2014年08月16日

toujyouka016.jpg 家事ハラスメントのメモ(3)

8月10日のふたつのエントリでお話した「家事ハラスメント」の続き。

「家事ハラスメントのメモ」
「家事ハラスメントのメモ(2)」

旭化成ホームズのサイトで「家事ハラスメント」ということばを、
竹信三恵子氏の著書の『家事労働ハラスメント』とは
まったく違った意味で使っていて、竹信三恵子氏の問題提起自体を
もみ消すようなことになっていたのでした。

 
なぜそんなことになったのかですが、つぎのエントリにいきさつが出ています。

「「家事ハラ」、キーワード誤用した企業は原著者に謝罪。真の問題は?」
(はてなブックマーク)

発端になったのは、8月10日エントリでもすこし触れた、
旭化成ホームズによる調査報告書です。
この報告書自体はいたってまともな、よくできたものです。
なんら問題がないものとなっています。

「いまどき30代夫の家事参加の実態と意識」


報告書の54ページに「妻のダメ出し」で家事をやる
モチベーションが下がる夫についての記述があります。
問題の広告ウェブサイトは、ここに反応したということのようです。
報告書全体から見ればごく一部を占めるだけの箇所なのですが、
ここをあえて強調することで、もとの報告書の主旨からは
いちじるしく偏った印象を与えるものを作ったということです。

========
54〜56ページには「もっと家事を手伝いたい」と思いつつ
「妻のダメ出し」を受けてモチベーションが落ちる
「チョイカジパパ」に関する解説がありました。

この部分、つまり報告書全体の3%程度にすぎない記述を、
全体の文脈を無視して取り出したのが「妻の家事ハラ」と
名付けられた広告宣伝だったのです。
ちなみに報告書本文には「家事ハラ」というフレーズは全く出てきません。
========

こんな恣意的な切り取りとしか言いようのない広告を
作ったのはだれなのか、という問題があります。
推測の域を出ないですが、インパクトを狙ったマーケティングや広報、
広告代理店かもしれないと、記事では考えています。

これによって「家事ハラスメント」ということばを作った
竹信三恵子氏だけでなく、旭化成の報告書を作ったかたたちの成果も
台無しにすることになった、ということになるでしょう。


つぎに恣意的な切り取りをしたのはなぜか?という問題があります。
わたしの推測で、ひとつ考えていることをお話しておきます。
それは「ていよく女のせいにしたかった」ということではないかと思います。

男というのは批判されるとその批判と向き合わず、
女が悪いことにして、責任逃れをしようとする人がときどきいるからです。
よくある例として、マザコン男が批判されていても、
男たちの中には「そのように育てた母親が悪い」と言って、
女性に責任転嫁する人たちが、すくなからずいるのですよね。

広告ウェブサイトを作った人たちも、男たちは家事をやらないと
批判されるのがおもしろくなかったのかもしれないです。
それで「家事のやりかたにダメ出しをする妻のせいだ」ということにして、
女に責任転嫁しようとでも思ったのかもしれないです。

posted by たんぽぽ at 14:11 | Comment(6) | TrackBack(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
何よりも、、、調査報告書の細かさとボリュームに感心してしまいました。
私も家事ハラしてるなあ、って思いました。ごめんなさい。でも張本人としてはたいしたことないんですけど。しかし相方の成長のため、そして、私もうまいものが食いたい、と色々指摘します。でも頑固なのでいうことを聴きません。
ま、30代でないですし、家事ハラのレベルが違うと(もっと高レベル)思いますので、まあ関係ないっていうか、いいんですけどね(笑)。
Posted by うがんざき at 2014年08月19日 01:08
ヨコからすみません。
うがんざきさん、そういった「家事ハラという言葉の誤用」をしないことも大事ではないかな、と思いました。旭化成ホームズの定義が廃れるとよいのですが…
Posted by 名無し at 2014年08月19日 16:17
このエントリにコメントありがとうございます。

>調査報告書の細かさとボリュームに感心してしまいました

しっかりしたものを作ってますよね。
そこへもってきて、あの広告ウェブサイトというのは、
報告書を作ったかたの苦労をすっかり踏みにじっていると思います。


>私も家事ハラしてるなあ、って思いました。ごめんなさい

その「家事ハラ」は旭化成の広告ウェブサイトの意味ですね。
竹信三恵子氏によるもともとの意味ではないですね。

どの程度かわからないけれど、
それはそれでまあいいのではないかと、わたしは思いますよ、たぶん。
現在ある家事分担のジェンダーについての非対称性を考えると、
ある程度はやむを得ないことだと思うので。
(なんて事情がわからないので無責任かな?)

