2014年01月07日

toujyouka016.jpg 着々と進む少子高齢化

厚生労働省が今年も人口動態の統計を発表しました。
毎年1月1日に記事になるニュースであり、お正月の隠れた名物だと思います。
(すくなくともわたしは勝手にそう思っている。)

「日本の人口、7年連続減 13年の自然減は過去最大更新」

 
記事には出生数と死亡数の年次推移のグラフがあります。
これを見ると、2007年から(死亡数)>(出生数)となっています。
そしてそれ以降死亡数と出生数の差は、どんどん広がっています。
もはやちょっとやそっとでは、とても取り返しが付かないという感じですね。

AS20140101000845_comm.jpg

現在の栄養状態や衛生環境や医療水準を考えれば、
死亡数をこれ以上減らすのはかなりむずかしいと思います。
となれば、この差を縮めるためには、出生数を増やすよりないことになります。


このような、少子高齢化がどんどん進んでいることを示すデータは、
いまに始まったことではなく、しょっちゅう出ているのですよね。
それでもまともな少子化対策はなかなかなされないのが現状なのでした。
なにをしたらよいかなんてさんざん議論されているし、
フランスをはじめモデルとなる国もすでにいくつもあります。
ところがそれが顧みられず、見当違いなことばかりやるのですね。

見当違いぶりは、安倍政権になってからもとくにすごいです。
女性手帳とか婚活支援とか育児休暇3年とかあったのでした。

「女性手帳で少子化対策?」
「婚活イベントに国が財政支援」
「育児休暇を3年にする?」

政府の取り組みではないですが、こないだの「お国のために恋愛しろ」は
かなり強烈だったと、わたしは思います。
(2013年は見当違いの少子化対策が、つぎつぎと出て来た年でもあったのですよ。)

「お国のために恋愛しろ?」


見当違いの少子化対策ばかりなのは、ひとつは安倍政権がそもそも
高度経済成長期の標準家族を「理想の家族」とする
「家族のカチ」信仰にこだわっているからだと言えます。

効果的な少子化対策の多くは、前時代的家族観をかなり変えるものです。
それはたいてい「家族のカチ」に反するので、実行したくないのでしょう。
それで「家族のカチ」に抵触しないことだけをやろうとするので、
効果がとぼしく見当違いなことが多くなるものと思います。

もうひとつ、当節の「自己責任」の雰囲気も反映していると思います。
それで福祉を削って家庭に負担させようとか、少子化対策も個人の責任に
帰せようとするものが多くなるのだと思います。

「憲法24条と社会保障」


ようは少子高齢化に対する危機感が、まだまだ本気でないのだと言えるでしょう。
それでイデオロギーを優先させたり、政府がお金や労力を
けちったりする「余裕」がある(と思っている)のだと思います。

政府がわかっていないのももちろんですが、
それ以前に国民一般のあいだで、少子高齢化の危機が
じゅうぶん認識されていないのではないかとも、わたしは考えています。
たとえば、2040年にすべての都道府県で人口が減少するという
厚生労働省の推計に、驚く人が多いなんてことがあったのですよ。
かかる国民の認識不足が、政権の政策にも反映していると言えそうです。

「少子化に無関心な世間」

ほとんどの人たちは、本当に手遅れにならないと、
なんとかしようとする気にはならないのでしょうね。
(手遅れにならないと、危機的状況に気がつかないのでしょう。)
「2050年には日本は超高齢化社会で世界一悲惨な国になる」という、
『エコノミスト』誌の予想は、このままいけば当たりそうですね。

「2050年の世界一悲惨な国」


付記:
手遅れになってもまだわからなくて、見当違いのことばかり
やろうとするのではないか?という懸念もあるのですよね。
https://twitter.com/IsSheW/status/417910216693276672
https://twitter.com/IsSheW/status/418019990185312258

posted by たんぽぽ at 21:13 | Comment(6) | TrackBack(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
なるほど、「自然減」ですね〜。
死亡数が増えたのには一瞬ドキっとしつつ、高齢者が増えたからですね。
人口減少社会に向けた制度設計をしていかないといけないのに、まったく進まないのは、「危機感が足りない」。

日本は競争力を失ってきて、このままどうなるんでしょうね。 色々なものが安く買えるようになった分、どんどん産業が空洞化して、みんなアジアに移っちゃって、取引先が倒産したって聞くと、やりきれない思いになりますね。昔は無理なスケジュールでもやってくれたのになあ、とかいろんな思いがありますね。こうやってどんどん職人技もなくなっていって、日本は自ら色んな物を捨ててモノづくりができない国になっていってます。

右肩上がりの幻想がいまだあるんでしょうか。高度成長期のようなことはもう無理なんだから、今後はいかにオリジナルを生み出し、知的生産性を向上するか、教育政策ももはや詰め込み式じゃ無理なんだって、ここもしっかり考えていかないといけないですね。
Posted by うがんざき at 2014年01月07日 22:46
個人的には子供を産む数が減っていること自体は全てが悪だとは思わないんです
産みたくない方もいらっしゃるでしょうし、昔は結婚しない、子供産まないなんて考えられなかったそうなので子供も必然的に多かったと思うんです。
今はそれだけ自由が少しずつ認められるようになったのかなとも思うんです
ただ、問題は産みたいのに産めない人ですよね
その点に関しては労働環境の改善や一人一人の意思改善(前近代的なステレオタイプな性別役割分担を捨て、男性も家事育児はおこなうなど)が必要不可欠だと思います
今の労働環境は時代にまるであってないですからね
あとはやはり待機児童問題も大きいでしょうね




