2013年12月14日

toujyouka016.jpg GIDの男性の子が嫡出子

性同一性障害で女性から男性になったかたが、精子提供で妻とのあいだに
設けた子が嫡出子になる、という最高裁判決が12月10日に出ましたよ。
最高裁第三小法廷で審理され、賛成3、反対2の賛成多数で判決が下りました。

「性別変更した男性と、精子提供の子は父子 最高裁初判断」
(はてなブックマーク)
「性別変更の夫婦の子で初判断」
(はてなブックマーク)
「性同一性障害の男性を「父」と認定、最高裁 第三者から精子提供」

最高裁決定の要旨はつぎに載せられています。

「性別変更の夫と人工授精の子、父子認定の最高裁決定要旨」

 
この性同一性障害の男性のご家族は、わたしもこのブログで
何度かお話したことがある兵庫のかたですよ。
嫡出子として認められないのを不当だとして、長男のときと次男のときとで
2回訴訟を起こしていたのですが、2度とも訴えが退けられたのでした。

「GIDの男性の子が婚外子」
「GIDの男性の子が非嫡出」

訴えが認められないのは、「生物学的な父子でないことがあきらか」だからです。
2回とも原告が敗訴ということもあって、この問題については、
わたしはあまり改善されるとは思っていなかったのでした。
そこへとつぜんの最高裁判断で嫡出子と認めるという判決が出て、
こんなこともあるんだと、わたしはちょっとびっくりですよ。


判決の根拠は民法772条です。
「離婚後300日規定」などを定めた、父性の推定に関係する条文ですよ。
簡単に言えば、772条にしたがって生物学的な親子関係かどうかにかかわりなく、
現在婚姻している夫の子として推定するべし、ということです。

http://www.asahi.com/articles/TKY201312110450.html
だが、性別変更の審判を受けた者については、
妻との性的関係によって子をもうけることはおよそ想定できないが、
一方、そのような者に婚姻することを認めながら、
他方で、婚姻の主要な効果である772条による嫡出(ちゃくしゅつ)の
推定についての規定の適用を、妻との性的関係の結果もうけた子で
ありえないことを理由に認めないのは相当ではない。

そうすると、妻が夫との婚姻中に懐胎した子につき嫡出子であるとの
出生届が出された場合、戸籍事務管掌者が、戸籍の記載から
夫が性別変更の審判を受けた者であり、当該夫と当該子との間の血縁関係が
存在しないことが明らかであるとして、当該子が民法772条による
嫡出の推定を受けないと判断し、それを理由に父の欄を空欄とするなどの
戸籍の記載をすることは法律上許されない。

「離婚後300日規定」なんて、前夫の子でない客観的証拠が
たくさんある状況でも、かなり杓子定規に「前夫の子」と推定され、
生物学的な父子関係があきらかなのに現夫の子として
なかなか戸籍に登録しないことをやっているのですよね。

性同一性障害のときだけ「生物学的な父子関係にない」と言って、
ふつうに法律婚をしているにもかかわらず、
父子関係を認めないのは、ダブルスタンダードだと言えるでしょう。
生物学的な父子かどうかにかかわらず、
現在法律婚をしている夫の子に推定しないと、筋が通らないことです。


NHKの報道には3年前のことに触れられています。
これは民主党政権下のことで、法務大臣は千葉景子氏ですね。
3年前には当時の法務大臣がこうしたケースを「嫡出子」と
認めるかどうか検討する考えを示しましたが議論は進みませんでした。

「無戸籍児家族の会」が千葉景子氏法相に直接面会をしたのですが、
千葉景子氏の対応がなんとも「及び腰」で、関係者を失望させたのでした。
このころの民主党はよろずに腰が引けていたと思います。

「300日規定暗雲の記事」


付記1:

今回の最高裁判断があまりにものわかりがよくて意外なので
「離婚後300日規定」や「再婚禁止期間」を固定化したいためではないかと、
心配なさるかたもいらっしゃるのですよね。




付記2:
ハフィントン・ポストの記事に貼付けてあるツイート。

このかたに訊いてみたい。
「生物の目的は子孫を残すことだから同性結婚は反対!」

posted by たんぽぽ at 18:33 | Comment(0) | TrackBack(0) | 民法改正一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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