2014年04月20日

toujyouka016.jpg 家事支援に外国人労働者?

すこし前のなかなか突拍子もないニュース。

安倍晋三首相が「女性の活躍推進」の観点から、家事や育児、介護のために
外国人労働者を受け入れることを検討するよう指示したのですよ。
家事、育児、介護といった「女の仕事」を外国人にやらせることで、
日本人女性の労働力率を高めよう、などと考え出したということです。

「女性の社会進出へ 外国人受け入れ検討を提言」
(はてなブックマーク)
「外国人労働者拡大へ 首相、家事支援など活用指示 「女性の活躍推進の観点から」」
「安倍首相「女性の社会進出のため、家事に外国人を」 
ネット上では、疑問や批判の声が相次ぐ」


4月4日に経済財政諮問会議と産業競争力会議の合同会議で安倍首相は述べています。
産経の記事には安倍晋三首相が述べたという言及がありますが、
NHKの報道には経済財政諮問会議と産業競争力会議で
とりまとめたと書いているだけで、なぜか安倍首相の名前は出て来ないです。

 
外国人労働者を受け入れるとなると、とうぜん一定の期間、
日本で生活することになりますから、3月1日エントリでお話したような
移民を受け入れたときとおなじような事態が起きることになります。
外国人労働者の社会福祉や、外国人の子どものための
外国人学校の権利は保障されるのかと思います。

「人口政策・選択する未来(2)」

これも3月1日エントリでお話しましたが、2008年のリーマンショックで、
日本で暮らしていたブラジル人が大量に失職したとき、
彼らがブラジルへ帰るのを余儀なくされたことがあります。
おなじようなことが、あらたに受け入れた外国人労働者に対しても
起きたりしないのかと思います。

合同会議は、外国人労働者を受け入れるために
「外国人技能実習制度」を拡充することを考えています。
この制度は企業にとって外国人をていよく利用する制度となっていて、
最低賃金以下の賃金で働かされたり、新たな技能が学べなかったり、
日本人労働者とトラブルになったりと、深刻な問題を抱えているものです。

「外国人技能実習生:環境改善に予算倍増 厚労省14年度」

合同会議や安倍首相は、かかる問題をどう考えているのかと思います。
問題を改善せずに制度を拡充しても、うまくいかないでしょう。
今後外国人労働者をもっと受け入れようというのなら、
「外国人技能実習制度」の抜本的改善が先決だと思います。


そもそも、家事、育児、介護といった「女の仕事」を
外国人に「下請け」させるという発想が、虫がよいというものです。
社会制度や社会福祉でカバーしたり、男性にも家事、育児、介護を
担わせるという発想はないのかと思います。

安倍晋三首相をはじめ、経済財政諮問会議や産業競争力会議は、
日本人女性と外国人をともに「アウトサイダー」として
客体視しているのだろうと思います。日本人男性中心の発想だと思います。
これらの会議には女性のメンバーはいないのかと思うところです。

わたしが心配なのは、これによって日本人女性と
外国人とのあいだに対立が生じる可能性があることです。
日本人男性の立場から見れば、マイノリティ同士の叩き合いで、
ある意味彼らにとって都合のいいことだと言えます。
さいわいにしてわたしの見た限りでは、「女性の活躍推進のため」と称して
外国人労働者を使うことに賛同する日本人女性はいないようで、
みなさん批判的な見解を述べているようです。


合同会議でも異論が出なかったわけではないようです。
ところがその内容は、「ことばや文化の違う外国人が子育てを
するのは問題がある」とか、「不法就労や治安に影響を与える」とか、
「日本人の雇用水準を下げないよう同一賃金にする必要がある」
といったことだったりして、ピントが完全にずれているのです。

問題にするところは、上述のような「外国人技能実習制度」とか、
外国人の福祉の保障とか、日本人による外国人差別のはずです。
ところが彼らはそういったことはなにも考えていないらしく、
外国人をはじめから犯罪者の予備軍扱いしているわけです。
自分たちのために来てもらおうというのに、じつに傲慢だとわたしは思いましたよ。

彼らはおそらく外国人労働者を「低賃金でていよく使える
便利な労働力」くらいに思っているのかもしれないです。
そして「日本は経済大国だから、貧しい国の人たちは少々条件が悪くても
喜んで働くに違いない」という、おごった考えがあるのかもしれないです。

posted by たんぽぽ at 16:17 | Comment(2) | TrackBack(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
炊事洗濯的な家事については、夫婦で折半すれば良いだけですね。一人暮らしで仕事している人は男女問わず、家事と仕事を両立しています。それが結婚したら難しくなるんだとしたら、難しくならない方が楽しているだけです。
子育ては、圧倒的に多くの女性と一部の男性が、仕事との両立に悩むところですが、日本語のたどたどしい外国人をベビーシッターとして個人で雇う前に、保育所に入れさせてくれ、と、殆どの人が思うに決まっています。
介護とて同じことで、日本語の不安な外国人よりも、日本人のケアマネージャーに任せたいのでは?何かあった時に意思疎通が上手くいかないと、命に関わりますから。
要するにこの安倍の発想、たんぽぽさんのおっしゃる通り、「家事も育児も介護も女の仕事である。」と言う大前提があるからこそであって、その大前提が決定的に間違いなのだから、幾ら検討しても無駄でしょう。と言うかこんなの、もはや荒唐無稽領域の話では?
アホな総理大臣が、見当違いな観点から無駄な検討を指示し、それによって大勢の人間が時間を割かれている。
安倍政権の日常風景が、ここにもあります。
Posted by ニャオ樹・ワタナベ@モバイル at 2014年04月22日 19:14
このエントリにコメントありがとうございます。

>炊事洗濯的な家事については、夫婦で折半すれば良いだけですね

日本の男性は欧米の民主主義国とくらべて、ずっと家事時間が短いですからね。
改善するのはこういうところのはずです。
http://taraxacum.seesaa.net/article/391381331.html

>日本語のたどたどしい外国人をベビーシッターとして個人で雇う前に、
>保育所に入れさせてくれ、と、殆どの人が思うに決まっています。

日本語に不自由するシッターに見てもらうのは、
多くのかたが抵抗を感じそうですね。
(外国人の日本語能力によって、待遇に差が出てくるのかな?)
外国人シッターを雇うにしてもお金はかかるのだし、
保育所を作るほうがずっとすなおだと思います。

>「家事も育児も介護も女の仕事である。」と言う大前提があるからこそであって

家事、育児、介護は一ランク下、みたいな感覚があるのかもしれないです。
それでこれらをマイノリティにやらせよう、なんて考えるのかもしれないです。


>アホな総理大臣が、見当違いな観点から無駄な検討を指示し、

家事や育児、介護をやらせるために外国人労働者を受け入れる、
というのは、ヨーロッパの民主主義国にはない発想ですね。
これらの国ぐには移民を受け入れてはいますが、
家事や育児、介護をやらせるためではないですし。

安倍はどうやってこういうピントのずれたことを
考えついたのかとも思うのですが、こういう無意味なことに時間と労力を割くのも、
じゅうぶん税金の無駄遣いだろうと思います。
Posted by たんぽぽ at 2014年04月23日 21:24
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