内閣府が「家族と地域における子育てに関する意識調査」という
世論調査の結果を発表しているので、ご紹介したいと思います。
これは少子化の原因を探る一環として行なわれているもので、
未婚や晩婚の調査もしていて、ハフィントンポストの記事にもなっています。
「【少子化】未婚・晩婚化の原因、未婚男性の5割が「経済的に余裕がない」
内閣府調査で浮き彫り 」
(はてなブックマーク)
「平成25年度「家族と地域における子育てに関する意識調査」報告書 全体版」
「「平成25年度「家族と地域における子育てに関する意識調査」報告書」(概要版)
「結婚・家族形成についての意識」
これまでにさんざん言われてきたことをあらためてしめした、
というだけとも言えて、このあたりの議論をよく知っているかたには
新規性がないとも言えるのですよね。
それでもせっかくの世論調査ですし、統計でしめされる
ということは意義があることなので、見ていくことにします。
はじめに結婚意向についての結果を見ておくことにします。
未婚者の全年齢の調査を見ると、「すぐにでも」「2~3年以内に」「いずれは」
結婚したいというかたが、男性の68.3%、女性の75.7%になっています。
20~39歳にかぎると男性は79.0%、女性は91.9%とさらに高率になります。
あくまで意向であって、実際に結婚するかどうかはべつなのだと思いますが、
「いずれは結婚したい」という漠然としたかたまで入れると、
ほとんどのかたが「結婚したい」と考えていることになります。
結婚がとくに忌避される風潮はないし、また「結婚するつもりはない」という
非婚主義のかたも、ごくすくないということになるでしょう。
このエントリの主たる目的である、「若い世代で未婚・晩婚が増えている理由」と
「結婚を決心する状況」について見ていきたいと思います。
これらの設問は複数回答で、後者の「決心する状況」の設問は、
結婚の意向があるかたにのみ訊いています。
グラフを見ると、あきらかにジェンダー差があることがわかります。
男性のほうですが、「未婚・晩婚の理由」でもっとも多いのは
「経済的に余裕がないから」で52.0%のかたが挙げています。
また「決心する状況」でもっとも多いのは「経済的に余裕ができること」で
47.7%のかたが回答しています。
男性にとって結婚の最大のネックは経済的問題ということです。
男性の場合、非正規雇用が増えたり年収も下がったりして、
雇用も収入も不安定になったので結婚しない人が増えたという、
よく言われていることを、ここで裏付けたことになります。
「少子化対策のために結婚する人を増やしたい」というのであれば、
これを雇用問題、労働問題と考えて、とくに若い人たちの
雇用や収入の安定化をはかることが大事ということですよ。
女性のほうですが、「未婚・晩婚の理由」でもっとも多いのは
「独身の自由さや気楽さを失いたくないから」で55.3%となっています。
女性の場合、結婚にともなう影響は大きいということですね。
子どもを産むことになるかとか、出産や育児によって
仕事を続けられるか、という問題が出てきます。
また夫が家事や育児にどれくらい参加してくれるか、
仕事と家庭の両立の負担を押し付けられないか、ということもあります。
実際、女性は結婚すると収入がかなり減るという現状があります。
また共稼ぎでも家事労働は妻がやって当然と考えている男性もすくなくなく、
日本人男性はとくに外国人から警戒されていたりもします。
結婚による束縛を、女性が警戒するのはもっともなことだと思います。
「女は結婚で年収が減る」
「家事をしない日本の男」
「本当は怖い?日本の男性」
男性でも「独身の自由さや気楽さを失いたくないから」と
答えたかたは47.4%もいて、経済的事情についで2番目となってはいます。
「自由さ」と「気楽さ」の中身は、男性と女性とでとくに切実さのレベルで
だいぶ違うのではないかと、わたしは想像しますよ。
女性が「決心する状況」でもっとも多いのは「経済的に余裕ができること」と
「希望の条件を満たす相手にめぐり会うこと」が並んでいて44.9%です。
後者の「希望の条件」というのは、上述のような仕事を続けることや、
出産、育児、家事分担といったことで相手の男性と折り合いがつくか
ということがあるのだろうと思います。
また、女性は一般に年収がすくないですから、相手の男性の年収が
ある程度多くないと結婚生活が営めない事態が出てくるのもあるでしょう。
結婚するとなると直面する現実問題の壁が、女性には多いので、
満たされるべき「希望の条件」が多くなるのだろうと思います。
「男女の年齢層別年収分布」
「男女&雇用形態別年収分布」
「年収が低い男性との結婚」
男性で「希望の条件を満たす相手にめぐり会うこと」と
答えたかたは31.4%で、女性とくらべるとだいぶすくないです。
男性のほうが結婚の際に直面する問題がすくないので、
それほど相手を選ばなくてよいということなのでしょう。
