2014年01月11日

toujyouka016.jpg 女性の登用と多様性の確保

日本はOECD加盟国の中では、女性の管理職がきわめてすくないことを、
わたしはこのブログでよくお話しています
そしてこれが、世界経済フォーラムの男女平等指数で
日本の順位を下位のほうにしている原因のひとつとなっているのでした。

日本で女性の管理職がすくない、かなり直接的と思われる原因について
お話している記事があるので、2013年6月28日の日経新聞なので
ちょっと古いですが、ご紹介したいと思います。

「進まぬ女性登用、男性の「思い込み」が影響 シカゴ大学教授・山口一男氏
Wの未来 会社が変わる」

(はてなブックマーク)

 
男性の経営者や管理者の中には「女は意欲にとぼしい」とか
「女はすぐにやめる」など、女性に問題があると思っている人がいるのですね。
彼らはそういう自分の認識にもとづいて、はじめから女性に
責任のある仕事を割り当てないなど冷遇をするわけです。
そうした扱いを受け続けばとうぜん楽しくないですから、
女性は本当に意欲をなくしたり、やめていったりすることになるわけです。

男性管理者たちの女性に対する認識がさきにあって、
それゆえ本当に女性たちが意欲をなくすのですが、あたかも女性の意識の
問題であるように、男性管理者たちが思い込んでいるということです。
「女はだめ」というのは、男たちの「自己成就予言」ということです。

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「女性は『どうせ辞める』『意欲に乏しい』と考える上司は
責任ある仕事を男性に任せます。すると難題に挑んだ経験を通じて
男性部下は伸びますが、女性は成長の機会を逸します。
こんなことが繰り返されるとチャンスをもらえない女性は仕事への意欲を失い、
多くが辞めていきます。それを見て男性上司は『ほら、やっぱり女性はダメだ』と
自分の思い込みをさらに確信し、ますます女性に機会を与えなくなります」

「自分自身の行動から生じた結果なのに、あたかも自然に起きたと錯覚してしまうのです。
こうした現象は『予言の自己成就』と知られ、社会の中でよく起きています。
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これを見て、「そういうことはよくある」とか「まさにそう」と
思ったかたも、結構いらっしゃるのではないかと思います。
こういう男性はまだまだいるのだなと、わたしもちょっと思ったです。
こんな調子では女性の管理職がなかなか増えなくても無理もないことです。
ここでも変わるべきはやはり「男性の意識」ということですね。

comparing.jpg


企業関係者の中には「女性を登用して生産性は上がるのか」なんて
懐疑する人も相変わらずいるみたいなのですよね。
能力のある女性を登用せず、能力があってもなくても
「男性」というだけで登用しているのが現状だということであれば、
そうしないで、男女のべつなく能力で登用すれば、
生産性が高まるのはあきらかだと思いますよ。

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「企業関係者から『女性を登用して生産性は上がるのか』とよく聞かれます。
これは全くの愚問です。人口の半分は女性で、
潜在的な生産性に男女差などありえません。
すると現状は女性を活用しないことで約半数のポジションで
相対的に生産性の低い男性を女性の代わりに用いていることになります。
そのポジションに有能な女性が就けば今より生産性が上がるのは自明のことです」
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入社試験を行なうと、成績上位を女性が占めることが多いと言われています。
それで男女の比を是正するために、男性に「下駄」を履かせて
男性を優先的に採用する企業もあるくらいです。
入社時点ですでに男女のあいだで能力に差があるとなれば、
男女のべつなく能力で登用すれば、生産性の向上は
じつはかなり期待できるのかもしれないですよ。

「「女性は育児で辞めちゃうから、男性を採用した方がいい」??」
「女は育児で辞めるから男を採る?」
「採用試験合格者8割が女性」

それにしても「はじめに目標ありきの登用は男性に対する
差別ではありませんか」という記者の訊きかたが気になりますね。
「男性差別」とまで言っているし、ポジティブアクションに
反対する人がいかにも言いそうなことだからです。
もうすこし訊きかたに工夫はできなかったのかと思います。


また記事では、55年体制時代の企業のありかたを、
女性の登用が進まないことと結びつけて考えています。
多様性という観点からの女性の登用ということなのですが、
こういう視点もあるのかと、わたしはなるほどと思いましたよ。

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「高度成長期は成功モデルが見えていました。
製造業などでは欧米の成功事例に技術的に追い付き、
安価で製造できるように工夫すれば業績が伸びました。
こうした状況では社員の多様性はさほど重要ではありません。
結束力を高め、適切な方向に人材を集中すれば利益を生み出しました。
でも今はどんな技術革新や商品・サービスが成功するのか分かりません。
将来が予測できない状況では柔軟な適応力が企業の競争力維持に欠かせません。
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55年体制時代は、なにをなすべきかがマニュアル化されていたのですね。
独創的なことは考えず、マニュアル通りにやればよかったのでした。
オリジナリティより団結力、ある意味日本人が得意なことですね。
それで社員が男ばかりでも困らなかったのもあるのかもしれないです。
団結するには社員が均一なほうが具合がいいからです。

