2013年11月06日

toujyouka016.jpg 外国から見た専業主婦

厚生労働省が9月の下旬に発表した「若者の意識調査」について、
10月25日エントリでご紹介しましたが、独身女性の3人にひとりが
専業主婦を希望しているという調査結果が、マスコミで注目されたのでした。

かかる「若い女性の専業主婦願望」は、外国のメディアでも報道されました。
以下にご紹介をしたいと思います。
外国のかたたちから見ると、すくなくない日本人女性が専業主婦を希望していたり、
専業主婦になることがステータスにさえなっているということは、
多分に理解しがたいことなのですよね。

「専業主婦になりたがる日本女性 海外からは疑問の声が 【争点:アベノミクス】 」
「「専業主婦」になるなんてもったいない!? 日本在住の外国人に聞いてみた!」

 
>フランス

フランスのフィガロ紙には、つぎのようなコメントが寄せられているのです。
ハフィントンポストの記事の孫引きですが引用したいと思います。
なんと「日本はしょせん男社会で女性差別の国だからね」と言われているのですよ。
http://www.huffingtonpost.jp/2013/10/07/full-time-homemaker_n_4061219.html
========
もしフランス女性が日本人男性と暮らしたら上手くいかないだろうな。
企業は女性の職場環境改善にもっと努力すべき

(このような結果になるのは)日本女性に社会進出に対して
強いプレッシャーがあると信じたい。だけど場所の東西や男女に限らず、
人々は会社を自己実現の場所と異常なほど思い過ぎていないか

日本は男性優位の文化だから仕方ないよ

どこの国でも男性に昇進の機会が多いのは変わらない。日本はそれが強いだけ

主婦になりたいという理由は一部で理解もできるけど、(各人の)独立はもっとも大事でしょ。
日本は専業主婦になることが常にクールだと思ってるんだ。
何も将来が無くて、人が多ければいいけど……日本は少子化なんでしょ

女性がいまだ1950年代の価値観に立っているのはとても悲しい
========

「いまだ1950年代の価値観」というコメントがありますが、
フランスでは女性が家庭に入って当然なのは、1970年くらいまでのことだそうです。
「女性のシャカイシンシュツ」なんて、すでに過去の問題なのでしょう。

ご存知のように、21世紀のフランスは女性が仕事を続けながら、
出産と育児ができる環境をどんどん整えて、出生率を上げている国です。
それでいわゆる「先進国」のはずの日本で、いまだに専業主婦願望の女性が多い
という状況が、不思議に見えるのだろうと思います。

「フランスの高い出生率」


中には「日本は少子化で人材難のはずなのに、女性を専業主婦にするなんて、
なぜに人的資源の無駄遣いをするのか」という意見もあったりします。
日本は女性の労働力率を高めることが、将来の労働力不足を補い
経済成長も見込めるということは、よく言われることです。
投稿したかたはそうしたこともよくご存知のかたなのでしょう。

「OECDの男女格差の報告」
「「男女平等は二重の効果」UNウィメン事務局長が講演」

専業主婦を希望する女性が多いのは、男性や社会に原因があるとして、
女性のせいにしない意見が多いのが、わたしには安心できるところです。
フィガロに意見を寄せたかたたちは、ジェンダー問題の本質的なことが、
よくわかっているのかもしれないですね。
低レベルの議論に悩まされる日本の論調とは、だいぶ違うなと思います。


>ドイツ

ドイツ人から見た場合については、つぎのツイートをご紹介します。
https://twitter.com/SandraHaefelin/status/384572557308858369
https://twitter.com/SandraHaefelin/status/384556959086551042
https://twitter.com/SandraHaefelin/status/384550478056398849
https://twitter.com/SandraHaefelin/status/384552734545829888
https://twitter.com/SandraHaefelin/status/384553961346183168
https://twitter.com/SandraHaefelin/status/384555140054667264
https://twitter.com/SandraHaefelin/status/384554507511668736
https://twitter.com/SandraHaefelin/status/384555643526320128

ドイツでは20-30代の女性が専業主婦願望を口にしたり、
長年専業主婦をやっていたりすると、「なにか事情がありそう」と思われます。
それは「ドイツ語が出来なくて職がない」とか「学校を中退したので職がない」とか
「夫がDV男で外に働きに出してくれない」といったことです。
https://twitter.com/SandraHaefelin/status/384555140054667264
========
このように、ドイツにおいては「専業主婦」と聞くと、
「何か事情がありそう」な匂いがプンプンするので、そのような事情
(事情とは「ドイツ語が出来ない」「学校中退などの学歴問題」
「外に働きに出させてくれないDV夫の存在」)が無い女性からしたら、
専業主婦は憧れの対象にはならないのです。
========

