不妊治療で行なわれる体外受精に対して、いままであった
「結婚した夫婦にかぎる」という条件を外して、治療を受けられる対象を
拡大する方針を日本産科婦人科学会が決めたのでご紹介します。
これにともなって、国も不妊治療の公費助成の対象を広げることを検討しています。
「体外受精、事実婚カップルに拡大…日産婦方針」
(はてなブックマーク)
対象を広げる方針を決めることになったのは、昨年12月に成立した、
婚外子の相続差別を撤廃する民法改正を受けてものです。
婚外子が法的に差別されなくなったので、結婚していない親が
子どもを作っても「医の倫理」に反しないと、考えたのだろうと思います。
最高裁の違憲判決と民法改正の効果がここにも現れたことになります。
リンクした記事の見出しは「事実婚カップルに拡大」とありますが、
じつは事実婚夫婦に対しては、8年前の2006年4月にすでに認められていました。
「事実婚にも体外受精」
「事実婚にも体外受精(2)」
「事実婚にも体外受精(3)」
それ以前は、体外受精が認められるのは法律婚夫婦に限定され、
結婚していることを証明するために戸籍の提出を求められました。
2006年にこの基準が緩和され、戸籍の提出がもとめられなくなり、
結婚しているかどうかは、本人たちの申告によるようになったのでした。
2006年のときは「結婚した夫婦にかぎる」という条件はそのままでした。
今回の体外受精の対象拡大によって、「結婚した夫婦にかぎる」という
条件をなくすことにするということです。
つまり事実婚でもない未婚の男女であっても、
体外受精を受けられる対象とする、ということなのでしょう。
おそらく記事を書いた記者は、「結婚した夫婦にかぎる」という条件を
法律婚のことだと思ったのではないかと思います。
それでその条件をはずすということは「事実婚カップルに拡大」する
ということだと、考えたのではないかと思います。
2006年6月15日のエントリを見てみると、
産科婦人科学会はあたまが堅いと思われているみたいなのですよね。
2006年4月に体外受精の対象を事実婚夫婦に広げたときも、
「やっとか」というのが、わたしの率直な感想でしたし、
家族問題に関しては学会は結構保守的なのかもしれないです。
そうだとすると、その学会がすぐに体外受精の対象拡大を
検討し始めたのですから、最高裁の違憲判決や法律が変わるということは、
とても説得力のあることなのだと、あらためて思うところです。