東京都議会で塩村あやか議員に投げつけられたセクハラ野次は、
外国メディアも取り上げるところとなったのでした。
『ガーディアン』とCNNの報道を紹介しておきます。
「Tokyo assemblywoman subjected to sexist abuse from other members」
(はてなブックマーク)
「Outrage follows sexist outburst at Tokyo assembly meeting」
(はてなブックマーク)
昨年から日本で差別問題や国際的に非難を浴びる事件が起きると、
外国メディアが報道するという事態が何度も起きています。
日本の女性差別の実態も、外国人はよく知るところとなっています。
今回の東京都議会のセクハラ野次も、外国メディアは
「また日本か」くらいに思っているのかもしれないです。
『ガーディアン』の記事では「sexist abuse」と表現されています。
「セクシャルハラスメント」ではなく「性的虐待」ですよ。
あのようなセクハラ野次に対して、外国メディアの見る眼は
このくらいなのだということを、言及しておきたいと思います。
日本のメディアは、東京都議会のセクハラ野次が、
外国でどう報じられているかも記事にしています。
外国の評価を取り上げてくれているのは、よかったと思います。
6月24日の朝日新聞では、つぎのように北欧の場合を例にあげています。
以下の引用は「やはり」と思ったかたも多いと思います。
「海外記者にどう映る 塩村都議、ヤジ問題で会見」
男女平等の先進地である北欧の議会ならどうか。
「性差別的な発言をすれば、議員のキャリア(経歴)は完全に終わり。
同じ党の議員がすぐに発言者を公にし、メディアが厳しく非難するだろう」
ドイツでもこんなセクハラ野次が起きたら、野次の主は辞職だそうです。
問題の鈴木章浩議員は会派を離脱するだけですし、
自民党もほかの野次の主を特定せず幕引きを図ろうとしています。
お茶を濁す程度の処分だけの日本とは大違いですね。
【今回のセクハラやじ問題について、出席した外国人記者に聞いてみると、ドイツ人記者は「(ドイツでこの発言をしたら、処分を受けますか?)もちろん。ドイツだったら辞職だよ」と話した。】 http://t.co/q4etKpig8q #都議会やじ問題 #FNN
— M.ちゃくそん (@lovemj2010) 2014, 6月 24
「欧米の民主主義国」ばかりではないです。
トルコでもあのようなセクハラ野次はまずありえず、
もし起きたら猛烈な抗議がわき起こるようです。
トルコはEU加盟を見据えていますし、人権問題には結構敏感に
なっているということかもしれないです。
トルコはイスラームだし男尊女卑でしょ、とか言われがちでそんな時はもう何を何処からどう説明したらいいのか困るのですが、少なくとも今話題の都議会野次みたいなのはありえない。多分即時女性議員が大騒ぎして翌朝各団体が行進して昼にはふぃーめんのお姉様方が議事堂前で脱ぐ。
— Ayumi TAKANO (@Ayumi_Turkey) 2014, 6月 18
6月21日の毎日新聞は、結構くわしく外国メディアの報道に触れています。
「都議会ヤジ:女性蔑視、海外に波紋 五輪イメージダウンも」
米CNN(電子版)は「性差別は日本企業では一般的」と報道。
女性の社会進出を経済成長へつなげようとする
安倍政権の「ウィメノミクス」政策に言及しながら、
「依然として男性が社会的地位の大半を占め、高所得を得ている」と
日本社会の現状を批判的に伝えた。
ロイター通信も「女性議員が独身で子供がいないことにヤジ。
批判が噴出」と速報。日本企業の慣例として「女性は結婚・出産後に
退職を勧められることも多く、働く女性はお茶くみなど、
さまつな仕事をさせられる」と労働環境を批判。
共同通信によると、フランス公共ラジオは「日本は職場への女性の進出が
先進国で最も低い国の一つ」と指摘。政府の子育て支援が乏しく、
性差別も根強いため、女性が働きにくいとの見方を示した。
