2014年11月02日

toujyouka016.jpg WLBと女性管理職の割合

ワークライフバランス(WLB)と日本の企業体質について、
なかなか興味深い記事があるのでご紹介したいと思います。
タイトルがしばし衝撃的ですが、日本では女性管理職の割合が
低い理由についても触れられています。

「日本の女性活用の「不都合すぎる真実」
衝撃! 女性の出世には「長時間労働が必須」だった」

(はてなブックマーク)

 
日本は女性の管理職の割合が低いことは、統計がしめすことです。

「専門職と管理職の女性比率」


そしてそれは「日本的」な労働に原因があるということです。
記事の3ページ目から、それが書かれています。

http://toyokeizai.net/articles/-/49529?page=3
長時間労働をした女性しか、出世できていない!

男女で比較してみると、管理職要件に長時間労働がかかわる度合いは
女性のほうが男性より高いのです。残業できない雇用者は、
そのほとんどが女性ですが、最初から一般職など
管理職昇進機会の極めて少ない職に就けてしまうからです。


端的に言えば、旧来の「男社会」の中で男性と同様に
長時間労働できる女性だけが、昇進の道があるということだと思います。
すくなくない日本企業は、いまだに雇用者に女性がいることが
前提となっておらず、女性が男性の働きかたに
合わせるものと考えているのでしょう。
一種の「女性の男性化」だと言えます。

家庭と仕事を両立させるワークライフバランスという概念は、
旧来の「男社会」の労働スタイルにはないものです。
よって昇進の機会がある女性というのは、
ワークライフバランスの必要のない
(あるいは断念した)人ばかりになります。

かくして家庭と仕事を両立させる必要のある女性は、
一般職など昇進の機会のすくない雇用に回されることになります。
それゆえ管理職になれる女性はそれ以外の人になり、
女性の管理職比率が低くなるということです。


記事中にリンクしている記事に、このあたりがくわしく書いてあります。
子どもがいる女性は管理職比率が下がる
傾向があることが、それを裏付けていると言えます。

「ホワイトカラー正社員の管理職割合の男女格差の決定要因--
女性であることの不当な社会的不利益と、その解消施策について」

長時間労働は男性より女性にとってむしろ管理職要件と
なっていると考えられること、年齢が同じでも有配偶男性は
最終子の年齢により管理職割合は増え女性は逆に減る傾向があり、
企業による夫婦の伝統的役割分業の押しつけが
管理職割合に反映されていること、

ほかにつぎのような理由を挙げています。
現在の勤め先への勤続年数が同じでも高卒男性に比べ
大卒女性の管理職割合は遙かに劣り、性別という生まれの属性が
教育達成より重んじられる、わが国の「前近代的」人材登用慣行が
真の問題であることを示す。

女性の大学卒の賃金は、男性の中学卒の賃金とおなじくらい、
というグラフを連想させられます。
かかる賃金格差にも同様の原因がありそうです。

「学歴別年収のジェンダー差」



日本で女性の管理職がすくない理由として、妊娠や出産にともなう
離職が多いため、勤続年数が短くなることがよく言われます。
それは理由のひとつではあるのはたしかなのですが、
メインの要素でもないみたいですね。
むしろ上述の「女性の男性化」を前提とした、
ワークライフバランスの不徹底のほうが大きいみたいです。
女性の離職率の高さなど「女性管理職者がいない・少ない主な理由」は、
原因の1つではあっても客観的には主な理由ではなく、

ワークライフバランスの達成度が高い企業は
男女の格差が小さくなっていること、さらに女性の離職を減らせれば、
もっと格差が小さくなるという指摘があります。
ワークライフバランス達成への組織的取り組みのある
企業や正社員1000人以上の企業は男女格差が少なく、
その格差削減の度合いは女性の離職率が減ればさらに大きくなることなどを示す。