>しかし相方の成長のため、そして、私もうまいものが食いたい、と色々指摘します

がんばってくださいね。
Posted by たんぽぽ at 2014年08月19日 22:30
名無しさま、コメントありがとうございます。

わたしもそれは思ったです。
旭化成の広告ウェブサイトの意味で使うのは好ましくないですね。
わたしは「家事ハラスメント」ということばは、
もっぱら竹信三恵子氏の著作の意味で使うようにしています。

あとできましたら、ハンドルは不特定多数を連想させるものはなく、
ユニークな個性を感じられるものでお願いしたいと思います。
Posted by たんぽぽ at 2014年08月19日 22:31
ごめんなさい、
ここの主旨としては、素晴らしい調査報告書なのに、キャッチ的に家事ハラという安易な言葉でPRしてしまったいること、および、家事ハラという言葉が元祖と違う誤用をしてること、なので、チャチャを入れてしまったようで、申し訳ないです。書いた後ちょっと気になっていたところ、言葉としては前者を使ってほしい、という、コメントを拝見し、大変失礼いたしましたという思います。

しかし私は後者も使いたい。

竹信氏の家事ハラがどの程度普及しているかというと、そう大きくないと思いますし、私には後発の言葉の方が実は馴染みます。
〇〇ハラというとき、〇〇の部分が被害者なのか加害者なのか、という取り方の違いかな。
ただし妻が夫にする家事ハラ(後発)が、それを女性の立場を追い込むものでも、男子の被害を訴えるものでもなく、本当にハラスメントにはなりえず一笑に付すものと思います。やはりマーケティング的にcatchyなだけですね。

へーベルハウスのすまいの提案も動画広告も、私はとても面白いと思っています。世の中こんなダメな男ばかりでは困るのですが、亭主関白な男は、このダメな男ですら見習ってほしいと思うぐらい、一歩踏み出した新しいすまいのあり方の提案と思ってます。
調査でも、家事ハラ(後発)をしてる夫婦ほど、言いたいことが言えて仲のいい夫婦だそうです。

なので、いくつかの他の記事で批判のあった、共働き妻に対して攻撃的だ、というのは、実は私はまったく感じませんでした。たぶん、私が家事ハラ(後発)する側の人間だからです。痛快に感じました、それは長年のルサンチマンかもしれない。
家事ハラ(元祖)されてる妻側にとっては、とても抑圧的に感じるものかもしれません。

私は竹信氏の著書を読んだわけではないので無責任に言ってる部分があるわけですが、無償労働の問題は別のところにあると思います。
アカデミックな言葉が、軽いマーケティングのノリで変化していることを危惧する向きがあるのはわかります。
しかし、このヘーベルハウスの取り組みが壊されないことを祈ってます。

たんぽぽさん、非常に考えさせられる記事のエントリーをありがとうございました。
Posted by うがんざき at 2014年08月23日 08:25
またまたコメントありがとうございます。

>ごめんなさい、
>大変失礼いたしましたという思います。

ああ、いえいえ、お気になさらずに。
なんて、わたしが言うのも妙ですが。

>しかし私は後者も使いたい。
>竹信氏の家事ハラがどの程度普及しているかというと、

旭化成ホームズの広告ウェブサイトを見て、
「家事ハラ」ということばを知ったかたが、
竹信三恵子氏の著作を見て、内容を曲解する可能性はあると思います。
広告ウェブサイトが報告書の内容を歪曲しているのも事実ですし、
竹信三恵子氏が抗議するのは、ごもっともだと思います。

「家事ハラ」ということばを使うときは、
旭化成のサイトの意味か、竹信三恵子氏の著作の意味か、
はっきりさせる必要はあるでしょうね。


>亭主関白な男は、このダメな男ですら見習ってほしいと思うぐらい、

そうなのですよね。
広告ウェブサイトに出てくる「ダメな男」レベルにも
いたらない男も、まだまだすくなくないのですよね。

>調査でも、家事ハラ(後発)をしてる夫婦ほど、
>言いたいことが言えて仲のいい夫婦だそうです

たしかにそうかもしれないですね。
仲が悪ければ、夫が不愉快になることは言えないでしょうから。

>たぶん、私が家事ハラ(後発)する側の人間だからです。
>痛快に感じました、それは長年のルサンチマンかもしれない

なるほど。そういう感じかたのかたもいるのね。


>たんぽぽさん、非常に考えさせられる記事のエントリーをありがとうございました

いえいえ。
このエントリに興味を持って、コメントをくださり、
こちらこそありがとうございます。
Posted by たんぽぽ at 2014年08月24日 18:26
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