2014年08月10日

toujyouka016.jpg 家事ハラスメントのメモ(2)

前のエントリでお話した「家事ハラスメント」ですが、
旭化成ホームズのウェブサイトより前に、まったくべつの意味で
このことばを作って使っているかたがいらしたのでした。
それでことはさらにやっかいかつ深刻になるということです。

最初に使われたのは『家事労働ハラスメント 生きづらさの根にあるもの』
(竹信三恵子著、岩波新書)という著書の中です。

「家事労働ハラスメント-生きづらさの根にあるもの」

 
25934192_1.jpg

ここでの「家事ハラスメント」の意味はつぎのようです。
https://twitter.com/heboya/status/488984194446393344
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「日本社会では、家事労働は無視され、時に蔑視され、これを担った人々は、
十分に外で働けないため、経済力や発言力を奪われがちな状態が続いています。
これが、「家事労働ハラスメント」です」
https://www.iwanami.co.jp/hensyu/sin/sin_kkn/kkn1310/sin_k732.html
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家庭内の無償労働が「女の仕事」とされ、家庭内に閉じ込められた妻が
経済力や発言力を持てなくなるという、まさにわたしが前のエントリで
お話したことを「ハラスメント」として問題提起しています。
そしてこのような社会構造上の力関係によって家事労働が
「ない」ことにされたり、軽視されたりすることを問題にしているのでした。

こうした状況を改善する方法として著書では、
1. 企業の労働時間短縮
2. 行政の社会サービスの充実
3. 労働時間の短縮による男性の家事分担
によって家事労働を再分担することを提案しています。

ようするに、わたしがこのブログでよくお話するようなことで、
本来はきわめてまともな問題提起として、
「家事ハラスメント」ということばが使われたということです。


「家事ハラスメント」ということばを導入した竹信三恵子氏は、
旭化成ホームズにウェブサイトの件で抗議と要請を出すことになります。
ことばの意味を勝手に変えて、自分の問題提起自体を
もみ消すようなことをするのは、とうてい許せないということです。

「「妻の家事ハラ」実態調査についての抗議・要請書」

わたしたちとしても、女性に家事労働の負担が大きくかぶさるという
現実の大きな問題をせっかく告発してくれたのに、
それがもみ消されてしまっては、かなわないというものです。

著者が旭化成のサイトによってこうむった実害として、以下のことを挙げています
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1. 御社のような大手企業の大量宣伝を通じて「家事ハラ」の意味が
本来のものと全く逆のものとして社会に流布し、
著書のイメージが完全に破壊されたこと

2. メッセージを届けようと想定していた読者層が
この言葉に嫌悪感を抱くようになり、著書の普及が大きく阻害されかねないこと。

3. 人々が気づいていなかった現象に新しい名前
(たとえば、セクハラやDVなど)をつけることで、
その問題点を見えるものにするという社会改革の試みが、
勝手な言葉の再定義によって頓挫させられようとしていること。
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そしてつぎの5つのことを、旭化成に対して要請しています。
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1. 中央線などに旭化成ホームズが張り出した車内広告のすべてに、
家事ハラの本来の定義と本のPRを盛り込んだステッカーを目立つように張り込むこと。
2. 同社ホームページに、家事ハラの本来の定義などを目立つように掲載すること。
3. 正しい家事ハラの意味を伝える再現ムービーを制作し、
これもホームページで公開すること
4. 謝罪文の提出
5. なぜこのような誤用が生まれたのかについての事実経過の文書による提出
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旭化成は著者竹信三恵子氏の抗議・要請を、まがりなりにも受け入れたようです。
つぎのような回答があり、それなりの対処をすることになりました。

「「妻の家事ハラ」実態調査についての抗議・要請書への回答が届きました!」

旭化成ホームズのサイトも竹信三恵子氏の著書
『家事労働ハラスメント』についての記載を真ん中に挿入して、
「家事ハラスメント」ということばを
「本来」とは違った意味で使っていることを断わっています。

「妻の家事ハラ白書」(8月4日現在)

posted by たんぽぽ at 21:36 | Comment(0) | TrackBack(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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