これらはわたしもよくブログで取り上げていることですし、
これをご覧のみなさまも、よくご存知のことが多いと思います。
こうして見ると外国のメディアは、日本のジェンダー問題の事情について
かなりよく知っているのだと、あらためて思うところです。
「専門職と管理職の女性比率」
「男女&雇用形態別年収分布」
「女性の賃金は男性の7割」
「M字カーブは日本と韓国だけ」
「M字カーブ緩和の原因」
「女性の労働力率の推移」
上述の毎日新聞の記事もそうですが、オリンピック開催に関して
イメージダウンになることを懸念している記事もあります。
ところが日本は去年から、国際社会に対して非常識をさらしてばかりでしたし、
こうした事態は予想できただだろうと思います。
いまさら「イメージダウン」と言われても、という気もします。
「都議ヤジ、海外も報道「五輪開催東京に批判押し寄せた」」
NHKの報道ではつぎのコメントが紹介されています。
いやいや、もっと前から「日本は差別がまかり通る国」と
諸外国から思われていることと思いますよ。
「都議会やじ問題 自民都議が発言認める」
20代の男性は「人権侵害もいいところで、ありえない発言だと思う。
日本は礼儀正しさなど海外から尊敬されていた部分もあると思うが、
今回の発言で日本は差別がまかり通る国だ
という印象になってしまったのではないか。
発言した人には、即刻謝罪してほしい」と話していました。
補助ブログの6月28日エントリでも触れましたが、
デンマークの新聞もセクハラ野次のことを取り上げているようです。
これまでの日本の政治家の失言を挙げているのですが、
舛添要一知事のむかしのミソジニー発言も紹介しているのです。
都議会ヤジの件、デンの新聞でも取り上げられていますが、この件だけではなく、現東京都知事の「女性は生理があるから政治家には向かない」発言や以前の閣僚の「産む機械」など数々の失言をあげ、男女平等という点ではまだまだ課題がある、と紹介。
http://t.co/E9Ut8eVX9X
— Kenske L.K (@ken_cph) 2014, 6月 24
都知事の「女は生理のときはノーマルじゃない。そんなときに国政の重要な決定、戦争をやるかどうかなんてことを判断されてはたまらない。」もそのまま引用されてます。
— Kenske L.K (@ken_cph) 2014, 6月 24
デンマーク語のメディアなのであまり拡散はしていないと思います。
それでも舛添要一知事の過去の女性蔑視が、いずれ外国人の
知るところとなる可能性はあるし、そのあかつきには
「都知事もセクハラ野次を投げた人たちとおなじ側ではないか」
と思われて、イメージダウンに輪をかけるかもしれないです。
セクハラに対して日本でイマイチ制動力が働かない原因として、
女性が出産・育児に伴うキャリア断絶のせいで要職に就きづらいという面が大きいでしょう。
セクハラは地位の優位性を背景に行うパワハラの側面を伴うことが多いですし、
女性の少ない集団、女性重役の少ない集団では被害者が孤立を強いられることも多くなるでしょう。
この問題に対しては啓蒙活動といった犬の遠吠えをやるよりは、
保育サービス拡充によって育児と仕事の両立を容易にして
女性のキャリア断絶を防ぐことで、企業や親の教育投資の男女格差解消につながり、
(企業は女性の寿退職を恐れて女性への教育投資に消極的、親は日本社会における女性の出世見込みの低さに対して娘だけ大学浪人を許さないなど教育投資に消極的と考えられる面があり、女性の仕事へのモチベーションを下げてしまいがち)
女性管理職が増えることでセクハラ防止圧力になるという流れを作るのが効果的に思えます。
宗教観の薄い日本では話し合いなどが通じないから力づくでやめさせるという感じになってしまいますが。
こちらにもコメントありがとうございます。
>セクハラヤジについての海外の反応と日本国内の温度差は予想通りですね
ある程度以上、外国の事情を知るようになると、
