いまさらという感はあるけれど、このブログにも書き留めておきます。
10月31日に秋の園遊会で、山本太郎議員が天皇に直接手紙を手渡した事件です。
「山本太郎、園遊会で天皇陛下に「手紙」渡す
内容は「子どもと労働者を被曝から救って」?」
「山本太郎氏、天皇陛下に直訴 園遊会で手紙を手渡し 請願法違反の可能性も 」
最初にわたしがこのニュースを見たときは、「やはり山本太郎氏は
エキセントリックな人だな、天皇陛下もなにか受け止めてくれるかもね?」
くらいにしか思わなくて、たいして興味もわかなかったのですよ。
ところがあとの展開がのっぴきならないことになったのですよね。
山本太郎の手紙に対する国会内外の噴き上がりがすごかったのでした。
「天皇の政治利用だ」とか「請願法の疑いがある」とか
「時代が時代なら不敬罪だ」とか「議員辞職ものだ」とか「テロリストだ」とか、
山本太郎氏に対する攻撃が猛烈なものになったのです。
このままいくと山本太郎氏にどんな処分が下るのか?という勢いだったと思います。
請願法違反に当たらないことは議論されていましたし、
不敬罪もいまの時代には存在しないですから、適用はされないです。
参議院議長が山本太郎氏を呼び出して「参院の品位を落とすものだ」と厳重注意、
そして以後皇室行事への出席を認めないことで、国会内での収拾はついたようです。
ところがこれだけで騒ぎは治まらなかったのでした。
11月13日に山本太郎議員宛てに、刃物が入った封筒が送られたのでした。
さらにその封筒には「近日中に刺殺団を派遣します」とも書かれていました。
あからさまな脅迫ですが、国会議員に対してこのようなことがなされるのは、
深刻なことだと考えなければならないでしょう。
このニュースを聞いた自民党の鴻池祥肇氏、なにを思ったか、
「切腹用の刀が送られたそうだ」とか「犯人は私ではない。
私は近くに寄って、すぱっといくから。間接的な殺人はしない」とか
「天誅を加えなきゃいかん」とまで言ったのですよ。
山本太郎氏が脅迫されたことに、なんの問題も感じないどころか、
そういう脅迫をされて当然と無自覚に思っているようですね。
さらに11月21日に、また山本太郎氏に不審な封筒が届きます。
中には銃弾らしきものと「近日中に射殺します」と書かれた文書があったのです。
封筒の裏には「天誅」とも書かれていました。
鴻池祥肇氏の発言を意識した可能性が考えられますね。
山本太郎氏が天皇に手紙をわたしたことは、欧米のメディアでも話題になりました。
ここで彼らが問題にしているのは、天皇や皇族に関係したことに対する
日本国民の過剰反応ぶりについてなのですよね。
「BBCキャスター「エチケットはそんなに大ごとなのか」
山本太郎問題で日本人コメンテーターと火花」
「山本太郎を擁護した意外な面々
英BBC、ワシントン・ポスト、英・カトリックの聖職者」
https://twitter.com/gjmorley/status/399034407777869824
https://twitter.com/gjmorley/status/399035860999344128
https://twitter.com/gjmorley/status/399036233575170048
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山本議員の行動、および反響を解説する英ガーディアン記事。
バランスはとれています>
Japanese politician causes uproar by giving letter on Fukushima to emperor
http://gu.com/p/3k7an/tw
ガーディアン記事からかいつまんで:今なお日本の保守層では
皇室を「雲の上の人」ととらえる傾向が根強い。
かつては目を合わせることもはばかられ、今も携帯電話での撮影も失礼とされている。
リベラルからは山本議員の策略が天皇の政治的地位を
押し上げる結果になることを心配する声も。
さらにかいつまんで:「山本議員はアマチュアでポピュリストな
政治手法を通じて反原発運動にダメージを与えた」とする
日本の政治学教授のコメントを紹介。
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ヨーロッパの民主主義国の王族はもっとフランクですよ。
あちらの王族たちは、自転車に乗って街中を走り回ったり、
自分が運転する車にヒッチハイクを乗せたり、なんてこともします。
いまだに「雲の上の人」扱いで、一般人から厳重にかくまわれたような
日本の皇族とはだいぶ違いますよ。
そんなヨーロッパの人たちの感覚からすると、国会議員が天皇に手紙を
わたしたくらいのことで、議員辞職とかテロリストとか騒いだり、
脅迫の郵便を送る人が出てきたり、それを当たり前に思って問題視しない
というのは、びっくりするくらいの過剰反応なのですよ。
スウェーデンでは王さまがストリップクラブへ行ったというので、
国民から批判され、国王は位を譲るべきか、そして君主制そのものを
続けるべきかという世論調査が行なわれたのでした。
ヨーロッパの君主国では、君主制の是非を問うことも当たり前になされます。
ところが、日本では天皇制の是非を問うのはタブー中のタブーで
議論さえ許されず、絶対に世論調査をすることはないですね。
「性に禁欲的なスウェーデン」
「国王スキャンダルにみるスウェーデンの本当の顔」
ヨーロッパの君主国は女子にも王位継承権があるのが一般的です。
オランダのように100年以上女王さまの時代が続いた国もあります。
また男女で継承権が不平等な国も、イギリスのように
より男女平等なかたちに、法律が改正されるようになっています。
「女王の時代が100年続いた」
「イギリスの王位継承法改正」
日本はいまだに男子男系にこだわる人たちが根強く抵抗していて、
女性の天皇が認められるなんて、まったく思いもよらないことですね。
男子男系にこだわるとお世継ぎがいなくなる状況であったこと、
そして郵政選挙後の小泉政権下という、小泉首相(当時)の権力が
もっとも強かった時代に、女性天皇の反対派たちは皇室典範改正をつぶした、
というのがとりわけ大きいと思います。
「政敵や論敵に釘を刺す 女系天皇容認問題を題材として」
ヨーロッパの民主主義国からみると、天皇や皇族がいまもって
「雲の上」の存在で、国会議員が手紙をわたしだだけで猛烈に噴き上がり、
天皇制の是非の議論も許されず、男子男系に執拗に固執するというのは、
いったいどれだけ前時代的なのか?となるのだろうと思います。
山本太郎の手紙のことは「日本の常識=世界の非常識」を、
またしても諸外国にさらしたのではないかと、わたしは思いますよ。
(「日本は経済だけ発展した開発途上国」とは今回は言わない。
開発途上国のほとんどは植民地から独立したので、
建国のときから共和制で王さまがいない国だから。)