Posted by りほ at 2014年01月08日 10:07
うがんざきさま、
このエントリにコメント、ありがとうございます。

>死亡数が増えたのには一瞬ドキっとしつつ、高齢者が増えたからですね

そうです、高齢者の増加です。でも一瞬「えっ?」と思いますね。

>まったく進まないのは、「危機感が足りない」。

たぶん「よくわからないけれど、少子化の危機と叫ぶ人たちがいるので、
なにかやらなければならないらしいよ」くらいの感覚ではないかと思いますよ。


>日本は競争力を失ってきて、このままどうなるんでしょうね。
>右肩上がりの幻想がいまだあるんでしょうか。高度成長期のようなことはもう無理なんだから

日本のものつくりの閉塞に関しては、つぎの記事に興味深い記述がありますよ。
最後のほうにこんなことが書いてあります。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGG20016_V20C13A6000000/
========
「高度成長期は成功モデルが見えていました。
製造業などでは欧米の成功事例に技術的に追い付き、
安価で製造できるように工夫すれば業績が伸びました。
こうした状況では社員の多様性はさほど重要ではありません。
結束力を高め、適切な方向に人材を集中すれば利益を生み出しました。
でも今はどんな技術革新や商品・サービスが成功するのか分かりません。
将来が予測できない状況では柔軟な適応力が企業の競争力維持に欠かせません。
========

バブル崩壊までの55年体制時代は、成功モデルがはっきりしていて
オリジナリティより団結力、ある意味日本人が得意だったのですね。
バブル崩壊以降はな成功モデルがなく、状況に応じて柔軟に対処しなければならない。
ところがまだまだ55年体制時代の発想でものつくりをやっている人たちが
たくさんいるのではないかと思います。

「右肩上がりの幻想」はいまだ健在だと思いますよ。
いまの既得権益層はまさに55年体制時代の人たちですし。
曽野綾子のエントリでもお話したけれど、中高年男性のマインドは
55年体制的な「モーレツ社員」だそうですしね。
http://taraxacum.seesaa.net/article/384042275.html
Posted by たんぽぽ at 2014年01月08日 22:29
りほさま、このエントリにコメントありがとうございます。

>個人的には子供を産む数が減っていること自体は全てが悪だとは思わないんです

出生数が下がること自体は、かならずしも悪いことではないですね。
むしろよいこともあります。
ご指摘のように、なにより個人のライフスタイルの尊重がありますから、
子どもを持たない自由もとうぜん認められる必要があるわけです。

ここで問題なのは現状のままで行くと、あきらかに社会を維持することが
むずかしいレベルにまで人口が減る、ということですね。


>ただ、問題は産みたいのに産めない人ですよね

そしてこのような人もたくさんいるのですよね。
彼ら、彼女らのライフスタイルの実現をかなえることも、必要なことのはずです。

なにをすればよいかは、これまたご指摘のように、
女性が妊娠・出産後も働きやすい環境を作って、男性がもっと「家庭進出」して...
といったことで、もう議論されつくしている感じなのですが、
これがなかなか理解されないのですよね。
Posted by たんぽぽ at 2014年01月08日 22:30
人口比率が高くて投票率も高い高齢者向けに、「対策してます」アピールが出来ればそれで良い、と言う政権側の意向もあるように思います。
少子高齢化による社会保障制度の破綻や内需縮小に、本気で対策を取ろうとすれば、どうしても高齢者に負担をかけざるを得ない。
しかし「若い世代に子供産ませる政策」であれば、高齢者に負荷がかからずに状況が改善されそうな雰囲気があるし、何より「私らが若い頃は3人4人は当たり前」的な高齢者の感性にはフィットしそうです。
実際に少子化が解消されるほどにまで出生数が増えなくても構わない(今やそうなる可能性はゼロと言って構わない状況です)。女性手帳や三年育休などで、ほんのちっとばかし出生率が上がれば、「対策が功を奏した」とアピール出来てラッキー、程度の考えしか無いのかもしれないと思います。
Posted by ニャオ樹・ワタナベ@モバイル at 2014年01月08日 23:18
ニャオ樹・ワタナベさま、
このエントリにコメントありがとうございます。

>人口比率が高くて投票率も高い高齢者向けに、
>「対策してます」アピールが出来ればそれで良い

高齢者の人たちも自分の年金や介護はどうなる?くらいの心配があって、
それゆえ少子化対策をするべし、という人はそれなりにいそうですね。

そしてその高齢者の考える少子化対策は、
「女は家庭にもどって子どもを産め」だったりしますしね。
(女性も働いて税金を払っているから、自分たちの年金がまかなえるんだ、
ということは、ぜんぜん考えがおよばないのよね。)

当節はやりの、福祉を減らして各家庭に負担させるというのは、
高齢者にとっては「他人ごと」になるので、彼らには具合よさそうですね。


>実際に少子化が解消されるほどにまで出生数が増えなくても構わない

効果が出なくてもその前に寿命をまっとうしそうですしね。

となると、高齢者よりもその一歩手前くらいの世代のほうが、切実感があるのかな?
(それで中高年男性が曽野綾子に共感して女たたきをするのか?)
Posted by たんぽぽ at 2014年01月09日 23:48
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