2014年02月05日

toujyouka016.jpg 性別役割分担は合理的?

NHKの経営委員のひとりである長谷川三千子氏が
「男が外で働いて女が家庭で育児という性別による固定的な役割分担が
合理的であり、少子化の解消にもなる」という主旨のことを言って、
またしても騒ぎになっているのですよ。

「年頭にあたり 「あたり前」を以て人口減を制す」
(はてなブックマーク)

「「女は家で育児が合理的」 NHK経営委員コラムに波紋」
「NHK経営委員・長谷川氏が男女共同参画を批判したの?」(全文)
(はてなブックマーク)

 
この発言は最初、1月6日の『正論』のコラムに載せられたのでした。
長谷川三千子氏なんて選択別姓の反対派(非共存派)で有名ですし、
この問題に関してなにを言うかなんて、わたしは容易に見当がつきます。
コラムをちょっと見ただけで、この人ならさもありなんと思いましたよ。

「年頭にあたり 「あたり前」を以て人口減を制す」
(はてなブックマーク)

「フェミが女性の社会進出を即したから少子化になった、
高度経済成長期のように女は家庭に戻れ」なんて言い古されたお話です。
反論も出揃っていることですし、「なにをいまさら」という感じです。
なのでわたしは検討する気にもなれず、さしたる興味がなかったのですよね。

つぎの記事を見ると「ウェブサイトに掲載された記事は
すでに1500回以上ツイートされており」とあります。
いまもって「古くて新しい話題」なのか、ネットではかなり議論になったようです。
男女共同参画に真っ向から反する女性差別的な内容ですし、
長谷川三千子氏がNKHの経営委員という立場もあって、
あらためて問題視するかたがたくさん出て来たのでしょう。

「NHK経営委員・長谷川三千子氏のコラムが波紋 
「男女共同参画」批判でツイート1500超える」



それからしばらくして、1月28日の朝日新聞で、長谷川三千子氏の
かかる性別役割分担発言がもう一度取り上げられたのでした。
それでふたたび議論が再燃することになります。

「NHK経営委員・長谷川氏が男女共同参画を批判したの?」
(はてなブックマーク)

これを受けて、あらためて長谷川三千子氏の性別役割分担論に
反論する記事を書いたかたも出て来たのでした。

「長谷川三千子氏が唱えた少子化対策の「性的役割分担」にびっくりしました」
「NHK長谷川経営委員の「女性は家で育児、男性は外で仕事」論に待った!」


とくに注目したいのは、長谷川三千子氏は、
実はこうした「性別役割分担」は、哺乳動物の一員である人間にとって、
きわめて自然なものなのです。
などと言って「生物学的基盤」を持ち出していることです。
それで霊長類学者が直じきに、これに反論することになったのですよ。

「霊長類学者の考察する「性的役割分担論」」
(はてなブックマーク)

もちろん「性別役割分担」なんて、ほ乳動物の一員として、
ぜんぜん「正論」でも「自然」でもないのですよね。
こないだの同性結婚の反対派とおなじで、規範やイデオロギーの正当化のために
科学を持ち出すと、たいてい「とんでも」となって失敗するということですね。


長谷川三千子氏について、とりわけあきれることは、
ご自分は専業主婦でもなんでもないのに「女は家庭に入って育児をしろ」
などと言っていたり、大学の名誉教授という立場にありながら、
反フェミニズムを標榜しているということですよ。
自分だけは政府や行政によって生きかたに干渉されない
「少数の例外」でいられるつもりなのかと思います。

過去のフェミニズムが苦心惨憺して作り上げた成果がなければ、
女である長谷川三千子氏は、名誉教授になるどころが、
大学に入学することもままならなかったはずです。
フェミニズムの成果の上に安住しておきながら、なにをか言わんやだと思います。
とんだ「天に向かってつばを吐く」だと思います。

posted by たんぽぽ at 22:09 | Comment(6) | TrackBack(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
リンク先読みましたが。

