民法改正法案を了承しましたよ。
これで臨時国会での法案成立の見込みがかなり高くなってきました。
「婚外子巡る民法改正案 自民部会が了承」
「婚外子:相続半分規定を削除 民法改正案を自民部会が了承」
「婚外子も相続平等 自民が民法改正案了承し今国会成立へ」
「婚外子格差規定の撤廃了承=民法改正案、今国会成立確実にー自民」
自民党内で反対派が噴き上がりましたし、一時は臨時国会での成立は
無理になる可能性も予想されたので、これはこれでよかったと思います。
頑迷きわまりない反対派たちも、違憲判決には従わざるをえないと折れたようです。
赤池誠章参院議員は「最高裁の決定だから形式的には従わざるを得ない。
悪法も法なりという言葉があるが、悪決定も決定だ」なんてコメントしていますよ。
最高裁決定を「悪法」呼ばわりとは恐れ入ったものです。
自分たちが信じ切っている「家族のカチ」にもとづいた法律こそ
「悪法」だとは、すこしも思わないのでしょうね。
11月5日は野党各党が、参院に民法改正法案を提出しています。
自民党法務部会が了承したのは、記事の配信時間から推定して、
11月5日の晩と思われるので、野党による参院提出のあとではないかと思います。
野党による法案提出の影響がどの程度あったかは微妙なところです。
頑迷な反対派議員たちを納得させるにあたって、
(1)党内に「『家族の絆を守る』特命委員会」を設置するという条件を出したのですよね。
(2)法務省内にワーキングチームを設置する
(3)両者が連携して法律上の配偶者を保護する相続の在り方について
1年をめどに施策をとりまとめる
こうでもしなければ納得しないというのも、じつにお粗末なことです。
特命委員会とかワーキングチームとか、どんな得体の知れないものが
できるのかと思います。
(3)に関して具体的には、配偶者の相続分の拡大を考えているとあります。
ところがよくご存知のように、婚外子の相続差別を廃止しても、
配偶者の法定相続額は半分のままで変化はないです。
今回の民法改正は配偶者の利益にはなんら影響がないのに、
こんなことをしてどうするつもりなのかと思います。
婚外子の相続差別がなくなると、配偶者の取り分にも影響が出ると
信じているかたは、反対派の中には結構いるようです。
なのでその程度の誤解にもとづいているだけなのかもしれないです。
法務省は出生届けにある嫡出・非嫡出を区別するチェック欄を
廃止する戸籍法の改正も準備していました。
ところが自民党内の頑迷な反対派たちは、「司法が違憲判断したわけではない」
と言って猛反対し、戸籍法改正は見送られることになりそうです。
「家族のカチ」を信仰する彼らにとって、相続差別の撤廃だけでも
じゅうぶんすぎるくらい受け入れがたいでしょうから、
それ以上のことなど期待できるはずないと言えば、それまでですね。
「婚外子差別はなくすべき」とされているのですが、
彼らはそれが本質的に理解できないのでしょう。
どうせこんなことだろうと予想できたとはいえ、あまりにお粗末だと思います。
>1年をめどに施策をとりまとめる
>(3)に関して具体的には、配偶者の相続分の拡大を考えているとあります。
>ところがよくご存知のように、婚外子の相続差別を廃止しても、
>配偶者の法定相続額は半分のままで変化はないです。
>今回の民法改正は配偶者の利益にはなんら影響がないのに、
>こんなことをしてどうするつもりなのかと思います。
彼らの言う『法律上の配偶者を保護』とは、相続の額面とかそう言うことではない、と言うことでしょう。『非嫡出子の相続を嫡出子の相続の半分とすることで、暗に本妻と妾との間に設定していた格差の量を守る。』と言うことでしょうな。
元々、妾自身には法定相続分は全くありません。にもかかわらず妾の子にまでも法定相続上の格差を付けることで、妾を徹底して法的に貶め、相対的に本妻の地位を浮上させることが、彼らの言う「法律婚重視」なんだと思います。
仮に彼らの理想とする法律婚が、夫と妻が平等なものであったなら、結婚における下層階級=妾、みたいなものは設定する必要がないでしょう。『法的に結婚してないのだから、法定相続分は認められないよ。勿論、子供は関係無いが。』だけで済むはずです。
彼らの理想では「夫>妻」であるが故に、下克上防止目的で、少数の妻の下の層=妾を法的合理性を欠くレベルまで徹底的に虐げることを合法化する。士農工商の下に、人間の格付けにすら入れない小数の集団を設定した徳川幕府と同じ発想じゃない?それって?
・・・と、思ったりもします。
彼ら反対派の思考構造や精神構造は、よくわからないですね。
元来が「信仰」のようなものなので、論理性がないですからね。
「わかる人」には説明なしに「わかる」のでしょうけれど。
「信仰」を共有しない人には、とうてい理解しがたいでしょうし、
そうした人たちを無視している時点で、国の法律で決めるべきことではないのだと思います。
ようは彼ら反対派たちにとって、現行民法で定められた家族の規定が、
彼らの幻視する「正しい家族」なんだろうと思います。
つきつめると「戦後の民法でそう決めたから」程度の理由しか
ないのではないかとも思います。
その現行民法に婚外子の相続格差があるので、婚姻の内外で眼に見える差を
付けることが「法律婚の配偶者の保護」と、彼らは信じているのでしょう。
相続格差が廃止されると、婚姻内外の眼に見える差がなくなるので、
その「保護」がなくなると信じているのだと思います。
今回の違憲判決で子どもどうしのあいだで格差が付けられなくなったので、
配偶者の取り分しか操作をするところがなくなった、ということなのでしょう。
それで婚姻内の配偶者の取り分を操作することで、
なんとか埋め合わせようということではないかと思います。