NHK経営委員のひとり百田尚樹氏が、南京事件を否定する発言をしたのでした。
2月の都知事選で、百田尚樹氏は田母神俊雄氏を応援していて
(これはこれで批判の余地があることだと思いますが)、
南京事件否定発言はその応援演説の中で出て来たものです。
「NHK経営委員の百田氏が応援演説 都知事選」
「百田尚樹氏「南京大虐殺はなかった」発言に中国が反発 海外でも報道」
「百田氏発言の波紋広がる 米中が批判、報道相次ぐ」
朝日の記事によると、問題の百田発言はつぎのような内容となっています。
「1938年に蒋介石が日本が南京大虐殺をしたとやたら宣伝したが、
世界の国は無視した。なぜか。そんなことはなかったからです」
「極東軍事裁判で亡霊のごとく南京大虐殺が出て来たのは
アメリカ軍が自分たちの罪を相殺するため」
百田尚樹氏はかねてからツイッターでも、以下のように南京事件否定論を
展開していて、歴史認識は完全に「あっちの世界」ということです。
すこし前に籾井勝人氏が慰安婦否定発言をして、その批判が高まっていたときに、
今回の百田尚樹氏というわけで、上塗りをした感じです。
私は大学に入るまで「南京大虐殺」はあったと信じていた。大学生の時『「南京大虐殺」のまぼろし』(鈴木明1973年刊)を読み、衝撃を受けた。正直に言えばこの一冊で捏造史観の洗脳が解けたわけではなかった。しかしこの後に多くの資料を調べ、「南京大虐殺」はほぼ捏造の産物であると確信した。
— 百田尚樹 (@hyakutanaoki) 2013, 9月 18
私は南京大虐殺はなかったと考えている。それは肯定派の出す資料が明らかな捏造も含めてお粗末なものが多すぎること、資料を客観的に見る限り、有り得ないと考える方が自然と思われるからだ。しかし大虐殺を信じる人たちは捏造資料を疑いもしない。「信仰」に近い彼らを納得させることは不可能に近い。
— 百田尚樹 (@hyakutanaoki) 2013, 9月 25
日本の排外・国粋主義への傾倒は、すでに国際社会が警戒することとなっていて、
日本のそうした動きについては諸外国は敏感になっています。
百田尚樹氏の南京事件否定もとうぜん諸外国の知るところとなり、
ル・モンド、BBCとヨーロッパのメディアでも取り上げられたのでした。
「ル・モンドの記事から」
(はてなブックマーク)
「Governor of Japan broadcaster NHK denies Nanjing massacre」
(はてなブックマーク)
ハフィントンポストの記事を見ると、ほかにも「香港のサウス・チャイナ・
モーニング・ポスト、シンガポールのストレーツ・タイムズ、
オーストラリアのシドニー・モーニング・ヘラルドなどが伝えている」とあります。
百田尚樹氏発言についてほかに特筆することのひとつは、
アメリカ合衆国のワシントン・ポスト紙の電子版が、
「安倍晋三首相は籾井勝人氏の慰安婦否定と、百田尚樹氏の南京事件否定を
もっとはっきり批判するべき」と安倍政権の態度を批判したことがあると思います。
「「首相はなぜ非難せぬ」=NHK会長発言でー米有力紙」
安倍晋三首相をはじめ、自民党・安倍政権のメンバーの多くも、
内心では籾井勝人氏や百田尚樹氏に近い認識でしょうから、
彼らがこのふたりをまともに批判しないのは、むべなるかなだと思います。
もうひとつ特筆することは、キャロライン・ケネディ駐日アメリカ大使に
NHKが取材を申し込んだら、アメリカ大使館が難色をしめしたことがあるでしょう。
「南京事件なかった」とか「慰安婦はどこの国にもあった」などと言って
はばからない人がごろごろいれば、そんな得体の知れないメディアの取材など
遠慮したくなっても無理もないことだと思います。
「米大使館、NHK取材に難色 百田氏の発言理由に」
(はてなブックマーク)
これをご覧のかたでも、統一教会系のメディア世界日報が
取材を申し込んできたとしたら、すくなくない人はそんなところとは
関わらないほうがいいと、警戒するのではないかと思います。
アメリカ大使館のNHKを見る眼は、それと近くなっているということでしょう。
これは、全て私(ジャジー)の推測なのですが、
安倍首相が百田氏らに積極的な批判をしないのは、
首相の「おともだち」と対立し、彼らが首相から離れてしまうことを、
何よりも恐れているからだと思いますよ。
逆に言えば、今の安倍政権がいかに国内外からの逆風にさらされているか、
見当がつくというものです。
>首相の「おともだち」と対立し、彼らが首相から離れてしまうことを、
>何よりも恐れているからだと思いますよ。
なるほどねえ。
そういう可能性も考えられなくもないですね。
第一次安倍内閣のときも、「おともだち」が失言などで批判にさらされると、
辞任に追い込まれないよう、安倍がせっせとかばっていたのですよね。
このような意味で、安倍が「おともだち」に「やさしい」人だ、
というのはたしかですね。