2013年12月02日

toujyouka016.jpg 男性不妊症の記事のメモ

最近は男性が原因の不妊について、だいぶ取り上げられるようになったようです。
いくつか記事があるのでご紹介したいと思います。

「不妊の原因 半数は男性 積極治療を」
(はてなブックマーク)
「男性不妊症は、どうすれば治療できるのか?」
「夫の「子どもはまだいい」を変える「男性不妊」の話」

 
NHKのニュースで報道されている不妊問題に取り組むNPO団体は、
「Fine 現在・過去・未来の不妊体験者を支援する会」ですね。
取り上げられている催しはおそらく11月3日に開かれた、
『Fine祭り2013 ちゃんと知りたい!男女の不妊』であろうと思います。

男性が原因の不妊が、これまであまり注目されてこなかった理由は、
1. 不妊は女性だけの問題と思われている
2. 男のプライドにかかわる
ということだろうと思います。
ここへ来てようやく本格的に男性不妊が取り上げられるようになった、
というところなのかもしれないです。


1.については、日本も前時代においては「子なきは離縁」などと言って、
不妊の原因を一方的に女性にあると決めていたことがあったのでした。
現在はここまで極端ではなくても、なんとなく男性は不妊の問題とは
関係ないと思われているところは、いまもってあるでしょう。

WHOの不妊症に関する調査では、男性だけに原因があるケースが24%、
男女双方に原因があるケースは24%で、両方合わせて48%の不妊が
男性に原因があることがわかっています。
こんな調査を持ち出さなくても、男女両方に不妊の原因がありうることなのは、
すこし考えればわかるはずのことなのですよね。

2.については、前にダイアモンド・ユカイ氏のことを取り上げましたが、
「種がない」というのは、すくなくない男性にとって
かなりの屈辱になるようなのですね。
それでも「男のプライド」なるものがある程度容認されるのは、
社会がそれだけ男性優位になっている、ということなのだろうと思います。
(女性であれば「プライド」なんて言っても容認されないでしょう。)

このような事情から、男の人は不妊の検査や治療に積極的にならないことが、
いまもってすくなくないわけです。
実際、最初から夫婦ふたりで検査に来ることはあまりなく、
はじめに女性だけが検査に行き、そこで異常がなにも見つからないと、
はじめて男性が来るというのが、多くのパターンだったりします。


NHKのニュースで取り上げられているNPO団体「Fine」の催しでも
講演なさった、男性の不妊治療の専門家である
石川智基氏の書いた記事があるので、ご紹介したいと思います。
今年の7月31日付けなので、すこし前の記事ですね。

「男性不妊症は、どうすれば治療できるのか?」

医学的な問題としては、男性に不妊の原因があるのに、
必要な検査や治療を受けないと、女性に不必要な負担がかかることがあります。
男性側の原因を治療で解決することで、負担が減ることもあるわけです。
男性が必要な検査や治療を拒むのは、やはり不妊の問題を
理不尽に女性に押し付けることになるということです。
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男性側の問題を治療で解決できれば、女性は、体外受精のために、
卵巣刺激や採卵といった負担のかかる治療を受けずに済むかもしれません。
不妊治療は、一般に、タイミング療法から、人工授精、体外受精と
“ステップアップ”していきますが、男性不妊症を治療することで、
体外受精から自然妊娠へという“ステップダウン”も可能になった例も多いのです。
問題のない妻に負担をかけ、しんどい思いをさせるのは非合理だと思います。
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医療の態勢にもまだまだふじゅうぶんなところはあって、
男性不妊はマイナーな分野であり、専門医がすくないという状況です。
手術を受けるとなると半年待たされることも多く、
妻の年齢が高い場合、とても余裕がないこともあることになります。
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男性不妊症は泌尿器科医の担当になりますが、かなりマイナーな分野で、
専門医は全国で46人しかいません。しかも、東京、大阪など大都市に偏っています。
婦人科医は通常、精液所見まで診た後、治療は泌尿器科の
男性不妊専門医を紹介しますが、気軽に紹介できる状況にはありません。
しかも、手術を受けるとなると、半年以上待たなければならない、
という病院も珍しくありません。
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法的な問題としては、男性不妊の治療は保健が適用されない自由診療で
なおかつ社会的支援もないということがあるでしょう。
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体外受精・顕微授精は健康保険が適用されない自由診療ですが、
公的な助成制度があります。しかし、男性不妊症の治療には社会的支援がありません。
精路再建術にしても、健康保険では糸代程度しかカバーされていないので、
現実には自由診療にならざるをえません。
そのうえ、精路再建は、全身麻酔下で何時間もかかる手術になるので、
10分程度で終わるTESEで手っ取り早く精子を回収して、
公的助成のある顕微授精に、流れてしまいがちなのもわかります。
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男性不妊の問題はやはり「まだはじまったばかり」のようで、
男性側の意識だけでなく、医療の態勢の充実や法的・制度的な整備など、
取り組まなければならないことがたくさんあるようです。


ともすれば渋りがちな男性に不妊の検査や治療を即すために、
女性からはどうしたらよいかの「指南」を書いた記事があります。
これもご紹介したいと思います。

「夫の「子どもはまだいい」を変える「男性不妊」の話」

「うまく男性を導いていくのはやはり女性でしょう」とあるのですよね。
こう言われると「本来は男の問題なのに、なんで女がいちいち気を遣って
やらねばならないのか」という、理不尽さはあるかもしれないです。
女性向けに書かれた「夫に家事をやらせる方法」と似たようなものを感じますね。

それでも現実問題として、男性は不妊の検査や治療に対して
「自分のこと」という実感がすくなく、消極的になりやすいです。
また一般には妻のほうが夫より不妊に関する知識が多いこと、
そして妊娠の時期が遅れると、女性のほうに負担が大きくなることがあります。
こうしたことを鑑みると、このような「指南」が必要になるのも、
現実の対処としてはやむをえないところはあるのでしょう。

posted by たんぽぽ at 07:26 | Comment(0) | TrackBack(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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