専業主婦というのは、よんどころない事情でやむをえずやることで、
好き好んでやることではないと考えられているのですね。
「ドイツは経済力があるので、ヨーロッパの周辺国とくらべると
専業主婦の世帯が多い」ということを聞いたことがあるのですが、
それはすくなくとも「過去の常識」であるのでしょう。


そういうしだいなので、日本人女性がドイツで「専業主婦をやっている」と
嬉しそうに言うと、不思議に思われることになるのでした。
そのつぎは、例によって「やはり日本は遅れた国」と思われることになります。
https://twitter.com/SandraHaefelin/status/384555643526320128
========
なので、ドイツ国内で日本人女性が「ワタシ、専業主婦なんですう=^^」と
嬉しそうに話すと、周りのドイツ人に不思議がられるか、
「やっぱり日本は遅れた国なんだ・・・そういえば『ゲイシャ』って
日本のものだったしな・・・」と思われるだけです。
厳しいようですが、それがドイツの現実でございます
========

そこでなんで「ゲイシャ」が出て来るんだ?とちょっと思いますが、
外国人にとっては「ゲイシャ」は日本の女性差別の象徴なのかもしれないです。
日本の男たちは、女を性的搾取する伝統があると思われているのでしょう。
従軍慰安婦のイメージにならないだけ、まだましかもしれないです。

posted by たんぽぽ at 22:15 | Comment(6) | TrackBack(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
たんぽぽさん
  この記事、面白いですね。フランス人とドイツ人の反応の違いとかがです。10月25,26日の関連ブログ記事も読みました。日本人女性の専業主婦志向について、外国人が自国の国情に引き寄せて感想を持つのは仕方がないですが、日本人の多くにこういった結果について、実際にはWLBの達成が非常に困難な日本の職場で女性雇用者が家庭と仕事のどちらかを犠牲にしなければならないといった状況があることや、女性に男性と同様の仕事上のキャリア形成の機会がない状況といった社会条件のもとでの結果としての「専業主婦志向」なのですが、それを無視して女性自身の意識の問題とみる傾向があり、それがまた女性の仕事意欲は男性より低いと「思い込んで」女性にチャンスと与えない多くの日本企業のあり方に結びついていることを考えると、今回のような「調査結果」がどう解釈され社会に伝えられるのかは本当に注意して行く必要があると思います。
Posted by 山口一男 at 2013年11月09日 05:10
山口一男さま、いらっしゃいませ。
わたしのブログにようこそお越し下さりました。
ほかのエントリもご覧下さり、ありがとうございます。

>日本人の多くにこういった結果について、実際にはWLBの達成が非常に困難な日本の職場で

そうなのですよね。
日本の若い女性の専業主婦指向は、10月25日エントリでも書いたけど、
1. 相手の男性に家事が期待できないから
2. 不況で女性の就職がむずかしい&妊娠出産後仕事を続けるのがむずかしい
ということで、単純な「保守化」とは違うのですよね。

この事情はじつは日本特有なのかなと、わたしはちょっと思っています。
たぶん外国にはおなじ事情はないので、それで外国のかたには
なかなか理解できないのではないか、という気がしています。

フランスとドイツを挙げたけれど、ほかの国を見ても、
世界的には専業主婦というのは、時代の役目を終えつつあるようですね。
日本でも時代の役目を終えつつあるはずなんだけど、
社会がそうした環境をじゅうぶん与えていないということですね。


>それを無視して女性自身の意識の問題とみる傾向があり、
>それがまた女性の仕事意欲は男性より低いと「思い込んで」
>女性にチャンスと与えない多くの日本企業のあり方に

現状は社会や男性の意識に原因があるのであり、
女性自身の意志の問題ではないのですよね。
フィガロ紙に投稿したかたたちは、そのあたりはわかっているようです。
たぶん多くの女性は、経済的に自立することは大事と考えているけれど、
現実の壁に当たって、それが多分にむずかしいと実感するようになり、
専業主婦願望になるのだと思います。

>今回のような「調査結果」がどう解釈され社会に伝えられるのかは
>本当に注意して行く必要があると思います

調査結果を取り上げたマスコミも含めて、多くの人たちは、
原因を適切に把握しておらず、単純な若い女性の「保守化」のように
考えているのではないかと思うのですよね。
単純な「保守化」ではないことを的確に理解しないと、
問題の解決はむずかしいでしょうね。
Posted by たんぽぽ at 2013年11月09日 10:38
たんぽぽさん

丁寧な対話に感謝します。以下の部分ですが、おっしゃる通りですが、「保守化」が変化についていって
いるので、それについて考えると

>1. 相手の男性に家事が期待できないから
>2. 不況で女性の就職がむずかしい&妊娠出産後仕事を続けるのがむずかしい
ということで、単純な「保守化」とは違うのですよね。

