『美味しんぼ』の鼻血描写やがれき描写の非科学性が話題になっています。
これを受けて、政治活動や政治的主張をする際に、にせ科学を援用したり
擁護したりする問題について書いた記事があるので、ご紹介します。
「反原発派こそが似非科学を批判すべきだ 週刊プレイボーイ連載」
(はてなブックマーク)
なぜにせ科学を援用したり擁護したりしてはならないかというと、
とうぜんながらそれは科学的に間違った根拠のない主張だからです。
事実や根拠にもとづいた実証的な言動をするのが、リテラシーの大原則です。
政治的主張の場合も同様であることはもちろんです。
政治的主張や活動の中で「とんでも」な主張を入れたときの問題は、
1. その政治的主張の信頼自体が疑われる
2. 敵対勢力が攻撃する格好の材料になる
のふたつがあると思います。
ところが実際には、にせ科学を信奉したり援用したり、
擁護したりする人たち、というのは後を絶たないのですね。
本気でそのにせ科学を信じているだけでなく、自分の主義主張やイデオロギーに
都合がいいから利用したい、ということもあると思います。
あるいはにせ科学とわかっていても、擁護したほうが得策だろうという
打算が働くこともあるのでしょう。
政治活動の中で、にせ科学を援用したり擁護したりすると、
その政治活動自体が信頼を失うことになりかねないのですよね。
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今回の事件で気になるのは、「国や東京電力を批判するためなら
多少の行き過ぎも許される」という論調が一部にあることです。
しかしこんなことでは、原発に反対する主張はすべて似非科学と見なされてしまいます。
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根拠のない言説を主張の中に混ぜていて、
なんら問題を感じないのであれば、その主張全体が根拠のない
あやしいことと思われても無理もないでしょう。
これは多くの人たちの理解を得ることを目的とした政治活動を進める上で、
おおいなる支障となることは言うまでもないです。
そこまで脱原発運動を懐疑していなくても、「脱原発には関わりたくない」とか、
「原発推進でいい」なんて言うかたが出てくることもあるでしょう。
関わることで「とんでも」の同類と思われたくないからです。
http://tamagodon.livedoor.biz/archives/51857038.html
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そんな下種野郎しか反原発運動家に居ないのだったら、
たまごどんは原発推進でいいですわ。
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かくいうわたしも「原発推進でいい」とまでは思わないですが、
脱原発に対しては多分に醒めた眼で見るようになっているのですよね。
脱原発派はわたしの中では、かつての9条護憲の人たちと
おなじような感覚になっていますよ。
もうひとつ深刻なのは、「とんでも」な主張をすると、
それが敵対勢力にとって格好の攻撃する隙になることです。
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「美味しんぼ」の描写は政府関係者をはじめ、原発推進の側から強く批判されています。
それだからこそ反原発派は、動機を理由に似非科学を擁護するのではなく、
より徹底して批判しなければならないのです。
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この件では、安倍政権の閣僚がこぞって『美味しんぼ』批判をしています。
また原発推進の右翼も『美味しんぼ』批判を展開していたりします。
実際に、原発推進勢力による格好の隙になったと思います。
「美味しんぼの鼻血表現(2)」
「雁屋哲は反日変態左翼?」
『美味しんぼ』を擁護する中には、『美味しんぼ』を批判するな、
東京電力や政府を批判しろ、というかたもいらっしゃります。
ところが『美味しんぼ』のにせ科学性を黙認して東京電力や政府を批判したら、
自分もにせ科学を擁護していると第三者から思われて、
自分たちの信頼まで損ないかねないことになります。
科学リテラシーのあるかたがそんな「悪手」を取るはずもないでしょう。
このあたりは立場を逆にして考えるといいかもしれないです。
「生物の目的は子どもを作ることだから同性結婚は反対」
なんて言っている人がいたらどうするかです。
維新の会が「発達障害は伝統的子育てで治る」などと言って、
「親学」推進を条例化しようとしたらどう思うかです。
「性別役割分担は哺乳動物の一員としてきわめて自然」なんて、
安倍首相の「おともだち」が言っていたらどうするでしょうか?
文部科学大臣がEM菌や「親学」を信奉していて、
イオンド大学の名誉博士を教育再生実行会議に招いたらどう思うでしょうか?
あなたが「家族のカチ」とか「伝統的子育て」に批判的で、
家族やジェンダーに関してリベラルな考えをお持ちだとしたら、
これらを見て、「こんな『とんでも』を信奉していて、
家族やジェンダーに因習・反動的な人たちはやはり信用できない」とか、
「彼らを批判する格好の材料だ」と思うのではありませんか?
また「安倍政権や維新の会を批判するな、批判するべきは
家族破壊をたくらむサヨクやフェミだ」などと言って、
彼らを擁護している人がいたら、どう思いますか?
あなたが生物学や医学について一定の知識がある第三者だとしたら、
こんなことを言って批判の矛先を逸らそうとする人たちを信用できますか?
