都知事選の候補者である舛添要一氏が厚生労働大臣だったころ、
「母子家庭の人は怠け者だから税金を使うつもりはない」などという
主旨の発言をしたことがあるのですよ。
2009年の8月で政権交代の直前のことですよ。
「舛添厚労相また暴言 - 派遣村でなく怠け者は生活保護の母子家庭」
(はてなブックマーク)
「シングルマザーへのまなざし〜「生活保護母子家庭は怠け者」発言から 中野冬美」
舛添要一氏ははじめに「働く能力と機会があるのに怠けている人に、
貴重な税金を使うつもりはない」と言ったのでした。
それは年末年始に開かれた「派遣村」に来た人たちのことか?と訊かれて、
「怠け者発言は(民主党が復活を強く主張する)生活保護の母子家庭
(への加算)の中で言ったつもりだ」などと「釈明」したのでした。
「釈明」が差別の上塗りになっているところが、いかんともしがたいです。
民主党が準備を進めてきた、生活保護の母子加算の復活に反対したくて、
このようなことを言ったということなのでしょう。
政権交代の直前で、自民党政権は追いつめられていたので、
とにかく民主党の政策を叩きたい、という気持ちもあったものと思います。
舛添要一氏の認識がまったくの事実無根であることは、すぐにわかることです。
ひとり親世帯の就労率を見てみると、つぎのように日本は80%を超えていて、
OECD加盟国の中ではかなり高いほうだからです。
つまり日本の母子家庭の母親は「よく働いている」ということです。
ところが日本のひとり親世帯の子どもの貧困率は60%近くあります。
OECD加盟国の中では、これまたかなり高いほうとなっています。
日本の母子家庭の母親は、人一倍働いているのに貧しいということです。
母子家庭がかくも貧困を強いられるのは、日本社会においては、
子どもを持つ女性の就職がむずかしいことにほかならないです。
低賃金で不安定な非正規雇用にしか就けないことが多く、
そもそもが子育てと仕事の両立が困難という環境が多いです。
日本においては、子どもを持つ女性の賃金は男性の4割程度であり、
OECD加盟国の中では群を抜いて低水準という、衝撃的な調査もあるのでした。
これは結婚して夫のいる女性も含めての数字でしょうから、
母子家庭にかぎるとさらに低い水準になるのではないかと思います。
さらに日本は政府の再分配によって、ひとり親世帯の貧困率が
かえって高くなっていて、しかもそれはOECD加盟国の中では
ただひとつの国という、きわだった特徴があるのでした。
日本は税金を投入してひとり親世帯に「わけ与えている」のではなく、
「むしり取っている」という本末転倒なことをしているということです。
かくして日本の母子家庭は、「働き者なのに低賃金で貧しいが、
それにもかかわらず税金の投入がふじゅぶんである」という、
舛添要一氏の認識とまったく正反対であることが、わかることになります。
舛添要一氏のような事実と正反対の偏見が出てくるのは、
1. 生活保護をもらうやつはラクして暮らす怠け者に違いない
という生活保護に対する差別意識と、
2. 夫がいないのに子どもがいるという、男に属さない女は許さない
という母子家庭に対する差別意識の組み合わせだろうと思います。
こういう差別意識を持った人は、じつは案外多いのではないかと思います。
そうだとすると、舛添要一氏はそれを正直に言っただけとも言えるでしょう。
付記:
舛添要一氏の「母子家庭は怠け者」発言は、いまから4年以上前ですが、
最近になってツイッターで情報がすこし流れたのでした。
舛添要一氏は2月に行なわれる都知事選に出馬を決めているので、
「むかしこんなことを言っていた」「こんな人が都知事になろうとしている」
ということを思い起こすために、この話題をふたたび流した人がいたのでしょう。
関連エントリ:
「OECDの男女格差の報告」
「単身女性の貧困率」
「日本の「子供の貧困」がシャレにならなくなっている」
「みんなで考えよう!「豊かな教育」2009年冬号Vol.8」
「ゼロから考える少子化対策プロジェクトチーム第6回会合
ひとり親家庭とこどもの貧困」
「阿部彩氏提出資料」