バブル崩壊以降はかかる成功モデルが一転しました。
なにをなすべきかが容易に予測できず、そのときに応じて
柔軟かつ的確な判断が必要になってきたのでした。
となると、できるだけたくさんの発想が出てくるようにするために、
社員には多様性が必要だし、多様性を確保するためにも、
男性ばかりでなく女性も登用する必要がある、ということです。

この独創性とか多様性というのは、日本人は苦手なのですよね。
加えて55年体制的な発想から抜け出す必要もあるのですが、
これが既得権益者の発想にほかならず、いまだ根強いものです。
いろいろと前途多難なものを感じるところです。


記事でインタビューを受けているのは、シカゴ大学の山口一男氏です。
すでにお気づきのかたもいらっしゃると思いますが、
じつはわたしのブログにも、何度かコメントをいただいています
こんなつたないブログにお越しいただいて、もったいないくらいの
評価と励ましのことばをいつもくださって、まことに恐縮です。

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山口一男氏(やまぐち・かずお)
1971年東京大卒。総理府勤務を経て、81年に米シカゴ大学で社会学博士号取得。
91年シカゴ大学教授。2003年から経済産業研究所客員研究員。
編著に「論争 日本のワーク・ライフ・バランス」(日本経済新聞出版社)など。
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posted by たんぽぽ at 21:57 | Comment(2) | TrackBack(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
思い込みって本当に怖いな、と最近特に思いますね
知らず知らずのうちに思い込みから自身の行動を制限してしまったり、あるいは他人を制限させたりってことってありますから
今の日本には活躍する女性のロールモデルとなるような女性が必要だと思うんです
政治家しかり、管理職や経営者しかり

フィンランドで2期12年大統領を務められた女性のハロネン氏が以前おっしゃっていたのですが、自分が大統領になったことで自分も大統領になりたいと思う女の子がたくさんでてきて嬉しかったのだそうです
これって大事だと思ったんですよね

日本は政治にしろ経済界にしろ重要なポジションにいるとは異常なほど男性だらけですよね
女性は?と突っ込みたくなるレベルです
こういった社会って男女問わず知らず知らずのうちにそういった立場に女性がたつことを想像させにくくなっているのでは・・・とよく思うんです
他国に多く見られるクォーター制のようなものは日本も取り入れるべきだと思います

海外のニュースも見るようにしているのですが、他の国では女性大統領や女性首相も増えてきましたし、Yahoo!やFacebookなど大きい会社のトップに立つ女性も増えてきて時代は間違いなく変わりつつあることを実感します
日本は止まっているので順位を下げるのも当然だなと悲しい限りですね
全く非論理的な思い込みを打破すべくこういった女性の活躍はどんどん取り上げてほしいものですね


Posted by りほ at 2014年01月12日 03:15
りほさま、このエントリにコメントありがとうございます。

>思い込みって本当に怖いな、と最近特に思いますね

まったくですね。
ここは自戒を込めていきたいと思います。

>フィンランドで2期12年大統領を務められた女性のハロネン氏が
>以前おっしゃっていたのですが、自分が大統領になったことで
>自分も大統領になりたいと思う女の子がたくさんでてきて嬉しかったのだそうです

なるほど。
適切なロールモデルの存在はたしかに大事ですね。
というか、フィンランドくらいの国でも、マイノリティには
まだまだロールモデルが必要、ということでもあるのでしょうね。


>日本は政治にしろ経済界にしろ重要なポジションにいるとは異常なほど男性だらけですよね
>海外のニュースも見るようにしているのですが、
>他の国では女性大統領や女性首相も増えてきましたし

2011年にノルウェーで右翼テロがあったのですが、
それを受けて国会に議席を持つ政党の党首が集まって会合を開いたのですよ。
そのとき7人中4人が女性だったのですよね。
http://taraxacum.seesaa.net/article/221249125.html

ノルウェーの政治は「女性に開かれた」ほうなのでしょうけれど、
こういう光景が当たり前になりつつある、というのを、
日本ももっと理解したほうがいいでしょうね。

>他国に多く見られるクォーター制のようなものは日本も取り入れるべきだと思います

クォータ制は女性の政治家を増やす方法として、効果が示されていますからね。
日本でも導入してしかるべきことだと思います。
小選挙区と相性が悪いという難点はあるのですが、
比例区だけでも導入すればよいのにと思います。
Posted by たんぽぽ at 2014年01月12日 17:50
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