「未婚・晩婚の理由」のうち「異性と知り合う(出会う)機会がないから」
と答えたかたは、男女でほぼおなじくらいで3割ほどです。
「決心する状況」で「異性と知り合う(出会う)機会があること」と
答えたかたは、男女合わせた全体で30.5%となっています。
経済的事情や「希望の条件」とくらべるとずっとすくないと言えます。
それでもそこそこのウエイトはあると言えるので、
このあたりが、政府がまじめに婚活の支援や推進をしようとする
動きが出てくるゆえんなのかもしれないです。
ちなみに「決心する状況」で「異性と知り合う(出会う)機会があること」と
答えたかたは、男性は34.9%、女性は25.6%でジェンダー差があります。
恋愛が男性中心で、相手を探す負担はおもに女性が請け負ってきたことの
名残りが、ここにあると言えそうです。
「未婚・晩婚の理由」で「異性とうまくつき合えないから」と
答えたかたは、男女合わせた全体で17.9%です。
「決心する状況」で「異性とうまくつき合えるようになること」と
答えたかたは、男女合わせた全体では8.5%で、1割にも満たないです。
大学の授業で異性とのコミュニケーションの練習をさせるというのが
いかに意味のないことかを、しめしていると言えます。
歴史的・世界的に雇用や労働、それに伴った賃金の安定や上昇によって結婚や出産が増えるという傾向は見られません。
むしろ逆です。
関係は大有りですね。少なくとも30年くらい前の日本では、大有りでした。
その頃は、女性が結婚することを「永久就職」などと言っていましたよ、普通に。勿論、男性の結婚はそのようには言わない。
今でもその感覚で結婚しようとする女性がいるなら、そう言う人は就職先が非正規雇用者では、就職(結婚)を躊躇するのは当然でしょう。
日本人男性は基本的に全員終身雇用とするか、女性が就職したまま(自分の食いぶちを確保したまま)結婚することが当たり前に出来るようになるか、
そのどっちかでしょうね。
わたしのブログでコメントなさる場合は、不特定多数を連想させる
ハンドルではなく、ユニークなハンドルを使っていただきたいです。
お書きになったことは、なにを根拠にしているのかと思います。
またそういう国があったとして、それは現代の日本に当てはまるのかと思います。
現代の日本においては、非婚化は雇用問題、労働問題に
直結していることはたしかですね。
男性でいちばん多い未婚・晩婚の理由は経済的事情という調査を
紹介しているのに、最初のコメントの人は「経済的事情は未婚と関係ない」
なんて書いて、なにを見ているのかと思います。
また、未婚や晩婚と経済的事情との関係を否認することで、
なにをしたいのかと思いますよ。
最初のコメントの人は男性だとして、
「俺はどんな薄給で生活が不安定でも、結婚して家庭生活には
責任を持ってみせるぜ」とか「女が『夫の年収は1000万以上でないと
生活が安定しないからだめ』と言っても、その女に文句は言わず、
男の薄給を受け入れる女を探してみせるぜ」ということなのかと思います。
経済があまり関係ないという根拠は未婚、晩婚、出生率の低さなどは70年代から起きていて、
出生率は1980年の時点で1,75になっています。
1989年には1,57になり、ご存知かと思いますが、これが1,57ショックとして記録されています。
2012年が1,41
多くのメディアはここをスルーする場合が多いです。
メディア、または政治家はなぜこれを言いたがらないのでしょうね。
89年、すでに1,57という出生率になっていた。
メディアはその当時が全盛で今は駄目だと主張し続けているのでこれを記したくないんでしょうね。ベテラン政治家にしても。
今現在の調査で、結婚しない理由や、すぐにでも結婚したい。いやまだ当分したくないなど意味のない話で、すぐ結婚したいといって出会いがあっても長期間結婚に踏み切らないかもしれず、結婚したいと思わないと言っている人が急な出会いによって来年結婚するかもしれません。
単に考えや希望で結果などわかりません。
しかし、出生率80年1,75で89年1,57というのは思考や希望、気持ちの問題でなく実際の変化しようがない数字です。
89年に1,57なら経済がどうしたというのはお門違いですね。
ハンドルをいちおうユニークなものにしたと、判断することにします。
>出生率は1980年の時点で1,75になっています。
>1989年には1,57になり、ご存知かと思いますが
1980年代は、専業主婦世帯は減って共稼ぎ世帯が増えていました。
http://taraxacum.seesaa.net/article/396253708.html
いわゆる「女性の社会進出」が進んだので、出生率が下がったということです。
当時はいまと違って、男女雇用均等法も施行されておらず、
女性が妊娠・出産しても仕事を続ける環境が、整備されていなかったから、
子どもを持たないという選択をするかたも多かったと思います。
