2014年01月20日

toujyouka016.jpg 未婚親の体外受精容認(2)

1月19日エントリの続き。
未婚親でも体外受精による不妊治療が受けられるようにするという、
日本産科婦人科学会の指針変更のお話です。

「少子化対策の切り札? 事実婚の体外受精容認 愛人トラブルや取り違えには注意」
(はてなブックマーク)

 
記事を見ると、諸外国の事情についてもすこし触れられています。
同学会は、法的な婚姻関係にある夫婦に限定して
体外受精の治療を行うとした日本産科婦人科学会の会告について、
「先進国で体外受精の対象者を法律婚の夫婦に限定する国はまれ。
日本の現行法にも、体外受精の対象者を法律婚の夫婦に
限定すべき直接的な根拠はない」と指摘。

欧米の民主主義国では産まれてくる子が婚外子であっても、
体外受精の治療を行なうのがあたりまえなのですよね。
「法律婚の夫婦にかぎる」としてきた日本のほうが特異です。
ここでも日本の法律婚主義の強さと、「日本の常識」がグローバルスタンダードから
取り残されていることが現れていると言えます。

そもそも欧米の民主主義国では嫡出概念がすでになくなっています
それゆえ婚外子の存在が当たり前であり、最初の子どもが産まれても
すぐに婚姻届けを出さない夫婦もめずらしくないです。
なので「法律婚の夫婦にかぎる」という考え自体が、
欧米の民主主義国の家族の実態に合わないということです。


またこの記事には「愛人が勝手に治療を受ける」などと懸念する
産科医のコメントが紹介されているのですよね。
婚外子と聞いて「愛人」という発想は、「いかにも」という感じです。
別の産婦人科医は「患者の身元や、精子の“本人確認”をいいかげんにすれば、
愛人が勝手に治療を受けて子供を作るトラブルも起きかねない」と懸念する。

子どもを作るというのは相応に準備が必要なことのはずです。
ましてや不妊治療を受けてまで子ども作ろうというのならなおさらでしょう。
治療のために相当の費用を払って準備しておく必要があるというのに、
「愛人が勝手に治療を受ける」なんてことが、そう簡単にできるのかと思いますよ。

この産科医は「会告で事実婚の男女への治療が容認されたとしても、
今後も法律婚の夫婦と確認できた患者にしか治療はしないつもりだ」と
息巻いていますが、今後はこちらが学会の指針に反することになります。
狭量なことを言っていると、評判が悪くなるかもしれないですね。


記事の最後のほうで、自民党のプロジェクトチームが
検討している、生殖医療についての法整備にすこし触れてあります。
これは12月26日エントリで紹介した、性同一性障害のかたの
親子関係を認める最高裁判決を受けてのものと思います。
自民党のプロジェクトチームは現在、卵子提供などの生殖医療についての
法整備を検討中だが、血縁関係のない親子を
法的な親子として扱うことには反対論も根強い。

「反対論も根強い」そうですよ。
最高裁の「決定を評価する声はなかった」のですから、むべなるかなですね。
法案提出の準備過程で、彼ら反対派が噴き上がることが予想されます。


この記事を書いた産経新聞の記者も、おそらく今回の
産科婦人科学会の指針変更を歓迎していなさそうな感じがします。
産経新聞も基本的に「家族のカチ」を信奉していて、
自民党の反対派と見解をおなじくするのだろうと思います。

それで「愛人」の心配をする産科医のコメントを載せたり、
それを見出しにして、指針を改正するとトラブルが増える
可能性が高まるかのように書いたりとか、
どこか「とげ」のある記事内容になったのではないかと思います。

posted by たんぽぽ at 23:10 | Comment(0) | TrackBack(0) | 民法改正一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

はてなブックマーク - 未婚親の体外受精容認(2) web拍手
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック