2014年01月04日

toujyouka016.jpg 人工知能学会の表紙絵(2)

1月3日エントリで、人工知能学会誌の表紙絵が「女性差別だ」と
批判されたことについてお話したのでした。

「人工知能学会の表紙絵」
「人工知能学会の表紙は女性蔑視?」

すでにお話したように、わたしはこの表紙絵はさほど気にならなくて、
さしたる興味もわかず最初はスルーしていたのですよね。
ところが「女性差別だ」と批判されたことに対して
せっせと反論している人たちが、すさまじいことになっているのですよ。
こちらは問題含みだと思ったので、わたしも情報を集めることにしたのでした。

 
いくつか「反論」を見ていきたいと思います。

https://twitter.com/ciel_1028/status/416110874026192896
可愛い女の子が掃除してくれたらいいけど身近にそんな娘もいない
男ばっかの研究室でむさ苦しいロボ作って楽しいと思いますか?
それが前のエントリでもお話しした、「男所帯だから女を描きたい」という
男性の欲望のあらわれであり、問題だと言うのですよ。
その発想は女性を人工知能の分野から遠ざけることにもなりかねない、
ということも、前のエントリでお話しました。

https://twitter.com/kamozi/status/416205622674092032
女性型掃除ロボットを嫌悪する女性って、
要するにキャリアウーマンを嫌悪する男性と同じでしょ。
自分の存在価値を侵されてると感じるから怒る。
批判する人たちは「自分の存在価値を侵されている」からではなく、
「女の存在価値は家事労働だ」というメッセージに対して批判しています。

https://twitter.com/chikuwa_3777/status/416100193814065152
その論で行くと、男性型ロボットにした場合男性差別になるのでは?
「家事は女の仕事」という社会通念は男女非対称です。
よってロボットを男にしたというだけでは男性差別にはならないです。

https://twitter.com/tari_tipa/status/416195324617580544
実際に「コード繋がれて、自分の意思をいうこともなく、主人の言うことを聞き、
家事を担う大人しくて可愛い女」型のヒューマノイドが開発されれば、
生身のリアル女性はジェンダー問題から解放されてハッピーになる
その目的なら家事労働ロボットを女性型にする必然性はないです。


トゥゲッターのコメント欄は、さらにすさまじくなっています。
http://togetter.com/li/607736

じゃああなたたちはこういう風にすべきだという論があるなら
出してくださいよっていうとさらに女性蔑視だ!!の無限ループになるんだよな。
(@O_Flow)
くだんの表紙絵は100点ほどの案の中から投票で選ばれたものです。
「対案を出せ」とのことですが、対案はすでにたくさんあったということです。

"日本に無邪気な性差別が溢れている事で女性は子供のうちから
性差別されている事が当たり前だと思って…" というのはむしろ逆で、
日本は女性差別には激しく反応する割に男性差別に声を上げる人は殆どいない
(@laevateinn495)
おなじみの女性の置かれている立場への無理解と男性の被害者意識ですね。
日本の女性差別の程度は、夫婦別姓が認められないとか、
男女の賃金格差とか、女性管理職の割合とか、女性議員の数とか、
性犯罪の暗数化とか、母子家庭への風当たりとかたくさんあって、
世界経済フォーラムの男女平等指数にも現れています。

「男性差別」とは具体的にはどんなことですか?
それは男性の既得権というだけではなかったりしませんか?

このテの人らにレディースデーの話を振ると
(@MOTTSAN)
レディースデーがあるのは、女性のほうが男性よりずっと収入がすくない
という現実があるからです。
男女の賃金格差という女性差別こそ解消していただきたいですね。

世の中の「お人形さん」の男女比を調査することをお勧めする。
(@Clearnote_moe)
お人形に女の子が多いのは、人形で遊ぶのが女性ジェンダーなので、
女の子を模したほうが遊びやすいという判断だろうと思います。
そして表紙絵のロボットが女性なのは、そういう判断によるものではないと思います。

これを女性蔑視と呼ぶ人は、フィクションの理想の人物を創作することが
女性蔑視であるとしている。不快に感じる人が居る事は否定しないが、
それを差別とするのは創作者等に対する侮辱
(@kaz9000)
創作物であっても差別的内容があればそれは批判の対象になります。
創作物ゆえに差別的メッセージを発信しやすく悪影響が大きいからです。
『サザエさん』や『ドラえもん』も差別的だと批判されることがありますよね?
「創作物だから」というのは、差別的表現を免責はしないですよ。


これのデザイン、史実を踏まえて「デブの黒人女」にしたら
フェミババも文句付けないんじゃなかろうか。
(@suuzanantonko)
フェミニズムに多少くわしければ、アメリカ合衆国のフェミニズム運動が
白人女性中心になり、黒人女性が置いて行かれた経緯もご存知だと思います。
「デブの黒人女」にしたら、なおさら強い批判がありそうですね。
(それから「フェミババ」というもの言いはなに?)

女性が出てるだけで、性的=差別って思うほうが、
(@sakanaya701)
「女性が出てるだけ」だから批判しているのではないです。
女性が家事労働と結びついて、「家事は女の仕事」というメッセージを
送っているから批判しているのですよ。

てかコレを差別だと批判するなら婚活女性向け雑誌だの何だの、
本屋にはもっとフェミニストが嫌いそうなものがいっぱいあるじゃん。
(@hizirichan)
「ほかに批判するべきものがある」と言って、
批判の矛先をそらそうとするのは、こうした場合のひとつの常套ですね。
それらを批判しているかたもいっぱいいるはずですよ。
すべての人がおなじことを批判する必要はないですね。
各人が興味を持ったものを批判すればよいのだと思います。

この表紙を差別差別と喚く連中はこういう現実から逃げているだけ。
日本経済新聞『独身女性、3人に1人が専業主婦希望 厚労省調査』
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG2403Y_U3A920C1CR8000/
(@hiroujin)
若い女性の専業主婦願望については、わたしのブログで再三取り上げました
ここでは、実際にはこれによって婚姻率が上がってはいない、
つまり願望だけで実際に専業主婦になる女性はそんなにいない、
ということを、指摘しておきたいと思います。


全部取り上げる気はさらさらないので、これくらいにしておきます。
見ての通りジェンダー問題について無理解だったり差別的だったりです。
人工知能学会誌の表紙絵そのものはたいしたことないと思ったわたしですが、
一生懸命反論している人たちは、いろいろと問題だと思います。

1月3日エントリで、「ロボット3原則」に言及したエントリを
ご紹介しましたが、このかたも最後のほうで、
http://d.hatena.ne.jp/rna/20131228/p1
僕が最初に「人工知能学会の表紙は女性蔑視?」を見たときに
コメント欄に溢れていたのは、むしろ酷いフェミバッシングでした。

と書いています。
わたし以外にも、おなじことを思うかたはいらっしゃるようですね。

posted by たんぽぽ at 22:15 | Comment(0) | TrackBack(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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