>昭和47年のいわゆる「男女雇用機会均等法」以来、

 ってあって「え?」と???
 私、昭和36年生まれなんですが、自分が新卒の時分には無かったよ?と思ってググったら、これ1986年(昭和61年)施行で、昭和47年に施行されたのは「勤労婦人福祉法」なんですよね。
 なんか、基礎的な間違いが(^_^;)

 で、たんぽぽさんがすでに書かれているので蛇足ですが。

>フェミニズムの成果の上に安住しておきながら、なにをか言わんやだと思います。

 そもそも、この長谷川三千子さんって人、
「女性の一番大切な仕事は子供を生み育てることなのだから、外に出てバリバリ働くよりもそちらを優先しよう。そして男性はちゃんと収入を得て妻子をやしなわねばならぬ−」
 と思うなら、どうして外で働いてるの?って素朴に疑問でした。
 もしかして、旦那の稼ぎが悪くて自分が働かざるを得なかったから、本当は家でのんびりお気楽専業したかったのにい〜ってヒガミ?とか下種の勘繰りしちゃいますね(^_^;)
Posted by イカフライ at 2014年02月05日 23:07
このエントリにコメントありがとうございます。

>>昭和47年のいわゆる「男女雇用機会均等法」以来、
>ってあって「え?」と???

わたしもそれは気がつきましたよ。
基礎的な認識がいい加減なところに、長谷川三千子のリテラシーがうかがえますね。
(おかしな主張をする人は、基礎的な認識がいい加減というのは、
よくあることではあるのだけど。)

J-CASTの記事も気がつかないで、
「1972年施行の男女雇用機会均等法」と書いていますね。


>>フェミニズムの成果の上に安住しておきながら、なにをか言わんやだと思います。
>そもそも、この長谷川三千子さんって人、

自分が自身の主張と大いなる矛盾をきたしていることは、
本人の中ではどう整合が取れているのかと思いますよ。

長谷川三千子にかぎらず、反フェミニズム的な主張を展開する
女性の識者は、多かれ少なかれ当てはまることなのではあるけれど。
Posted by たんぽぽ at 2014年02月06日 21:40
長谷川三千子の場合、「自分よりも動物に近い庶民にとっては、その方が合理的である。」と言うことで、無意識の内に自分の中では整理されているように感じます。
であればなおのこと、そう言う質問を本人にぶつけて欲しいですね。
Posted by ニャオ樹・ワタナベ@モバイル at 2014年02月06日 23:12
ニャオ樹・ワタナベさま、
このエントリにコメントありがとうございます。

>「自分よりも動物に近い庶民にとっては、その方が合理的である。」

なるほどねえ。
なんらかの線引きをして、自分を特別扱いしていることはありそうですね。
政府や行政によって生きかたを干渉されるのは、
「自分」ではなく「彼女ら」なのでしょう。

>そう言う質問を本人にぶつけて欲しいですね

だれか訊いてみないのかと思いますよね。
「あなたはなんで専業主婦をやってないんですか?」とかなんとか。
Posted by たんぽぽ at 2014年02月06日 23:48
まだこういう自然主義的誤謬(にすらなっていない気もしますが)がまかり通っているんですねえ。
この人が念頭に置いているのもおそらく高度成長期のサラリーマン家庭なのでしょうが、発想の貧困ですね。
Posted by 御光堂 at 2014年02月08日 11:24
御光堂さま、このエントリにコメントありがとうございます。

>まだこういう自然主義的誤謬(にすらなっていない気もしますが)が
>まかり通っているんですねえ

言い古された陳腐な意見だと思うのですけれどね。
支持する人も多いみたいですし、根は深いものがあるのでしょう。

>この人が念頭に置いているのもおそらく高度成長期のサラリーマン家庭なのでしょうが、

物心ついたときからあるものは、大昔からあったと思いがちとは言いますが、
高度経済成長期の習慣はとくにその傾向が強いように思います。
Posted by たんぽぽ at 2014年02月08日 13:38
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