2014年07月13日

toujyouka016.jpg 配偶者控除見直しの記事

1ヶ月近く前の記事ですが、6月19日の朝日新聞に、
配偶者控除廃止についてのインタビュー記事があるのでご紹介します。
廃止の賛成派と反対派の意見を並べたということなのでしょう。

「(成長戦略を問う)配偶者控除の見直し 大沢真知子さん、松田茂樹さんに聞く」
「(成長戦略を問う)配偶者控除の見直し」(全文)
(はてなブックマーク)

 
>大沢真知子氏

記事の右側は「賛成意見」とされるものを紹介しています。
はじめによく言われる「就労調整」のことに触れています。
夫が配偶者控除を受けられるようにするために、妻が年収103万円以下になるよう、
労働時間や賃金をみずから抑制するというものです。

「配偶者控除(2)」

これが非正規雇用全体の賃金を引き下げる原因にも
なっているという指摘があるのですね。
こうした制度は、非正規労働の賃金相場を下げる要因にもなってきた。
一定の収入の範囲内で働くことを女性たちが決めていれば、
事業主側にパートの賃金を上げる動機が生まれにくい。
結果として、主婦のパートは低賃金の労働市場として定着した。

就労調整はいわば労働力の安売りであり、一種のダンピングなのですよね。
ダンピングされている労働力があれば、事業主はすこしでも
安く使える労働力を求めて、そちらを採用しようとします。
これによって、ほかの労働者の労働力も相場を安くしないと、
需要がなくなってくるので、社会全体の労働力に対する賃金を
引き下げることになるということです。

それゆえすべての人の雇用を守るためにも、
同一労働・同一賃金の原則は必要ということになってきます。
配偶者控除の存在は、非正規雇用の多い女性の賃金を低水準に
押しとどめる働きもしていることが考えられ、
いわゆる専業主婦世帯だけの問題ではないことになります。


単純に配偶者控除を廃止にするだけだと、控除が減って
負担が増える家庭が出てくるので、その補償は必要だとしています。
低所得層には(減税と現金給付を組み合わせた)
「給付付き税額控除」の導入も考えてはどうか。
配偶者控除をなくす代わりに子育て世帯への負担を減らす控除を増やしてもいい。

「税額控除」とは所得税率が高いほど、たくさん控除するのではなく、
算出された所得税額から直接差し引くというものです。
これによって所得の高低にかかわらず、控除額がおなじとなり、
低所得ゆえの不利がなくなることになります。
アメリカ合衆国では実際に導入されているものです。

さらに「給付付き税額控除」は税額控除をしてマイナスになったら、
そのマイナス分の額を支給するというものです。
「マイナスの所得税」とでも呼べるものでしょう。
これで所得がすくなくて控除するほどの所得税額にならないかたも、
その不利を回避できるようになります。

「子ども手当と扶養控除--「控除から手当へ」の流れとして」
「給付つき税額控除具体化PT第2回研究会報告」


>松田茂樹氏

記事の左側は「反対意見」とされるものを紹介しています。
はじめに子育て世代の経済的負担の緩和に役立っているから、
配偶者控除は安易に廃止するべきでないというのですが、
そういう考えかたが、20年以上前から議論のある配偶者控除の廃止を
先送りにし続けてきたのではないかと思います。

「子どものいる女性の仕事はパートなどの非正規に偏っており、
いまの日本の子育て世帯の多くは、妻が専業主婦のパートの世帯だからだ」
というのも、配偶者控除の存在がそうした状況を作り出してきた
原因の一端を担っているのだと思います。

これまでフルタイムで共働きする正社員夫婦の世帯を想定し、
保育園や育休、短時間勤務などの両立支援を充実させてきた。
しかし、実際には子育て家庭の多くは、妻が専業主婦やパートの世帯で、
支援策が届かないミスマッチが起きたためだ。
というのも、どういうことなのか、わたしにはよくわからないです。

本来なら多くの女性は妊娠・出産後も正規雇用で安定した仕事を
続けられることを望んでいるのであり、それがかなわないから
非正規雇用や専業主婦となって経済的に負担が大きくなって
子どもが持てなくなる、ということだと思うからです。

現状で専業主婦や非正規雇用の世帯を支援するとなると、
相当に高額な手当てが必要になるのではないかと思います。
保育所や育児休暇の取得は非正規雇用のかたにも必要ですし、
これまではその支援がふじゅうぶんということは、実際にありますが。


それでも「女性の労働時間を抑制している面があり、
手放しでよい制度ともいえない」ともお話していて、
無条件で配偶者控除を維持するのがよいとは考えていないようです。

そして子育て世帯の経済的負担を増やさない配慮が必要としています。
たとえば、子どものいる世帯の所得税を今よりも減らす仕組みや、
子どもの数が増えるほど控除額が増える仕組みを考えてはどうか。
3月18日エントリで紹介した「N分N乗方式」は、この一例になるでしょう。
(かならずしも「N分N乗方式」がよいと言っているのではないが。)



ふたりとも配偶者控除を廃止する際、子育て世代の経済的負担を
なんらかのかたちで緩和する必要があると考えてはいますね。
6月14日エントリで紹介した日経の記事でも、配偶者控除廃止に対する
反発を回避するために、子育て対策の予算を増やすことを挙げていました。

それでもいちばんわかりやすくて効果的である
子ども手当ての見直しには、ぜんぜん言及していないのですよね。
子ども手当ては「失敗に終わった民主党の政策」ということになっているので、
ふたたび検討に値するものではない、ということなのかもしれないです。
新聞社の方針で、子ども手当てのことは思っても
言わないようにしてもらったのかもしれないですね。


ついでながらこの朝日のインタビュー記事は、5月3日エントリや
補助ブログの6月17日エントリでご紹介したサンケイビズの記事とくらべると、
主張したいことがはっきりしていると思います。
単に「反対」と言いたいだけでなく、具体的な対案も考えてあり、
読んでいて意義のあるものだと思います。

「配偶者控除廃止に反対?」
「配偶者控除廃止への反対」

posted by たんぽぽ at 22:43 | Comment(0) | TrackBack(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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