「いつものこと」となって、すぐにわかるようになってきますね。
最近は外国との温度差を実感させる機会も多いです。
>セクハラに対して日本でイマイチ制動力が働かない原因として、
管理職や要職についている女性がすくないというのは、
セクハラが後を絶たないとか、あるいはセクハラが起きたときの
対処が鈍い原因のひとつだろうと思います。
管理職に女性を増やすのは、セクハラの解決のためにも効果的だと思います。
それでも啓蒙活動は必要だと思いますよ。
なにがセクハラなのかとか、セクハラが起きたらどう対処したらよいか
というのは、それなりに学習しないとわからないことだと思います。
女性でも差別を内面化していて、セクハラに理解がないことがありますから、
単に管理職に女性が増えただけでは、ふじゅうぶんだろうと思います。
啓蒙活動か管理職に女性を増やすのかといった、
二者択一のようにするのはよくないと思います。
「犬の遠吠え」というのは、矮小化のし過ぎだと思いますよ。
啓蒙活動を犬の遠吠えと表現したのは言葉が過ぎました。
ただ、啓蒙活動がなかなか結果として表れにくい点には苛立ちを覚えます。
日本は外国から見てセクハラ問題についてはてこでも動かぬ頑固な国だと見られているでしょう。
日本は宗教観や規範による影響力が弱く、そのぶん力関係による支配の強い社会だと思います。
男女雇用機会均等法にセクハラ防止の法的根拠があっても従来の刑法に違反する要件に
当たらないと処罰されませんし、その場合でも泣き寝入りが多いですからね。
民事訴訟する人はごくわずかでしょう。
今回の都議会セクハラヤジ事件でも加害者の会派離脱で幕引き。
ほとぼりが冷めた頃合いを見計らって元の会派にしれっと合流するという
いつものパターンが目に浮かびます。
実態として野放しに近く、国として恥ずべきことです。
男女差別構造を是正して女性の議員や管理職を増やしてセクハラ防止圧力を強めるのが
日本社会にとっては早道だと思います。
そうなれば啓蒙活動もシナジー効果でぐんと影響力を増すでしょう。
>日本は外国から見てセクハラ問題については
>てこでも動かぬ頑固な国だと見られているでしょう
先日、国連の自由権規約委員会があったのですが、
そのときもセクシャル・ハラスメントの犯罪化はしないのか、
という質疑と勧告がありましたね。
http://taraxacum.seesaa.net/article/403093508.html
日本政府の対応はいつものようにのらりくらりですよ。
いまのままでじゅうぶんだという主旨の返答です。
こういうところで、まじめに立法による規制をしないというのも、
セクハラ対策をはじめ人権尊重一般に対して
不熱心と思われるゆえんだと思います。
>男女雇用機会均等法にセクハラ防止の法的根拠があっても従来の刑法に違反する要件に
>当たらないと処罰されませんし、その場合でも泣き寝入りが多いですからね
セクハラの被害にあった中国人女性が、会社を訴えたお話があるのですが、
まわりの人たちは無理解だし、判決も被告にやたら甘いものなのですよね。
http://taraxacum.seesaa.net/article/383337457.html
日本の場合、性犯罪自体に対する無理解もさることながら、
組織や集団の保身のために、不正の告発をもみ消そうという
圧力が強く働くと思います。
おなじみの日本的な集団主義、同調圧力というもので、
不正の告発は「和を乱す」とされるということですね。
それでセクハラで訴えようとするかたがいてもまわりは冷淡だし、
たいていの日本人はそれを知っているから、泣き寝入りが多いのだと思います。
>今回の都議会セクハラヤジ事件でも加害者の会派離脱で幕引き。
>ほとぼりが冷めた頃合いを見計らって元の会派にしれっと合流するという
「お茶を濁した」という対処のしかたでしたね。
結局名乗りを上げたふたりしか、野次の主はわからなかったですしね。
みんなが忘れたころに、もとの会派におさまろうと考えている
可能性はじゅうぶんありますね。