国連の委員会の審査に対する日本政府の対応は、いつもいつも
あらかじめ決められた「官僚答弁」を、繰り返すだけなのですよね。
勧告にしたがって国内状況を改善する意識にとぼしいのでした。
「「人権後進国」日本 言葉が通じない国として国連でバカにされている」
今回の自由権規約委員会の日本審査でもおなじようだったのでした。
つぎの菅義偉官房長官のコメントにも、それが現れているだろうと思います。
「国連勧告「理解されず残念」=菅官房長官」
記事は短いので全文引用します。
菅義偉官房長官は25日の記者会見で、国連人権規約委員会が
日本政府に対してヘイトスピーチ(憎悪表現)を禁じ、処罰するよう
勧告したことについて「慰安婦問題をはじめ、わが国の基本的立場や取り組みが
十分に理解されなかったことは非常に残念だ」と述べた。
勧告に法的拘束力はないが、今後の対応については
「関係省庁と内容を十分検討した上で、適切に検討したい」と語った。
「日本の立場が国連自由権委員会に理解されなかった」
という主旨のことを言っていますね。
そうではなくて、日本政府が国連委員会の勧告を理解する場所なのですよ。
「理解してもらう」立場にあるのは日本政府です。
日本政府のとりわけ深刻なことは、国連の委員会の審査は
「日本の立場をわかってもらう」などと言って、
現状維持を「言いわけ」する場所だと思っていそうなことです。
委員会の勧告にしたがって国内の人権状況を改善する必要があるという
本来の主旨を理解していないのではないかと思います。
「なにをなすべきか」がわかっていないのでしょう。
ほかの国ぐには、国連の委員会の審査の主旨を適切に理解しています。
よって勧告にしたがって国内の人権状況を改善することに積極的です。
国連自由権規約の勧告について。「日本政府はあまり尊重しないけど、他の国はどうなの?」とNGOの方々に聞いたら、同じ時期に審査されていた韓国やモンゴルやアイスランドなど、どこの国も非常に積極的に受け入れる姿勢を見せていて、「日本政府はかなり特殊」とのこと。(続く)
— 白石草 (@hamemen) 2014年7月25日
ノルウエーなどは、すでに人権状況が非常に進んでいるにも関わらず、自ら進んでもっともっと何か指摘して欲しいと求めて行くのだという。国連の人権委員会を、対話の場と考えて、自国の人権状況を積極的に改善している国がある一方で、日本はひたすら守りに入っているとのこと。
— 白石草 (@hamemen) 2014年7月25日
ノルウェーにいたっては、みずから課題を作ってもらおうというくらいです。
もともと人権状況が良好で、あまり問題のすくない国だからこそ、
かえってさらなる改善を求めようとする意識があるという、
日本の状況を比較するといささか皮肉なことになっているのでしょう。
韓国やモンゴルも積極的に国内の人権状況の改善をしています。
なので「人権思想は欧米のものだからアジアの国には合わない」
ということではないことはあきらかですね。
日本が国連の勧告に対していつまでもていたらくで、
韓国がふつうの国並みに熱心であれば、いずれ韓国が日本の人権水準を
追い越すようになるかもしれないです。
日本側がよく使う自己正当化の言いわけが
国連の勧告には「法的拘束力はない」というものです。
法的拘束力がない理由のひとつは、内政干渉を防ぐためと考えられます。
国際条約や国際法は、各国の国内法より優先するので、
国内政治を尊重するために拘束を強くしすぎないということです。
もうひとつは、どこの国も基本的人権の尊重を人類普遍の価値として、
人権状況の改善にみずから積極的になると、考えているからだろうと思います。
法的拘束力がなくても、どこの国も国連の勧告は
自主的に守るはずだと、考えているということです。
日本のように勧告をほとんど聞き流して、人権状況の改善を放置する
ていたらくな国は存在しない前提なのだろうと思います。
「法的拘束力はない」のは、放置を続けてもよい
言いわけのためにあるのではないということです。
付記:
最初にリンクした記事の見出しに「国連でバカにされている」
とありますが、実際にはバカにされていないのではないかと思います。
外国人はそこまで非情ではないと思うからです。
日本政府代表とはお話が噛み合ないので、
質疑をしていていらいらする国連の委員はいるだろうと思います。
「「人権後進国」日本 言葉が通じない国として国連でバカにされている」
文章中には「「日本政府は条約に法的拘束力があることが
わかっているのか」とまで言われているにもかかわらず」ともあります。
条約に法的拘束力がないこと自体は間違いではないので、
実際にはこれと同文のことを言われたのではないだろうと思います。
お久しぶりです。国際条約に建前上法的拘束力はありますよ。ただ違反を罰する有効な国際機関に乏しいだけです。法的には遵守の優先順位は国内憲法、国際条約、国内一般法というのが国際的理解だと思います。
このエントリにコメントありがとうございます。
>国際条約に建前上法的拘束力はありますよ。
>ただ違反を罰する有効な国際機関に乏しいだけです。
情報まことにありがとうございます。
「締結国は尊守する義務がある」という主旨のことがあるので、
これが建前上の「法的拘束力」ということになるのかしら?
実効的な罰則はないのですよね。
これが実質的に条約を放置できるようにしているわけですが。
>法的には遵守の優先順位は国内憲法、国際条約、国内一般法というのが
>国際的理解だと思います
上位法、下位法の関係は、国際条約>国内憲法>国内一般法、
と思ったのですが、遵守の優先順位はこれとはべつで、
国際条約よりも国内憲法をより強く守れということなのかしら?