2014年03月25日

toujyouka016.jpg 若年女性の貧困の深刻(4)

かなりあいだが空いたけれど、2月24日エントリ2月26日エントリ
3月4日エントリの続き。
1月27日のNHK「クローズアップ現代」で放映した、若年女性の貧困です。

「あしたが見えない 〜深刻化する“若年女性”の貧困〜」
(はてなブックマーク)

「NHK「クロ現」に、ひとこと言いたい」
(はてなブックマーク)
「社会保障は、常に●●が肩代わりしてきた。」
「「社会保障は風俗に敗北した」 NHK「ガールズプア」特集が話題に」

 
>生活保護についての不正確な情報

「もやい」のエントリに生活保護に関する重要な指摘があります。
「クローズアップ現代」ではつぎのような内容を放映したのですが、
この役所の対応は生活保護法に反していて違法なことです。
http://www.moyai.net/modules/d3blog/details.php?bid=1802
========
去年、体調を崩して働けなくなり、生活保護を申請しましたが、
生活状況を細かく調べるのに時間がかかると言われ、断念しました。
女性は、再び風俗の仕事に頼るしかなかったといいます。

「市役所にいくら通っても、申請するまで2か月かかるよ、3か月かかるよって。
待ってるわけにはいかないじゃないですか。
だったらもう自分で働こうって決めて、気持ちだけですね。」
========

実際にはつぎのように対応しなければならないことが、
生活保護法の2条、7条、24条で定められています。
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生活保護申請はその日のうちに可能であること
申請から決定(却下)まで法律上原則14日以内であること
状況に応じて即日での制度利用等が可能な場合もあること
========

つまり「クローズアップ現代」のケースは
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この女性は、生活保護行政の違法な対応により、
本来利用できる制度利用にいたらず、風俗の仕事に頼らざるを得なくなった、
========
とするのが正確ということです。


「クローズアップ現代」は、行政がこうした違法なやりかたで
生活保護の申請をはじいたことを、番組中なにも言わないのですよね。
まちがった情報をそのままでは、番組を観た人はそういうものと思ってしまい、
じつは違法がまかり通ったことに気がつかないままでしょう。

マスコミはいまもって、「生活保護を締め付けよう、バッシングしよう」
という世間一般の論調に乗っかったところがあって、
生活保護受給者が不当に扱われていることを、
取り上げたがらない風潮があるのかもしれないです。
あるいは、マスコミにも生活保護に対する偏った意識があって、
生活保護受給者を増やしてはならないとか、生活保護を有利にしてはならない、
という判断が入るのかもしれないです。


>社会保障の肩代わり

「クローズアップ現代」の番組では「社会保障の敗北」と言われています。
本当は「社会保障の敗北」ではなく、役所の違法な対応や
制度に対する誤解や偏見のために、風俗へ行かざるを得なくなったのだ、
という指摘もありますが、それでも性産業が社会保障の肩代わりを
していることはたしかでしょう。

ここでの問題は、日本では性産業をはじめサラ金や刑務所が
「セーフティネット」になっているという、情けない現実があることです。
http://ameblo.jp/tokutake-satoko/entry-11762268570.html
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性産業にしても、借金地獄にしても、刑務所にしても、
「最低限だけど健康で文化的な生活」からはほど遠いところにある。
たいていの人が、こういった単語を耳にすると、
忌避すべきもののとして顔をしかめるだろう。
しかし、実際に、昔から、この国ではそういった「おかしなもの」が、
社会保障を肩代わりしてきたし、今もそうだ。
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欧米の民主主義国であれば、性産業や借金地獄や刑務所へ入る人を減らすために
セーフティネットを設け、社会福祉を充実させるところです。
日本は逆で社会福祉を切り捨てて、性産業や借金地獄や刑務所に
セーフティネットの役割を押し付けているということです。


このあたりははっきりと数字にも現れています。
OECD加盟国の中では、日本は社会扶助費のGDPにしめる割合が問題なく低いです。
OECD平均よりずっとすくないのはもちろん、自己責任の国と言われている
アメリカ合衆国よりもさらにすくなくなっています。

https://twitter.com/ohnojunichi/status/410510860558155778
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国民のみんなが稼いだお金を、税金として集めた国が、その集めたお金の内、
どの程度の割合で仕事ができないような状態の人たちを援助しているかという
世界比較のグラフ図です。日本を見てください。 pic.twitter.com/fvVDCVXyAI
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shakaifujo-oecd.png


前にお話したように、日本は「自力で生きていけない人たちを国や政府は
助けるべきだとは思わないと言う人」
という人が、諸外国にくらべて
ずっと多いので、その意識が現れているということなのでしょう。

「日本の貧困対策がどれほど貧困かよく分かる数字」

このあたりは、1月17日エントリでお話したように、
高度経済成長期の「みなが働けば社会がよくなる」という
モーレツサラリーマン的マインドが残っているからでしょう。
それで働けなくなった人は社会に対する「裏切り」のように考え、
助ける対象とは考えないということだと思います。

「働くことに重きを置く?」

posted by たんぽぽ at 07:26 | Comment(0) | TrackBack(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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