法が間違っている」と言ってますからね。
http://bit.ly/1aaLDgY

婚外子の相続差別を復活させるために、憲法改正を目指す議員も出てくるでしょうね。
新しく作るらしい「『家族の絆を守る』特命委員会」とやらで、
それを本格的に検討するかもしれないです。

>自民党の憲法改正が実現したら一体いくつの法律が「改悪」されることか

考えただけでも怖いことです。
Posted by たんぽぽ at 2013年11月08日 07:03
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