1。については未婚男性の「意識」については、特に育児について、自分も配偶者と分かち合いたいという、いわゆる「イクメン」志向の男性は増えているように(調査結果から)思われますが、実際に育児休業をとる男性は一時2%を超えたものの、また後退傾向にあります。夫以上に、日本企業が伝統的分業を押し付ける傾向が強くあるからです。同様に、2については従来からある結婚育児離職後の女性の職がキャリアの進展性の無いパート・アルバイトにほぼ限定されることに加え、企業が人件費減らしのためにとった新卒者の非正規雇用への転換が特に女性雇用者を中心に進められた社会状況があります。これらは共に、長期雇用、長時間労働、滅私奉公的は時間管理の自由の少ない働き方という慣行を、分業を前提として男性に押し付けることが高度成長期に慣行化し、今もまだそういったやり方から企業が抜け出られないことと関係していると思われます。政府が少子化対策上「イクメン」を奨励しても、企業の体質は、日本企業の過去の唯一の経済的成功体験がそういった雇用者の自由の少ない雇用慣行のもとで達成されたので、それを多様な働き方を選好する人材を生かす上でも、自由な社会のあり型の上でも不合理かつ不公平であったし、現在もそうであるとの認識になかなか変わらないのです。過去20年、日本経済は低迷しているのに、それを経済のグローバル化の中での外的状況のせいにして、自分たちの人材活用のありかたが合理的でもなく、個人の自由や人権を尊ぶ社会のありかたとも矛盾していたとも考えないのです。日本にそれなりに満足できる豊かさ、消費社会を生み出し、自分たちはその原動力であったとみていますし、その事実自体は確かにその通りであったわけです。その結果相変わらず日本企業の多くが、個人の自由を求めず自分の人生を会社と一体化して考える雇用者しか信用しないような状況です。一方そういう多くの日本企業のありかたが、そういう生き方を自分のものとはできない才能のある多くの人々(女性だけでなく男性も)から社会的機会を奪ってきました。その中で専業主婦志向も、様々な形で再生産されてきているのだと思います。現在のそれが現実的であるかどうかは、共働きでないと経済的豊かさが維持できない社会になりつつある現在疑問ですが、女性にとって他の選択も狭まる社会状況での、ひとつの逃げ道の願望なのかもしれません。







Posted by 山口一男 at 2013年11月11日 02:15
山口一男さま、またまたコメントありがとうございます。

>1。については

育児休暇を取る男性は、じつは女性とくらべると桁外れにすくないのですよね。
「イクメン」志向の男性は増えていると言っても、
まだまだごく少数ではないかと思います。

男性が育児休暇を取ることへの圧力も根強いものがあるけれど、
最近になって「パタハラ」と言われて、問題視されるようになってきましたね。
http://taraxacum.seesaa.net/article/371751454.html

日本人夫の家事時間は、諸外国とくらべて短いという調査もありますね。
これは家庭内労働の負担の多くが女性にのしかかる直接的な原因だと思います。
http://taraxacum.seesaa.net/article/368561639.html


>2については

妊娠・出産後も女性が仕事を続けられるような環境を
整備することが大事だ、というのは再三言われていることなのですよね。
こちらもなかなか変わっていかないですね。

女性に非正規雇用が多いのは、バブル崩壊以前は「腰掛け」にしていた女性を
バブル崩壊以降非正規で雇うようになったことが大きいですね。
男女雇用均等法の導入と、不況で人的資源の無駄遣いが
できなくなったのが、大きな原因なのでしょうけれど。


>今もまだそういったやり方から企業が抜け出られないことと

企業の意識がどこまで旧態依然かという問題もありますね。
バブルがはじけて四半世紀になりかかっているので、
さすがに時代が変化していることくらいは、わかっているのかとも思うけれど。
案外時代の変化が理解できていないことはあるかもしれないですね。

高度経済成長期からバブル時代までの「成功体験」の印象が強すぎて、
時代が変化したにもかかわらず、まだまだむかしのやりかたで
うまくいくと確信している人は、いまもって多そうではありますね。

いまの企業社会では中高年男性の既得権が維持されていて、
そのために女性雇用者が労働市場の周辺に追いやられているのは現状ですね。
女性を積極的に労働市場に参加させなくても、
まがりなりにもやっていけている、ということなのでしょうけれど。
労働市場に思うように参加できないことが、とくに若い女性のあいだでの
専業主婦願望の原因のひとつということですね。
Posted by たんぽぽ at 2013年11月11日 22:14
たんぽぽさん
  おっしゃる通りだと思います。再度丁寧な対話をありがとう。では、またいずれ。
Posted by 山口一男 at 2013年11月12日 05:12
コメントありがとうございます。

いえいえ、こちらこそコメントをいただき、とても嬉しく思います。

つたないブログですが、またお越しいただけたらと思います。
Posted by たんぽぽ at 2013年11月12日 07:38
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