とても順調に追求がなされたほうだと、わたしは思います。
いつも通りであれば、野次の主がだれなのかも特定されることなく、
なんとなく立ち消えていくところだろうと思うからです。
なぜ追求がうまく進んだかを分析した記事があるのでご紹介します。
簡単に言えば、世論と外国からの批判が大きかったということです。
「ツイッター分析:ヤジ 都議特定を求めたユーザー」(1/2)
「ツイッター分析:ヤジ 都議特定を求めたユーザー」(2/2)
(はてなブックマーク)
「都議会やじ問題/追い詰められ“自白”」
>世論の批判
世論の動向として毎日新聞が、ツイッターで都議会セクハラ野次のことが
どれだけつぶやかれたかを分析しています。

記事に出ているグラフを見ると、ニュースが報じられた18日の夜から
「やじ、ヤジ」や「セクハラ」「都議会」といったことばが増えていて、
ツイッターで多くの人が話題にしたことがわかります。
問題がネットで報じられた18日夜から増え始め、
19日にはツイートした人の2.0%、20日は2.5%が言及した。
「ヤジ(またはやじ)」も連動して急増、20日には2.9%に達した。
「セクハラ」も20日に2.3%と急伸している。
それでも都議会セクハラ野次に関するツイートは、サッカーワールドカップや
STAP細胞、AKB48の話題にくらべるとずっとすくなくなっています。
これらの数字は、STAP問題で理化学研究所のそう考えると比較的小規模の世論で、都議会を動かしたことになります。
小保方晴子・研究ユニットリーダーが記者会見した
4月9日の「小保方」の11.8%や、AKB48のメンバー2人が
岩手県内で襲われた5月25日の「AKB」(10.9%)、
サッカーワールドカップの日本代表初戦(15日)の
「サッカー」(18.5%)「日本代表」(6.1%)に比べると少ない
セクハラ野次の件は、追求に「効率のよさ」があったことになりそうです。
「効率のよさ」の原因として、ひとつは多人数に広まったと分析しています。
1人あたりのツイート数を調べると、多くて数回程度。
特定のユーザーが何度もツイート、リツイートを繰り返すことで
膨張していくことが多い他の社会問題と異なり、多くのユーザーに
ツイートが広がっていることもわかった。
もうひとつは、ツイッターの世論が「野次の主の特定」という問題に
関心が集まって、論調が分散していかなかったことがあります。
今回のヤジ問題の特徴は、「都議会」や「ヤジ」に言及する
ツイッターユーザーの発言が、ヤジの内容への賛否や塩村氏に対する人物評や
好き嫌いなど各方向へ分散せず、ヤジを飛ばした議員の特定を
求めていくという1点に向かっていたことだ。
「犯人探し」は強いモチベーションになるということなのでしょう。
(その意味では、野次を飛ばしたのがだれか特定しないことにした
都議会自民党の対応は失敗だったと言えます。)
ある程度以上まとまった数のネットの世論が一方向に向えば、
社会を動かす大きな力になりえる、ということをしめしたと言えます。
(実際には、ネットにはいろいろな政治的立ち位置の人がいますから、
ネットの世論が一方向に揃うことは、なかなかないのでしょうが。)
>外国からの批判
セクハラ野次の追求に「効率のよさ」があった
もうひとつの原因は、外国メディアからの批判だと思います。
「セクハラ野次・外国の反応」
日本は外圧に弱いとか、とくに欧米からの批判に弱いと言いますが、
日本が外国、とくに欧米のメディアから、人権問題に関して
批判されるのは、最近ではしょっちゅうあることです。
よって都議会セクハラ野次についての外国からの批判は、
とくに「効率のよさ」があったということになるでしょう。
外国からの批判が効果的だった理由のひとつは、
2020年に開かれる予定になっている、東京オリンピックだと思います。
東京オリンピックの開催は賛否両論あると思いますが、
人権問題に関して外国評やグローバルスタンダードを
ある程度は気にするようにする効果はあるのでしょう。
「都議会ヤジ:女性蔑視、海外に波紋 五輪イメージダウンも」
(はてなブックマーク)
もうひとつの、そしておそらくオリンピックよりずっと大きな理由は、
上述のような国内世論と結びついたことだと思います。
いくら外国人が手厳しく批判しても、国内世論が高まらなければ
効果がないのであり、国内世論があるからこそ外国からの批判が
その後押しになる、ということなのだと思います。
外国からの批判があると、それをおもしろくないと思う人は、
あたかも日本国民の意志と反することを
外から押し付けられたかのように言うこともあると思います。
ところが外国からの批判が国内で効果を発揮するのは、
国内に一定数の世論が存在して、それと呼応するときだと言えるでしょう。
つまりそれは国民の意志の反映ということです。
野党会派など議会内の勢力であれば、自民党が手をくだすことはできるし、
国内のメディアも、自民党はそれなりに影響をおよぼせると思います。
ところが世論や外国のメディアは、自民党が直接コントロールできないものです。
都議会セクハラ野次の件は、そうした自民党が直接手を出せないところで
批判が高まったということを、最後に言及しておきたいと思います。