2014年07月25日

toujyouka016.jpg にせ科学を信じる精神構造

アメリカ合衆国のピュー・リサーチ・センターが
なかなかおもしろい調査をしているので、ご紹介したいと思います。

「人は科学的根拠に基づく事実を知ったところで、
信じたくないものは信じない(米研究)」

(はてなブックマーク)

 
タイトルにある通り、いくら科学的な事実や根拠をしめされても、
そんなものにおかまいなく、人は信じたくないものは信じない、
もしくは信じたいものしか信じないということです。
もっとあからさまに言えば、「にせ科学を信じている人には
なにを言っても聞く耳を持たない」ということですね。

これはにせ科学批判を知っているかたでしたら、
だれでも経験的によく知っていることだと思います。
実際ににせ科学の信奉者と議論して、彼らの説得は不可能であることを、
一度や二度は身をもって体験しているからです。
こうした経験則を調査ではっきりしめした、ということですね。

これは自然科学系だけの特有の現象では、もちろんないことですね。
人文科学系や社会科学系の話題についても、
実証的な資料や事実、根拠をいくらたくさんしめしても、
「信じたいものしか信じない」人はいくらでもいるのでした。


「信じたいものしか信じなくなる」モチベーションとして
カラパイアの記事では大きくふたつを挙げています。
ひとつは政治的立ち位置、イデオロギーです。
民主党支持者と共和党支持者とで、地球温暖化を否定する割合が
大きく異なっていることをしめしています。

ピュー・リサーチ・センターの調査によると、アメリカ人の33%が
進化論を信じておらず、26%が地球温暖化を否定しているそうだ。
これらを信じるか信じないかは、個人の信条、宗教や支持する政党によって大きく異なる。
例えば、地球温暖化に関しては、共和党支持者の46%が否定するが、
民主党支持者でこれを否定する人の割合は11%である。

もうひとつは宗教です。
宗教をよりどころとしている人ほど、聖書の記述と相容れない
ダーウィン進化論を否定する傾向が強くなるのでした。

コネチカット州、エール法科大学院の教授、
ダン・カーハン氏率いる研究チームは、信仰心のあつい人とそうでもない人に、
進化論を信じるか?信じないかに関する調査を行った。
次に進化論についての知識に関するテストを行った。

その結果、信仰心のあつい人もそうでもない人も科学的知識に
差がないことがわかった。また、例え正しい知識を持ち合わせていても、
信仰心のあつい人は進化論を否定する傾向が強いこともわかった。


このあたりはもうすこし広く考えて、
「こうあってほしい願望」としてよいと思います。
政治や宗教は信念をともないますから「こうあってほしい願望」も
おのずと持ちやすくなるということです。

「ゲーム脳」を信じている人は、「ゲームはよくないもの」として
否定したい気持ちがあるからでしょう。
「血液型性格診断」を信じたい人には、人間の性格を単純に
わかりたいという動機があるからだと思います。
同性愛を差別したい人は「子どもを作るのが生物の目的」と言うわけです。

「親学」を信じたい人は、過去や伝統に郷愁を感じていて
「伝統的子育て」をすばらしいと思いたいのだろうと思います。
「9.11同時テロ自作自演説」を信じる人は、
アメリカ合衆国に対する強い反感があるのでしょう。
育児を女性に押し付けたい人は「母性本能」を持ち出すわけです。


>「信じたいものしか信じない人」の対処法

「信じたいものしか信じない人」を説得する方法は
まずないと思ってよいです。
(自分で悟ってもらうよりないと思います。)
にせ科学の信奉者とは議論が成り立たないので無視するなどして、
まともに相手にするなと言う人も多いと思います。

「「研究ごっこ」にのめり込んでいる人を見かけたら、どう対処したらよいでしょうか。」

もし掲示板などで「研究ごっこ」を宣伝する書き込みをする人がいた場合は、
相手にせず無視するか、皮肉や当てこすりで軽く笑い飛ばすくらいの
対応にとどめておくのがいいでしょう。

真面目に批判しても、果てしない揚げ足の取り合いに巻き込まれる可能性大です。
ウェブ上で「研究ごっこ」サイトを見つけた時も、直接批判するのは避けて、
某匿名掲示板に紹介するくらいにしておくのが賢明です。
とにかくまともな議論は成り立たない相手ですから、
真っ向から相手にしないことです。


一般に、にせ科学への対処を考えている人は、
にせ科学の信奉者自身を説得することは、考えていないと思います。
次善の策として、どの情報が適切かわからず判断に困っているかたに
理解してもらうことを考えていることが多いです。
こうしたかたは「信じたいものしか信じない」状況ではないので、
適切な情報を示せば、理解する可能性が高いからです。

カラパイアの記事では影響力の強い人が、「とんでも」情報を
拡散することのないようにすることを挙げています。
http://karapaia.livedoor.biz/archives/52167740.html

「それにはまず最初に、政治的、宗教的指導者や発言力を持った著名人が、
間違った情報を拡散するのを減らす必要がある。」カーハン氏はそう語る。

『美味しんぼ』に「福島へ行くと被曝のせいで鼻血が出る」とか
「震災がれきの焼却で健康被害が出る」といったお話が載ったとき、
これを批判する理由はここにあるということです。
作者の雁屋哲氏は、まさに「発言力を持った著名人」ですからね。

「美味しんぼの鼻血表現」
「美味しんぼのがれき表現」

いずれの場合も「信者になっちゃった人は手がつけられないので、
まわりへの拡散を防いで、これ以上信者を増やさないようにする」
ということになると思います。


選択的夫婦別姓の反対派(非共存派)も、
「信じたいものしか信じない」人の典型ですね。
それゆえ非共存派の説得は無理と、わたしは再三述べることになります。
ここで「とんでも」の信奉者が政治的な決定権を持つ場合、
どうしたらよいかという問題が出てくることになります。

彼らもまた説得不能ですから、民法改正の実現のためには、
政治的な決定権を取り上げるよりないことになります。
具体的には、非共存派議員を落選させるしかないし、
反対を公約にしている政党を下野させるしかないということです。

「反対派と議論すると...」
「自民党法務部会の実態」


南京事件や従軍慰安婦の否定派や、憎悪表現をくりかえす排外主義者
(在日外国人に対する虚構の主張にもとづいている)など、
政治的にきわめて危険性が高い「にせ科学」はさらにやっかいです。
彼らもまた説得不能ですが、それにもかかわらず
禁止する必要性に強く迫られるからです。

彼らに「とんでも」な主張をやめてもらうには、
罰則を与えるといった強制力を加えるよりないと言えます。
ゆえに歴史修正主義や憎悪表現を法律で規制するというのは、
一定の妥当性があることになります。
そしてそれは多くの国で実際に採用されているわけです。

posted by たんぽぽ at 23:35 | Comment(3) | TrackBack(0) | 疑似科学(にせ科学) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
「ジャジー」氏のコメントを削除しました。
http://lacrima09.web.fc2.com/figs/20140728.html

「ジャジー」氏にはまた抗議が来ています。
これ以上のコメントはなさらないでください。
http://taraxacum.seesaa.net/article/402686542.html#comment
(2014年07月27日 23:48)
Posted by たんぽぽ at 2014年07月28日 19:09
質問なのですが、宗教や幽霊といったものは
ニセ科学に入るのでしょうか?
Posted by m13 at 2015年05月03日 16:17
m13さま、コメントありがとうございます。

にせ科学とは「科学と称しているが、科学でないもの」です。
宗教や幽霊は「科学」と称さなければ、にせ科学ではないです。
Posted by たんぽぽ at 2015年05月03日 21:54
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