2013年12月31日

toujyouka016.jpg 曽野綾子の違和感のメモ

これもいまさらという感じですが、取り上げておきたいと思います。
『週刊現代』の8月31日号に載った、曽野綾子氏の記事です。
あの「出産したらお辞めなさい」発言が出て来た記事ですよ。

「曽野綾子「私の違和感」 何でも会社のせいにする甘ったれた女子社員たちへ」

ウェブでは全文が載せられていないのですが、図書館で雑誌が見つからなかったので
(雑誌は貸し出し中&予約多数のことが多く、なかなか読めない)
ウェブで載せられている部分だけでお話することにします。

 
曽野綾子氏の記事については、以下に反論を掲げた記事があります。
これらの記事をご覧になれば、一通りの反論は見ることができるでしょう。

「「出産したらお辞めなさい」労基法違反推奨の曽野綾子論文を
週刊現代が掲載した件はなぜ問題にならない?」

(はてなブックマーク)
「「甘ったれた女性社員たち」と吠える古びた論客たち」
(はてなブックマーク)
「女性は甘ったれ? 週刊現代の記事に働く女性から反論」
「働く女性は「わかりやすい仮想敵」? 中年男性の断末魔」

曽野綾子氏の記事は言い古された「女叩き」であり、新規性のないものです。
武田砂鉄氏が記事で「古びた論客」と呼んでいますが、本当にそんな感じですよ。
ようは「女は出産したら仕事をやめて子育てをやれ」なのですから。

そしてふたこと目には「権利を主張するのはわがままだ」という裁断です。
「お前らがもっと口を慎めば社会はよくなる」という発想ですね。
そうした認識のもとで、セクハラ、マタハラを訴えることも、
妊娠・出産後も仕事を続ける環境を要求することも、
保育所の拡充を求めることも、ことごとく否定するというものです。


セクハラやマタハラを訴えることや、妊娠・出産後も仕事を続けられることは、
女性たちに(じつは男性にもですが)認められたとうぜんの権利です。
それは「会社のせいにする」などという責任転嫁ではぜんぜんないですね。
認めるべき権利を認めず、「お前らが口を慎め」と言うほうこそ責任転嫁です。

男性がこれまであたりまえに享受してきたこととおなじだけのことを
女性もようやく主張し始めたというだけのことです。
先人たちが苦労して勝ち取り、国際的にもとうぜんのこととして
認められている権利を否定するほうこそ身勝手にほかならないです。

曽野綾子氏は「汚いことば」などと攻撃していますが、
当然の権利の行使をののしることは、女性たちが被害にあったとき
それを訴えにくくなり、権利行使を萎縮させることになりかねないです。
「言論を封じ込められている」のはむしろこうした女性たちのほうです。

伊藤和子氏の記事にありますが、セクハラ、マタハラの禁止や
産休制度の保証は、労働基準法や男女雇用均等法で定められたものです。
曽野綾子氏の主張する権利否定は、もちろん日本の法律にも反するわけです。
雇用主であれば刑事罰の対象ともなりかねないと言われています。
こうした遵法意識やコンプライアンスの欠如も問題になるところです。


曽野綾子氏は「私たちが若くして子育てをした頃は、
みんな貧乏暮らしをするもの」などということも言っています。
「むかしはお金がなくても子どもを産み育てていた」と言って、
精神論にすり替えようとするのも、こうした場合によくある発想ですね。
小泉純一郎の「犬のように産む」発言と同種のものです。

いまの子どもたちは、むかしの子どもより習いごとをしたり
上の学校へ進学する必要があって、教育にかかるお金がずっと多くなっています。
各人はそれくらいの教育を受けないと「人並み」になれないし、
また社会もそれくらいの教育を受けた人が出てくることを
前提にして成り立っているわけです。

人間が「人間らしい」暮らしができて社会に出るまでにかかるお金が、
むかしといまとでぜんぜん違うということです。
そうした状況をかんがみることなく、「むかしは貧乏でも子どもを産み育てていた」
などというお話をしても、なんら意味のないことです。


セクハラやマタハラを禁止し、女性が妊娠・出産後も働きやすい
環境を整えることが少子化の歯止めになることは、諸外国のデータ
少子化を解消した国のケーススタディなどから、くりかえし示されていることです。
「女は家庭にもどれ」という主張が、もっとも少子化を促進する
ということも、くりかえし議論されていることです。

曽野綾子氏が少子化なんて問題ないと考えているならいざしらずです。
ところが8月25日の産経新聞に『高齢化時代 始まる悲劇』という
タイトルのコラムを書いて、少子高齢化を問題視しているのです。
かかる自分の主張とも矛盾することになると言えるでしょう。

また少子高齢化にともなう労働力の不足をおぎなうために、
女性の労働力率を高める必要があることも、さんざん言われていることです。
そのためにも女性が働きやすい環境を整えることが大事なわけです。
また女性を労働市場に参入させることで、経済成長が期待できるという指摘もあります。
曽野綾子氏の主張は経済合理性にも逆行することになります。

posted by たんぽぽ at 17:26 | Comment(0) | TrackBack(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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