わたしがこれまで何度もお話してきたことです。
「少子化対策・過去の愚策と無策」
二十年くらい前に書かれた本を読んだら「少子化ヤバイ。日本は異常。いい加減時代かわったし、北欧にならって家事を夫婦で分担したり、社畜やめないと詰む」と今とまったく変わらないことが書いてあって絶望。二十年後も同じ事言ってそうだよな…
— きつり (@kizury) 2014, 8月 11
少子化問題なんて20年以上前から言われていたのですよね。
その20年前の議論が、そのまま現在でも当てはまるから嫌になってきます。
20年間、日本社会は少子化に対して、ほとんどなにも効果的なことを
してこなかったことを、とてもよくしめしていると思います。
原因のひとつは、少子化社会に対する危機感がないことですね。
2040年にはすべての都道府県で人口が減少するという推計を見て、
世間さまがおどろいたのが去年、2013年のお話です。
こんなのはずっと前から容易に予想できたことなのに、
なにをいまさらのように驚くのかというのが、わたしの感想です。
「少子化に無関心な世間」
効果的な少子化対策というのは、女性の権利の尊重や保障とか、
女性の暮らしの改善に関係することが多いです。
ところが世間さまの多くは、少子化社会なんて本当に
危機的かどうかわからないし、そんなことのために
女の権利を認めてやるくらいなら、男性優位の現状に
安逸していたほうがましとでも思っているのかもしれないです。
それどころか積極的に女性の権利を認めることに
反対してきた人たちも、すくなくなかったのでした。
彼らは5年前は子ども手当てや高校無償化を攻撃していました。
10年前はジェンダーフリー・バッシングをやっていました。
15年前は林道義の本をもてはやしていました。
夫婦別姓にも15年前からずっとして反対してきたのでした。
「少子化対策・過去の愚策」
女性の労働力率と出生率とのあいだの正の相関という
OECD統計も、彼らは否定することに一生懸命でした。
ヨーロッパで出生率が上がったのは、移民を受け入れたためであって、
女性の労働力率は関係ないと、力説する人たちもいました。
女性の権利が認められるスウェーデンでは、離婚や少年犯罪が
増えているといった、デマをばらまくことにも必死でした。
@konarits 「婚学」や「女子力コンテスト」が求める男女の性別役割分担の固定化(「男性は外で働く/女性は家を守る」)は、結果的に少子化を推し進めるものです。
— Atsuko TAMADA (@atsukotamada) 2013年11月21日
「女性の労働参加率」と「出生率」が比例するというデータもあります。 pic.twitter.com/KJB760Rmda
彼らは女性の権利と少子化とが、いかに関係ないかを
「証明」することに血道を上げていたということです。
それによって効果的とされる少子化対策に、ことごとく反対してきたのでした。
いまから5年くらい前、「団塊ジュニアが出産適齢期の
上限に達しているから、いまが少子化対策を行なって
人口が回復する最後の機会だ」と言われていました。
このときも効果的な対策は、ほとんどなされずに終わることになりました。
2012年の暮れに政権が自民党となりましたが、
なぜかきゅうに少子化対策とか「女性の活用」とか
しきりに口にするようになったのでした。
政府が主催する「少子化危機突破タスクフォース」は、
「ゆっくり議論をしている暇はない」とやたらあせっているようです。
森まさこ少子化担当大臣「この少子化タスクフォースだが、第二期は昨年8月から始まった。少子化の現状は深刻。ゆっくり議論している暇もない。そのくらい切羽詰まったものだ。走りながら実現したい。だから、審議会ではなく、タスクフォースという名前にした」 #少子化TF
— 駒崎弘樹@障害児を支援したい看護師募集中 (@Hiroki_Komazaki) 2014年7月9日
ところがそれはまさに、過去20年間におよぶ愚策や無策の
「つけ」が回ってきているのですよね。
しかもその愚策や無策を主導したのが、自民党や日本会議、
とくに安倍首相とその周辺というのが皮肉です。
いまのところ、過去の愚策や無策を顧みるむきはないですね。
配偶者控除の廃止の代わりとして、子育て世代への支援という
議論があるけれど、子ども手当てのことは言わないです。
過去を後悔したくなってこない程度には、
「まだまだ余裕があるつもりでいる」ということなのでしょう。
今後日本を確実にほろぼすものがあるとしたら、
中国の脅威でもなく、アメリカの脅威でもなく、
集団的自衛権でもなく、原子力発電所でもなく、
慰安婦問題でもなく、少子高齢化だとわたしは思いますよ。
わたしは現時点で、日本社会は片足に棺桶を突っ込んでいると思います。
ところがいまだ少子化への危機感が
じゅうぶん理解されているとは思えないし、
効果的な対策がなされる様子もあまり見られないです。
「2050年には少子高齢化で日本は世界一悲惨な国になる」という、
『エコノミスト』の予想はこの調子でいけば、
かなりの確率で当たりそうだと、わたしは見ていますよ。
「2050年の世界一悲惨な国」
ロシアは国力の低下が激しく、お金や人が外国に流出して、
さらなる国力の低下を招くようになっています。
将来は日本が現在のロシアのようになるかもしれないです。
「ロシアの凋落と日本の未来」
「選択する未来」委員会の人口予測も、
人口流出の可能性までは顧慮していないのですよね。
ところがこのままいけば、女性をメインに
外国へ移住するかたが出てくるかもしれないです。
ただでさえ少子化で人口減少に苦しんでいるところへ、
人口流出でさらに追い打ちがかかるということです。
この狂った国で一生を終えたくなかったら、一刻も早く逃げ出す準備を始めたほうがいい。すなわち外国語を覚え、世界で通用するスキルを身につけ、みんなが遊んでいるときにせっせと貯金し、移住可能な国を探す。同調圧力の強い社会でこれをやるのは大変なことだが、私はやって本当によかった。
— divayoshiko (@divayoshiko) 2014年9月21日
「選択する未来」委員会というネーミングを見たとき、
これまでずっと無策と愚策を選択してきたのに、
いまさら「選択する」なんて言われてもねと、
わたしはちょっと思ったのですよね。
それでも、「選択」という表現を使うことで、
少子化は「運命」ではなく「意志」の問題であることを、
はっきりしめしたのはよかったと思います。
2050年に世界一悲惨な国になるという予想が当たったとしても、
それは日本国民がみずから選びとった結果ということです。