2014年04月24日

toujyouka016.jpg 出生率上昇に数値目標?

内閣府の「少子化危機突破タスクフォース」が、出生率を2030年に
2.07までに回復させるという、数値目標を出すことを提案したのですよ。
そういう目標設定は、「子どもを産め」という「無言の圧力」になりかねない、
という懸念があるので、結構長い記事が書かれています。

「何人産むか目標必要? 「出生率2.07回復」政府会議が検討開始」
「何人産むか目標必要? 「出生率2.07回復」政府会議が検討開始」(全文)
(はてなブックマーク)

電子版はなぜかリードの部分しか出ていないです。
また数値目標を検討した会議は「政府の有識者会議」とあるだけで、
「少子化危機突破タスクフォース」の名前も出ていないです。

 
彼らに言わせると「政府の本気度を国民に伝える必要がある」ので
「具体的な目標を欠いては」ならない、ということなのですよ。
「安倍晋三首相も「目標のあり方を含めて検討を」と
森雅子・少子化相に指示した」とあります。
安倍首相も数値目標はあったほうがいいと考えているようですね。

数値目標の議論が出て来たのは「3月に政府の経済財政諮問会議で
民間議員が出した少子化対策の提言がきっかけ」とあります。
「経済財政諮問会議」は、4月20日エントリでご紹介した、
「女性の活躍推進」のために、家事や育児、介護労働に従事する
外国人労働者を受け入れることを検討した会議ですよ。


わたしが思ったのは、2030年までに出生率を2.07にするなんて、
どうやって実現するつもりなのか、ということですよ。
今年は2014年ですよ。そして出生率は1.41ですよ。
あと16年で0.66も出生率が上がるなんて、
いままでの調子を見ていると、とても思えないことですからね。

「少子化危機突破タスクフォース」は、これまでも「女性手帳」の配布とか
「婚活支援」とか、少子化を個人の責任として考えています。
それ以外のところでやっている少子化対策も、
ゼロ歳児保育に反対があったり育児休暇3年とかやりだしたり
大学の授業でコミュニケーション力を高めようとかやっています。

「経済財政諮問会議」も外国人労働者に家事労働をさせよう
などと言っているのですから、「家事=女の仕事」という意識のままで、
日本人男性中心の発想から抜け出せずにいます。
効果があるとわかっている少子化対策をほとんどやらず、
これらピントのずれたことばかりやっているのですから、
出生率を上昇させるなんて、とてもおぼつかないことだと思います。


記事でははじめに触れたように、「産みたくても産めない人や、
産まない選択をした人に、無言の圧力が社会に広がる」懸念について書いています。
いかんせん日本社会は同調圧力が強いですし、記事の右下の横書き部分にある
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政権がどれだけ「産むことを強制するのではない」と言っても、
出生率の具体的な数字を挙げれば、多くの人は
「女性は一人につき何人産め」というメッセージだと受け取る。
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ということは、実際にありえることだと思います。

それから
========
戦時下に、21歳までに結婚して5人有無ことを目標に掲げた
「産めよ増やせよ」とも発想が似ている。
当時も「強制ではない」としたが、結婚のあっせんを国策で進めた。
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というのは、悪名高い「戦時人口政策」のことですね。
2013年5月12日エントリで、わたしもすこし触れています。
国民のライフスタイルを管理して人口を増やそうというのは、
ファシズム国家の発想でもあるということです。

とくに現政権は少子化を個人の意識の問題と考えています。
それゆえ出生率の上昇という国家目標のために、
個人の意識を変えなくてはならないという発想になる恐れがあり、
「戦時人口政策」に近くなる可能性が高いというわけです。
「結婚のあっせんを国策で進め」るなんて、少子化危機突破タスクフォース
自民党の議連が推進している「婚活支援」とおなじような発想ですね。


出生率を上昇させて少子化を克服したモデル国家とされる
フランスとスウェーデンでは、出生率の数値目標は掲げていないのですね。
これらの国では個人のライフスタイルの選択の保障が目的にあって、
出生率の上昇はその結果としてついてきたもの、というスタンスなのでしょう。

また
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「重要なのは目標より改善の手段。
女性が子を産み、育てながら働き続けられるような企業・社会の
環境整備や、経済的な不安を抱えているために結婚できない人の
状況をよくすることが先だ」
========
というのは、まさにそうだろうと思います。

少子化対策なんて、関係している要素がたくさんありすぎて、
なにをやったらどれだけ出生率が上がるかとか、とても予想がつかないものです。
だから実効性があると考えられる、ありとあらゆることを
やる必要がある
とも言えるでしょう。

よって「はじめに数値目標ありき」でも、まず守れないと思います。
そんなことより効果のある「改善の手段」をどしどし実行して、
数値は結果としてついてくるものとしたほうがよいでしょう。

posted by たんぽぽ at 22:10 | Comment(0) | TrackBack(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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