1990年代になって、景気が悪くなって、雇用や収入が不安定となり、
男性側が結婚生活を支える基盤も崩れて来て、
未婚率の上昇や出生率の低下の原因がさらに増えた、ということだと思います。
>多くのメディアはここをスルーする場合が多いです
「現代の未婚や少子化は雇用問題だ」ということこそ
言わないメディアや政治家ばっかりだと思いますよ。
そういう認識がないということだろうと思いますが。
国内で比較する分においては男性の経済基盤と結婚可能性において強い相関がみられますが
少子化対策を考えるうえでは、少子化を克服したフランスなどを参考にして
出産に伴うキャリア断絶を保育サービス充実によっていかに解消できるか
高校までの学費の無料化や20歳までの子供手当支給によって
「子供を持つことによる経済的デメリット」をいかに小さくできるかが重要になると思います。
Yahoo知恵ノート:政府やマスコミがあまり語らない少子化の真の理由
http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n44839
特に、出産に伴う女性のキャリア断絶の解消は
少子化対策のみならず、日本のGDPや労働生産性の向上、
男女の社会的差別・格差解消のための中核部分に当たるため、
最優先に実施すべきと考えます。
このエントリにコメントありがとうございます。
>前回は丁寧なレスありがとうございました。
いえいえ。
こちらこそ、またお越しいただきうれしく思います。
出生率の回復に効果的なことは、女性が妊娠・出産しても
仕事を続けられるよう、労働環境や育児環境を整備することだ
というのは、再三言われていることですね。
この手の議論をよく知っている人には、耳にたこができるお話です。
家族やジェンダーに因習・反動的な安倍政権でさえ、
近年は女性の労働力率と出生率の相関くらいは認めるようになっているようで、
しきりに「女性の活用」とか言っているのではあるけれど。
わたしが見たところ2000年代あたりから、女性の労働力率の向上に
努めた国は効果が出始めてきたと思います。
2010年代のいま、女性の労働力率と出生率の相関は、はっきりしてきたと思います。
http://bit.ly/1cVQ1yu
http://bit.ly/1t9k0xK
2000年代、すなわち10年ほど前の日本は、女性の労働力率を
出生率の相関をひたすら否定する論調がさかんだったけれど、
これらの人たちはいまどう思っているのかと思います。
>高校までの学費の無料化や20歳までの子供手当支給によって
これらはどちらも民主党政権が推進したものだけれど、
両方ともつぶされてしまいましたね。
当時の反対論者たちは、民主党政権を潰すことが最優先課題になっていて、
少子化に対する危機感はまったくなかったということです。
今でも女性の専業主婦化をはかれば出生率が上がるという論調は多いです。
その手の人はデータを見せても納得せず、
別の論点から反論してくることが多いように思えます。
論点は違いますが、↓の人とか。
ttp://chiebukuro.yahoo.co.jp/my/myspace_quedetail.php?writer=sakurasakutokainosorani
Yahooでの一連のやり取りでうんざりしていますが…
女性にとって仕事と出産・育児を両立しやすい環境整備に対してジェンダー論をぶってきます。
たんぽぽさんから見たこの人の印象を聞いてみたいです。
安倍政権の女性労働力率上昇計画については
スウェーデン型(フルタイム型)への移行であれば良いですが
今までの流れ(パートタイム型)の延長線上では困ります。
女性のすがたの変化
http://tmaita77.blogspot.jp/2014/02/blog-post_11.html
安倍政権についてもあるていど当てはまりそうですが
少子化対策として女性の出産・育児と仕事の両立をしやすい環境整備案に反対、
あるいは及び腰な人は何やら特有の思想がおありのようです。
>論点は違いますが、↓の人とか。
>たんぽぽさんから見たこの人の印象を聞いてみたいです。
ご紹介ありがとうございます。
いっぱい記事があるので、さしあたってこれを見てみます。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q14129573744
いまだにこんな認識の人もいるのだなと思います。
いろいろなところで典型的とでも言いましょうか。
少子化に対する危機感がぜんぜんない人、
そして女性が当然の権利を主張すると、わがままと裁断する人ですね。
|昔は福祉など充実していなくても子沢山だったのです、
|発展途上国は劣悪な環境でも人口は増えています
というのも、わかってない人がいかにも言いそうなことだと思います。
開発途上国は多産多死なんだけど、子どもが栄養不足でろくに育たない、
そういう社会をこの人は望んでいるのかと思います。
