人口の減少を食い止めれば、100年後も1億人以上の人口が維持できる、
なんて試算を内閣府が出しているのですよ。
2月24日に発表されました。
「日本の人口「移民で1億人維持可能」 政府、本格議論へ」
「移民受け入れで人口1億人維持 「年20万人」内閣府試算」(全文)
(はてなブックマーク)
「移民で日本の人口1億人を維持できるか 政府の議論が本格化」
外国からの移民を毎年20万人受け入れ、出生率も回復すれば100年後も
人口は1億人超を保つことができる
内閣府の開いている「選択する未来」委員会という会合がしめしたデータです。
ハフィントンポストの記事からリンクされている資料を、ここでもリンクしておきます。
「第3回 「選択する未来」委員会」
「目指すべき日本の未来の姿について」
「活力維持へ 革新呼ぶ制度づくりを 世界3位の所得も実現可能」
かかる「選択する未来」委員会で提出された資料にもとづく、
日本の人口推移のシミュレーションを、以下にご紹介したいと思います。
オリジナルの資料に出ている図は、ややごちゃごちゃしていますがこちらです。
「長期的な人口の推移と将来推計」
ろくな少子化対策をやっていないのに「出生率が回復」ですよ。
きょうびの排外主義傾向が強まっている状態で「移民を受け入れる」のですよ。
どうやってこれらを実現するのかと思います。
ある意味お役人らしい「机上のシミュレーション」だと、わたしは思ったですよ。
>出生率回復
日本経済研究センターの岩田一政理事長が提出した資料を見ると、
出生率の回復については、議論だけは蓄積がかなりあるせいか、
具体的かつ効果的な少子化対策のことが、くわしく述べられています。
ポイントは、女性が妊娠・出産をしても仕事を続けやすい
環境を整えることで、女性の労働力率を高めるというものです。
OECD加盟国のあいだでは、女性の労働力率の高い国は出生率も高い
傾向があることは、何度も指摘されることです。
したがって女性の労働力率の向上をはかるのは正攻法ですね。
よりくわしくは、正規雇用と非正規雇用のあいだの格差が大きいことや、
年功序列をはじめ、長時間労働で正規雇用中心という
従来の雇用スタイルが、女性の労働力率の向上を阻んでいるとしています。
さらに管理職、経営者や国会議員といったリーダー層(意思決定の場)に
女性がすくないことに言及し、クォータ制の導入にも触れています。
子育て支援の詳細については、フランスを手本としていて、
フランス並みの育児給付にすることについて述べてあります。
ご存知のようにフランスは、出生率を高め少子化を克服したとして定評のある国ですね。
また女性の登用という問題ではオランダを手本としていて、
年功序列や正規雇用と非正規雇用の格差をなくして
「同一労働・同一賃金」の原則を定着させる必要があるとしています。
資料に載せてある図として、以下のようなものがあります。
「子ども増えるほど育児給付手厚く」
(日本とフランスの育児給付の比較)
「女性の労働参加率」
(2013年10月7日エントリでしめしたものとおなじような図。
日本、オランダ、スウェーデンで比較)
「ジェンダーギャップ指数の内訳」
(2012年の男女平等指数。日本、オランダ、フィンランドで比較)
「国会議員の女性比率 ノルウェーの40〜50年遅れ」
(日本とノルウェー。横軸をずらして描いている。)
資料は全体的に「女性の仕事と育児の両立」ということが強調され気味で、
男性の問題にほとんど触れていないのが気になるところではあります。
それでも少子化対策として効果的と言われていることが
取り上げられていて、適切にふまえられていると思います。
問題はこれらをどれだけ実行するかですよ。
このような「効果的な少子化対策」は、安倍晋三首相をはじめ
自民党のお歴々が信奉する「家族のカチ」にまっこうから抵触するのですよね。
実際、安倍政権に入ってから打ち出された「少子化対策」は、
ここで挙げたようなことではなく見当違いのものばかりです。
かかる「効果的な少子化対策」は、ずいぶん前から議論されています。
なにをしたらいいかわかっているのに、実行に移さないのは、
「効果的な少子化対策」は、信奉する家族観や差別的な女性観に合わないので
本気になってやりたいとは思わない、ということなのでしょう。
フランスやスウェーデンなど、少子化をもっとも克服したと
言われている国でさえ、出生率は2をちょっと超えているくらいです。
日本のように、ていたらくな少子化対策の国が
出生率を2.07にするなんて、どうやるのかと思いますよ。
出生率の件はたんぽぽさんにお任せするとして、移民受け入れですが、まずはこれを見てね、って感じで。
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/1180.html
現在、日本の在留外国人はだいたい200万人で、ここ数年は減少傾向にあります。
確かに2007年頃までは毎年増えていましたが、一番増えた年でも、6、7万人程度の増加でしかない。
それがどうしたら「毎年20万人」などと、一番増えた年の3倍のペースで激増し続けるのか、そのブランが何も書かれていない以上、そんなものは何の根拠もない願望に過ぎません。
借金まみれの人間が、「この宝クジが当たったら、借金を全額返済して、家まで建ててやる。」などと口走っているのと同じ。
内閣府がそんな馬鹿話をし出したと言うことは、実際には日本政府は、人口減少を回避することを断念した、と言う風に私は理解します。
>http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/1180.html
>現在、日本の在留外国人はだいたい200万人で、ここ数年は減少傾向にあります。
ご紹介ありがとうございます。
日本にいる外国人の数はどんどん減っているのですね。
2008年のリーマンショックが、おそらくは原因なのでしょうね。
>一番増えた年でも、6、7万人程度の増加でしかない。
>それがどうしたら「毎年20万人」などと、一番増えた年の3倍のペースで激増し続けるのか、
2008年のリーマンショックで失職したブラジル人がたくさん出て来たのですが、
彼らはブラジルへ帰ることを余儀なくされましたからね。
日本政府が率先してブラジル行きの片道航空券をわたしたくらいです。
http://d.hatena.ne.jp/totuka/20120601/1338733712
こんな調子でどうやって移民を毎年20万人も呼び寄せるのかと思いますよ。
ようは働かせるだけ働かせておいて、都合が悪くなったら
出身国へ送り帰すのではないかという気がして来ます。
>「この宝クジが当たったら、借金を全額返済して、家まで建ててやる。」
「絵に描いた餅」というか、半分SFだと思って聞けということなのかもしれないです。
朝日の記事に年内に報告書をまとめるとあるので、その内容がどうなるかですね。
実行可能で効果的な対策が考えられていたら、見直してもいいと思います。