>キノコを食べたあとにがん細胞が消えたとしても、そこに因果関係があるかどうかを知るには膨大な実験が必要です。そんなことは個人には不可能ですから、厳密な証明を要求すると、私的な体験を公表することまで禁じてしまうのです。
>しかしこれは、体験に基づけばどのような一般化も許される、ということではありません。
>借金を踏み倒された相手がたまたまユダヤ人だったとしても、「すべてのユダヤ人はウソつきだ」と差別する理由にならないのはいうまでもありません。“キノコでがんが治った”ことを理由に「抗がん剤はいますぐやめなさい」と煽れば、それを信じた患者が適切な治療を放棄するかもしれません
まさに、今回の「美味しんぼ鼻血問題」のケースですね。
キノコを食べてガンが治った人がいる、その体験を描いていることのどこが問題なんだ!
というのが擁護派の意見なんでしょうが、キノコを理由に抗がん剤は無意味だ!ガンはキノコで治せ!と描いてしまったら、果たしてそれは許されるのか?
そういえば、今思い出したけど、「美味しんぼ」ってうつ病についても、すごくトンデモなこと描いていて
「そんなことしたら死んじゃうよ!」
と呆れていたもんです。
>『美味しんぼ』を擁護する中には、『美味しんぼ』を批判するな、
東京電力や政府を批判しろ、というかたもいらっしゃります。
「美味しんぼ」を批判することと、東電や政府を批判することは、全く別問題であって、両者とも批判すべきなんですけど、それがわかってない人も多いみたいですね。
>まさに、今回の「美味しんぼ鼻血問題」のケースですね。
>キノコを食べてガンが治った人がいる、その体験を描いていることのどこが問題なんだ!
>というのが擁護派の意見なんでしょうが、
じつは描いているだけでも問題なのですよね。
そういう体験を描くということは、因果関係があると言いたいとふつうは考えるし、
因果関係があることを言いたくないのなら、わざわざ描かないでしょうからね。
>「美味しんぼ」を批判することと、東電や政府を批判することは、
>全く別問題であって、両者とも批判すべきなんですけど、
そういう人たちは、政府自民党や東京電力といった「巨大な悪」と、そ
れと対峙する「弱者」の側に立つ「善」という図式を描いているのかもしれないです。
それで自分はとうぜん、「弱者」の側に立つ「善」と規定しているのですね。
http://bit.ly/1kJfQWq
それで「真の敵は巨大な悪だ」とか「自分は善だから批判されるいわれはない」
という発想になるのではないかとも思います。
わたしのお返事がやや遅れがちでごめんなさいね。
ご覧の通りと取り込んでいまして,..
>たとえば科学リテラシーのようのことを、
科学を一種の権威とか権力のたぐいと考えている人は、
実際にいるのかもしれないです。
そう考えていて、かつ反権力を標榜している人の中には、
科学リテラシーよりも、自分の信奉する「正義」のほうが優位だと
思っている人もいるかもしれないです。
>戦略的に科学リテラシーを身に付けないという行き方もありそうですね
それはいまこのブログで議論している
あのかたがやっていることに近いかもしれないですね。
もっとも多くの場合は、そのような戦略的なことは考えてなくて、
単に科学はむずかしくてよくわからないからやらない、
という程度ではないかと思います。
日本学術会議が民法改正を提言
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140630/k10015622451000.html
提言―男女共同参画社会の形成に向けた民法改正
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-22-t193-5.pdf
とにかく、日本の科学者のトップ会議ですから、これを無視する、というのは、科学技術立国日本を国是を無視する、ということになります>家父長主義カルト議員様
>日本学術会議が民法改正を提言
>http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140630/k10015622451000.html
情報ありがとうございます。
ブックマークも結構付いていますね。
http://b.hatena.ne.jp/entry/www3.nhk.or.jp/news/html/20140630/k10015622451000.html
>提言-男女共同参画社会の形成に向けた民法改正
>http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-22-t193-5.pdf
これはすごいですね。
かなり長い提言書なのですね。
日本学術会議は研究者の団体ですから、民法改正、
とくに夫婦別姓問題については、敏感であっていいはずなのですよね。
安倍政権がどうするかですね。
過去に「夫婦別姓は死んだ」と言われたこともありますからね。
http://lacrima09.web.fc2.com/teardrops/movement/abe-cabinet.html
よほどの圧力がかからないかぎり、なにもしないのではないかと予想します。
民法改正にどのくらい積極的になれるかで、「女性活用」なるものが、
どのくらい本気かをしめすことになるのでしょうけれど。
> とくに夫婦別姓問題については、敏感であっていいはずなのですよね。
そうなんですよね。この報告書はそのあたりはあまり触れておらず、少し残念ではありますが、大変よいまとめにはなっているように思いました。
国立大の教員はみなし公務員で、政治活動はできない、というハンディの中で、この提言を出していただけたのは本当に大きいことだと思います。
(提言が特定の政党などに触れることはさけているのはそんなところにも理由があるのではないかと思います。)
>国立大の教員はみなし公務員で、政治活動はできない、というハンディの中で、
そういった事情があるのですね。
それでいままで民法改正や夫婦別姓に関しては、
ずっと発言を控えてきたのかもしれないですね。
それにもかかわらず、かかる提言書を出したということは、
もうこの問題について黙ってはいられないとなって、
なんらかの発言をする必要を強く感じたということかもしれないです。