この人も例によって「男性差別だ!」と息巻いたり、
「弱者男性」と自己規定したりするのかな?とも思います。
「女ばかり優遇されている、男こそ虐げられている」なんて
被害者意識を持っているようですしね。
|あなたは男性差別など大したことないというのは単に女性を崇めている
|著しく女性贔屓の差別主義者で男性を対等に価値のある人間だと見ていないからです
こういう人の好きなもの言いは、「男女平等なら女も義務を負えよ」と、
負担ばかり主張してくることですね。
|女性の自由化を主張するならそれに伴う社会的義務も分担しなければいけません
やはりたんぽぽさんも同じような印象をお持ちになったようですね。
私にとってはファーストレディの習慣や男女交際におけるおごりの習慣など
別に苦ではありませんが、あの人には男性差別というほどの大問題ということなのでしょう。
どう見ても日本は女性差別の方が深刻ですが、それには無関心で
些細なレベルでしかない男性の不遇状況をことさら騒ぎ立てる、度量の狭い男だと思いますね。
それ以前に、礼節を欠いているうえに不見識ですから、対話していても不毛でした。
図表6と7の「出会い」の項目について解釈は
女性は結婚・出産に伴うキャリア断絶の恐れや養育費負担、家事負担増大など
生活レベルを低下させるようなデメリットを帳消しにしてくれるような男性との出会いがない
そのような女性の期待に応えられないタイプの男性は、女性から相手にされないから出会いがない
というミスマッチが大きいと思います。
異性関係の国際比較
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/2302.html
結婚・同棲・未婚の国際比較
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/1538.html
若者の性交、デート経験率推移
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/2460.html
これらのデータを見ても、日本が他の先進国と比べて男女交際が盛んでないとは言えませんし、
昔より男女交際が減ったということもありません。
結婚相談所に登録して成婚した人は10%程度
http://news.livedoor.com/article/detail/8418831/
婚活業界の成婚率の不振ぶりを見ても、男女の出会いの場を提供したところで
ミスマッチが起こって出生率上昇効果は限定的にならざるを得ないと思います。
このミスマッチを解消するのに有効な手段が各種保育サービス充実と養育負担軽減策だと思います。
またまたコメントありがとうございます。
>ファーストレディの習慣や男女交際におけるおごりの習慣など
ああ、典型的ですね。
レディーファーストはどうやってできたのか、わたしは知らないんだけど、
男性が女性におごるのは、男性のほうが女性より収入が
すくないゆえにできた習慣ですね。
女性が差別されていることをしめしているのだと思います。
「男が女におごるのは男性差別だ!」と息巻く人たちは、
女からおごってもらえれば収入がいまの7割に減っても
「差別が解消された!」と言って満足するのかと思います。
>http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/2302.html
>http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/1538.html
>http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/2460.html
ご紹介ありがとうございます。
最初の資料では異性との交際経験なしの割合は、
どこの国も全部の世代で「女性<男性」となっているのですね。
「いずれは出産行動にむすびつく可能性の高い異性関係に対して、
男性より女性の方がそれを無視した行動はとれないという
本能的な性の違いをあらわしているのだと理解できる」と書いてありますね。
そんなことよりも、恋愛相手を見つける負担は女性のほうが
多く負わされてきたという、男性中心の恋愛観がほぼ世界共通、
ということなのではないかと、わたしは思います。
>結婚相談所に登録して成婚した人は10%程度
>http://news.livedoor.com/article/detail/8418831/
こちらもご紹介ありがとうございます。
なかなか面白い記事ですね。
あとでじっくり見てみたくなるものが多いです。
結婚相談所の成婚率が低いことは、結婚するには経済的事情とか
家事の分担に協力的かとか、相手の親との関係といった
いっしょに暮らす上での条件がやはり大事であり、
それが解決されないまま出会いの場を作っただけでは
結婚する人は出て来ない、ということをしめしていると言えますね。