2014年01月17日

toujyouka016.jpg 働くことに重きを置く?

「働くことに重きが置かれなくなるのはよいことか?」と
世界各国の人たちに訊いた調査があるので、ご紹介したいと思います。
出典は『世界価値観調査(World Values Survey)』です。

「働くことに重きが置かれなくなることへの考え」

 
はじめに日本とスウェーデンで比較したグラフがあります。
日本は1990年も2005年も、「働くことに重きが置かれなくなるのは
よいことだ」と答えたかたが5.6%と5.1%で、とても低率なのですよね。
スウェーデンは1990年に「よいことだ」と答えたかたが27.2%で
日本よりずっと高率であり、さらに2006年には50.1%と半数に達しています。

https://twitter.com/tmaita77/status/422227086204358656

less-work1.png

つぎに世界各国で比較してみます。
これは「よいことだ」の比率で、横軸が1990年ごろ、縦軸が2005年ごろです。
ななめの点線は1990年ごろと2005年ごろが同率をしめしています。
この線より上にプロットがあると、1990年より2005年のほうが
「よいことだ」と答えたかたが増えていることになります。

https://twitter.com/tmaita77/status/422233521323646977

less-work2.png

これを見ると、日本は1990年も2005年も他国とくらべて
飛び抜けて「よいことだ」が低率であることが、くっきりわかります。
しかも15年ほどのあいだでまったく変化がないのですね。


この調査で「よいことだ」と答えるのは、
1. 経済発展も自分の暮らしがよくなるのもそこそこでいいからのんびりやりたい
2. 経済もじゅうぶん発展して、自分の暮らしもよくなっているから、
もはやがつがつ働く必要はない
のいずれかではないかと思います。

いわゆる先進国は2.が、開発途上国は1.が多いのだろうと思います。
日本はどちらでもないことになり、開発途上国から抜け出そうとしているが、
先進国には仲間入りしていない国、ということになりそうです。

がつがつ働かなくても暮らしていけるのは、一般的にはこのましいことです。
よって「よいことだ」と答えるかたがすくないのは、
かならずしもほめられたことではないと言えます。


日本は「働くことに重きが置かれなくなるのはよいことだ」と
考えるかたの割合が、飛び抜けて低率のままかつ15年ほどのあいだに
変化がないことについて、ツイッターですこし談義をしたのした。

「働くことに重きが置かれなくなることへの考え」

わたしが考えるに、日本人の多くは高度経済成長期のマインドが、
いまだ健在なのではないか?ということです。
「みんなが働けば国が豊かになり人びとの暮らしもよくなる」と考えられ、
「モーレツサラリーマン」が評価された時代の精神構造が
いまもってそのまま生きているということです。

一般には、この調査で「よいことだ」と答える人の割合は、
その国の経済状況が大きく影響すると考えられます。
日本も1990年と2005年とで経済状況は変化していますが、
それに国民のマインドが追随できず、いまだ高度経済成長期のところで
留まったままでいるということなのでしょう。


民主党政権時代に導入しようとした子ども手当てが頓挫しましたが、
こうしたマインドは、日本社会に福祉が根付かないことにも関係ありそうです。
多くの日本人にとって「収入が増える」とは、働いて得る給料が
増えることであり、「生きる権利」として行政から手当てをもらう
という発想には、とぼしいのではないかと思います。

それで「子育てにお金がかかるので子どもが持てない」と
不満を持ちながら、子ども手当てには反対するという、
矛盾したことをする人も、出てくるのではないかと思います。

「子ども増やさない本音」


またこのマインドは「自力で生きていけない人たちを国や政府は
助けるべきだとは思わないと言う人」の割合が、
日本が飛び抜けて高いこととも関係がありそうに思います。
つぎの記事にあるように、日本は38%もあり、「自己責任の国」と言われる
アメリカ合衆国の28%よりもさらに多いのです。

「日本の貧困対策がどれほど貧困かよく分かる数字」
https://twitter.com/annzu57/status/391899509174722560
========
自力で生きていけない人たちを国や政府は助けるべきだとは思わないと言う人

日本 38%
アメリカ 28%
イギリス 8%
フランス 8%
ドイツ 7%
中国 9%
インド 8%
========

「みなが働くことが大事だ」と考える精神構造のもとでは、
働けない人を国の発展に貢献しない「裏切り者」のように考えるのでしょう。
それで働けない人は社会にとって「許せない」存在であり、
国が助けるべきでなく「切り捨てるべき」と考えるのだと思います。

実際、子育て中の女性とか、障害を持ったかたとか、
一般に就労が困難と思われている人たちに対しては、
こうした人たちが働ける環境を整えるより、
「働けない裏切り者」として切り捨てようとする傾向があります。

きょうびの生活保護に対する風当たりは、
このような精神構造が顕著に現れていると言えます。
生活保護をバッシングする人たちのメンタリティは、
「自分はまじめに働いているのに、あいつらは働かずに
自分の納めた税金でラクをして暮らしている」というものなのですから。
つまり「働けない人=裏切り者」の発想です。

posted by たんぽぽ at 23:14 | Comment(2) | TrackBack(0) | 政治・社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
なるほど、考えさせられる考察ですね。
働くことに価値を置きたいってのは、そこで自分の価値を見いだせるってことであり、他に価値がみいだせないんだろうけど。
いまの若い人だけに聞いたらもううちょっと違うデータでしょうね。

私は重きはおきませんし、いまは毎日そんなに働きたくはないけれど、老後も働くことができたら良いことだなあ、と思うようになりました。以前は悠々自適で趣味に生きる老後を想像してました。
でも周りを見ていると、現実はぼーっとして持て余してる老人多いです。妻に無能呼ばわりされて。ぼけちゃうな。
知り合いの経営者が「自分は趣味もない。仕事しか能がない。だから死ぬまで仕事してる」といってるのをきいて、何だか羨ましいと思ってしまったのです。私もだんだん考えが変わってきて、やるなら、自分の事業で、しかし、頭フル回転して、全力投球頑張れたらいいなあ、なんて思いますね。
そこは日本人らしいマインドなのかもわかりません
Posted by うがんざき at 2014年01月21日 08:14
このエントリにコメントありがとうございます。

>働くことに価値を置きたいってのは、そこで自分の価値を見いだせるってことであり、
>他に価値がみいだせないんだろうけど。

>でも周りを見ていると、現実はぼーっとして持て余してる老人多いです。
>妻に無能呼ばわりされて。ぼけちゃうな。

中高年の世代だと、趣味らしい趣味がぜんぜんなくて、
仕事ばっかりというかたも、とくに男性に結構見られますね。
定年退職後はやることがなくなって、家族のお荷物のようになってしまうのも
よくあるパターンだと思います。

こういう人が出てくるのも、「働くことが尊い」という
高度経済成長期以来の日本人のマインドゆえかもしれないですね。
たぶんこういう「仕事人間」は日本特有の現象ではないかと思います。

>いまの若い人だけに聞いたらもううちょっと違うデータでしょうね。

たぶん違っているのではないかと思います。
必死になって働いても経済はよくならないし、
自分の暮らしもかならずしもよくならないですからね。


>知り合いの経営者が「自分は趣味もない。仕事しか能がない。だから死ぬまで仕事してる」

「いかにも」な日本的「仕事人間」ですね。
ここに羨望を感じさせるのは、マインドが「日本人的」というだけでなく、
「生涯現役」というところにもあるのだろうとは思いますが。
Posted by たんぽぽ at 2014年01月21日 19:08
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