2月9日の東京都知事選の結果の分析です。
「2014年東京都知事選」
「2014年東京都知事選(2)」
「2014年東京都知事選(3)」
今回は年齢層別の投票先を見てみることにします。
はじめに朝日新聞の出口調査による、各年齢層別の投票先をしめします。
「舛添氏、高齢層から圧倒的な支持 都知事選出口調査分析」
そしてこれは「東京MXテレビ 池上彰選挙特集」の調査です。
朝日新聞の調査とくらべて若干の違いはありますが、だいたいの傾向はおなじです。
東京MX TV 池上彰選挙特集「誰に投票しましたか?(世代別)」20代の田母神氏支持が舛添氏支持と拮抗している pic.twitter.com/yTjdq71zvH
— ryugo hayano (@hayano) 2014, 2月 9
宇都宮健児はすべての年齢層から、ほぼ同程度票を取っていることがわかります。
これはいささか意外で、政治に関心の薄い若年層と、
自民党支持の多いであろう高齢層とで得票がすくなくなって、
まんなかの世代で得票が多めになるかと思ったのですが、そうではなかったです。
細川護煕は20代と30代からの得票がすくなくなっています。
とくに東京MXテレビの調査では、20代からの票がきわだってすくないです。
朝日新聞の記事によると、細川護煕は政界を引退して久しいので、
若年層のあいだでの知名度がすくなかったからと考えています。
舛添要一は年齢層依存がとてもはっきりしています。
高齢層ほど得票が多くなっているのですね。
これはかつての石原慎太郎の得票もおなじ傾向が現れていたので、
なんとなく自民党を信用する「保守本流」とされる人たちの特徴だろうと思います。
さらに年齢層依存がはっきりしているのが田母神俊雄ですよ。
こちらは舛添とは反対に若年層ほど得票が多くなっています。
(田母神に投票した人がいわゆる「ネトウヨ」と考えていいのでしょう。
よってこれはネトウヨの年齢分布と考えることができます。)
高齢層は戦争に忌避感があるので、田母神を支持しないことが考えられます。
20代の得票は朝日の調査によると、舛添と8ポイント差がありますが、
それでも田母神は宇都宮や細川より多く堂々の2位ですよ。
東京MXテレビの調査だと、田母神と舛添の差はもっと小さいようですね。
「やはり若者は右傾化しているんだ、若い人にはネットで感化されて
ネトウヨになるのが多いんだ」と思わず言いたくなってきます。
「若者の右傾化」をいちおう裏付けた結果だとは思いますが、
実際は「20代にネトウヨが多い」というよりは、
「20代で投票に行く人はネトウヨが多い」ではないかと思います。
ネトウヨに感化されていない20代は、政治に関心がすくなく
選挙に行かない人が多いのだろうということです。
こんどは候補者ごとに、どの年齢層からどれだけ得票したかを見たいと思います。
都知事選の投票状況 田母神氏が意外と面白い数値になってる。これがネトウヨの年齢層かな。 pic.twitter.com/JoQk7ZeIiE
— 真実を探すブログ (@kennkou1) 2014, 2月 9
舛添要一は70代以上からの得票が、全部のうちの34.0%です。
ほかの3候補より比率が高く、高齢層が票田であることがしめされています。
宇都宮健児と細川護煕は、ほとんど似たり寄ったりですね。
じつは舛添要一も70代でいくぶん多めで30代で少なめのほかは、
宇都宮、細川とそれほどの違いがあるのではないのでした。
ひとり違いがはっきりしているのは田母神俊雄です。
(ネトウヨの特殊な年齢構成を思わせますね。)
20代からの得票が10.5%もあって、20代からほとんど得票できていない
ほかの3候補ときわだった違いを見せています。
しかもそれだけではなく、30代からの得票は20.7%、40代からは27.5%で、
これらの年代も比率が高く、ほかの3候補との違いが著しいです。
ネトウヨは若い人たちに多いのだと、いちおう結論できますが、
それ以上に30代、40代でネトウヨをやっている人が多いようですね。
「ネトウヨは若い人かと思ったら、いい歳したオトナにもいる」というか
「じつはネトウヨはいい歳したオトナのほうが多い」ことになりそうです。
上述のグラフは各候補者をおなじ大きさでグラフにしています。
実際は得票に差があるのですから、得票数に応じてウェイトをつけないと
公平な見かたにならないと言えます。
そこで以下のように、得票数に応じたウェイトをつけた図をしめします。
一般性のある話なので再掲しておきますが、パーセンテージにそれぞれの獲得した総票数をかけて、票数を定量的に比較するとこういう風になります。
60台70台のジジイババアに比べれば20代の浮動票なんてのはノイズ pic.twitter.com/J1NzKq2XhV
— はとほるちゃん (@hathol_chan_) 2014, 2月 10
一見して高齢層ほど投票者数が多いことがわかります。
つくづく思うのは、舛添に投票した70代以上の人たちの数です。
脅威的と言っていいくらいだと思いますよ。
「保守本流」的な候補者に投票するであろう彼らに
対抗できるだけの票はどれだけになるのか、そしてそれを下の世代から
集めなければならないのかと思うと、気が滅入ってきます。
20代の投票者数がとりわけすくないのが、いっそう顕著ですね。
「20代の浮動票なんてのはノイズ」とツイートにありますが、
これくらいなら選挙をする側も思い切って、20代の票ははじめから
「ないもの」と思って割り切るのも一案かもしれないです。
実際20代のうちは、政治や社会のことはなかなかわからず、
わかってきて興味が出るのは、30歳くらいになってからではないかと思うのですよね。
このグラフで見ると、田母神俊雄に投票した20代というのも
問題なくすくなくて、じつは案外たいしたことないことがわかりますね。
いちばん田母神に投票した人数が多いのは40代で、ついで多いのは30代です。
本当に「ネトウヨ」が多い世代は若い人たちではなく、
「いい歳したオトナ」だったと、あらためて確認することになります。
さまざまな意味でネットの影響をいちばん受けているのは、
いまの若い人たちではなく、ネットの黎明期からネットをやっていた
団塊ジュニア世代あたりということなのかもしれないですね。
それでネトウヨも団塊ジュニア世代に多くなるのかもしれないです。