2014年01月19日

toujyouka016.jpg 未婚親の体外受精容認

1月9日エントリで、日本産科婦人科学会が指針を変更して、
体外受精を受けられる対象の条件から「結婚した夫婦にかぎる」という
部分をはずすことをお話したのでした。
婚外子の相続差別を撤廃する民法改正を受けてのことです。

この指針変更について、産経新聞が1月13日にやや長い記事を載せています。
ご紹介したいと思います。

「少子化対策の切り札? 事実婚の体外受精容認 愛人トラブルや取り違えには注意」
(はてなブックマーク)

 
指針が見直される箇所について、記事はつぎのように書いてあります。
「結婚しており」という条件がなくなるのですね。
今回、見直しが検討されているのは、「患者は結婚しており、
子供を強く希望する夫婦で、心身ともに妊娠・出産・育児に
耐え得る状態にあるものとする」とした部分だ。
「結婚しており」という部分を削除し、事実婚の男女でも治療を行えるようにする。

さらに記事では「事実婚の男女でも」と書いてありますが、
事実婚夫婦に対しては2006年に、すでに認められていたのでした。
この記事も「結婚しており」を法律婚のことと考えて、
今回の指針変更で、あらたに事実婚が認められると思ったのではないかと思います。


2006年の指針変更では、夫婦関係の確認を戸籍で行なうのをやめて
本人の自主申告としたのでした。
これによって事実婚夫婦に対しても、体外受精が解禁されたことになります。
これについては、記事でも以下のように書いてあるのですよね。
家族のあり方が多様化する時代に合わせ、「事実婚の男女にも
体外受精を可能とすべきだ」との見解を平成18年に発表している。

会告には、以前は戸籍などで夫婦関係をきちんと確認することとする
解説文が付いていたが、18年になくなった。
つまり、どうやって「夫婦」であるかを証明するかは
現場の医師の判断に委ねられたということだ。
西日本の産婦人科医は、「夫婦であることを証明するため、
以前は戸籍抄本の提出を求めていたが、今は夫婦の保険証の提示と、
夫婦一緒に治療法の説明を受けるなどの方法が一般的となっている」と話す。

2006年の時点でも、事実婚夫婦が体外受精を受けることを
産科婦人科学会は推奨をしていなかったのですよね。
今回の指針変更で「推奨しない」という立場もなくなるのではないかと思います。
同学会監事の吉村泰典慶応大教授(産婦人科)は
「生まれた子供に法的な不利益がある以上、事実婚のカップルへの
体外受精を推奨できなかった」と背景を説明する。
今回の会告変更の動きは、民法改正により学会の“配慮”が不要となったことが大きい。

それにしても「生まれた子供に法的な不利益がある以上、
事実婚のカップルへの体外受精を推奨できなかった」というコメントに、
産科婦人科学会の家族に対する因習的な見解が現れていると思います。
そのような産科婦人科学会でも、指針変更を検討するのですから、
最高裁の違憲判決民法が改正されることは
説得力があるのだと、あらためて思うところです。


2006年以前も事実婚夫婦からの体外受精の希望はあり、
じつは水面下で治療を行なう病院もすくなからずあったのでした。
子供を望む男女であれば、事実婚か法律婚かにかかわらず、
不妊治療を望む声は患者側からも医療者側からも上がっていた、と
日本生殖医学会理事長でもある吉村教授は明かす。学会の会告に法的拘束力はなく、
会員の医師が事実婚の男女に体外受精を行っても罰則はない。
実際には水面下で治療が行われていた、との情報もある。

さすがに公然と治療を行なうことはできなかったようで、
公開のリストのようなものはなかったのですよね。
それで事実婚夫婦でも体外受精が受けられる病院の情報について、
夫婦別姓の掲示板などでも情報交換がなされたりもしていました。


見出しにもありますが、記事では指針変更が少子化対策に
なるかどうかについて、すこし記述があります。
事実婚夫婦の数はすくないので、体外受精が容認されても
あまり目立った影響は出ないのだろうとは思います。
そもそも日本では事実婚のカップル自体が少なく、会告の変更によって
事実婚の男女の治療が増える可能性は低いと指摘する声もある。
事実婚への体外受精の容認が少子化対策の切り札となるかは未知数だが、
ある産婦人科医は「法律婚と事実婚の区別をなくす積み重ねで
差別意識がなくなっていけば、結婚しなくても子供を産むという選択が
増えるのではないか」と広い意味では少子化対策につながると語る。

それでも出産のしきいを下げる措置である以上、
なんであってもやっておく必要があるとは言えるでしょう。
なぜなら少子化対策は「ありとあらゆること」をしなければだめだからです。

記事で「ある産婦人科医」のコメントが紹介されていますが、
事実婚と法律婚、あるいは嫡出子と非嫡出子の差異を減らすことで、
差別意識をなくしていくことは期待できます。
こうして結婚や出産のしきいを減らすことで、結婚しなくても
子どもを作る選択が将来的には広がることも考えられるでしょう。

posted by たんぽぽ at 23:37 | Comment(0) | TrackBack(0) | 民法改正一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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