はじめの記事の4ページ目に、このような状況を
どうやったら改善できるか、具体策をひとつ紹介しています。
女性の登用度や残業時間度を可視化することです。
生産性の悪い企業に仕事を頼みたいとは、あまり思わないでしょうから、
これは解決策として効果があることが予想されます。

http://toyokeizai.net/articles/-/49529?page=4
ひとつわかりやすいのは、女性の登用度や残業時間度の「見える化」です。
たとえば政府にできるのは、上場企業にこれを
義務化させることなどが考えられます。

労働時間当たりの売上高や利益を見たら、女性の人材活用の
進んでいない企業や、ホワイトカラーの長時間労働に頼る企業は、
そうでない同業種の企業に比べ時間当たりの生産性が
低いことが明示的になるはずです。


この10月9日の東洋経済の記事は、著者が治部れんげ氏、
シカゴ大学社会科学部の山口一男教授にインタビューしています。
この分野には長く取り組んでこられたかたがたです。
ちょっとレベルが高い記事だと思ったのですが、納得です。

posted by たんぽぽ at 21:08 | Comment(3) | TrackBack(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
たんぽぽさん。貴女のブログには海外IPからのコメントができないためお礼が遅れましたが(そちらの設定を変えれば出来ると思います)、私の記事を紹介くださりありがとう。治部れんげさんがインタビューを上手にまとめてくださいました。たんぽぽさんの記事読み続けています。最近では「終戦直後の感覚に帰れ?」で、統計データをもとにきちんと論駁されているのが良かったです。また「吉田証言に触れていない」では、武井彩佳先生のαシノドスの論考に言及されていたのも良かったです.アクセス数が下がっているとのことですが、読み続けている人も多いと思いますよ。山口一男

Posted by 山口一男 at 2014年12月09日 12:39
山口一男さま、いらっしゃいませ。
おひさしぶりです。コメントありがとうございます。

>貴女のブログには海外IPからのコメントができないためお礼が遅れましたが

大変ご不便をおかけして、まことにもうしわけないです。
大切なお客さまを締め出すなんて、とんでもないことをしていました。
スパムがたくさん来るので、ばんばんIP規制をしたのですが、
その中に引っかかったのではないかと思います。

禁止IPを全部解除しました。
これでおそらく投稿できると思います。
投稿できない場合は、シーサーで禁止IPを設定している可能性があり、
これはわたしのほうでは対処できないです。


>私の記事を紹介くださりありがとう。
>治部れんげさんがインタビューを上手にまとめてくださいました

いえいえ、こちらこそ、わたしのエントリが
つたない解説になってしまわないかと心配していました。
ご評価くださりありがとうございます。

>「終戦直後の感覚に帰れ?」で、
>「吉田証言に触れていない」では、

ほかのエントリもご覧くださり、評価もしてくださって
まことにありがとうございます。
いっしょうけんめい書いた甲斐がありました。
http://taraxacum.seesaa.net/article/407406699.html
http://taraxacum.seesaa.net/article/407726309.html
http://taraxacum.seesaa.net/article/408126517.html


>アクセス数が下がっているとのことですが、読み続けている人も多いと思いますよ

アクセス数の心配までしてくださり、ありがとうございます。
今回いただいたコメントを励みにがんばりたいと思います。
Posted by たんぽぽ at 2014年12月09日 22:04
山口一男さま

コメントの「禁止設定」に、「国外IPのコメント投稿」があって、
それが「許可しない」になっていたことがわかりました。
これを「許可する」に変更しました。
こちらのエントリでくわしく書いていますので、ご覧いただきたく思います。
http://taraxacum.seesaa.net/article/410645212.html

前のコメントで
>これでおそらく投稿できると思います。
>投稿できない場合は、シーサーで禁止IPを設定している可能性があり、
>これはわたしのほうでは対処できないです。
と、わたしは書いていましたが、まだ投稿できなかったと思います。
そしてシーサーの側で特定の外国IPを禁止しているのではなく、
わたしのほうで対処できることでした。

ずっと締め出し続けてご不便をおかけ続けて、
重ねがさねまことにもうしわけないです。
あらためておわびもうしあげます。


まだコメントできない場合の、わたしへの連絡方法ですが、
1. 拍手ボタンでコメントする(記事右下の黄緑のボタン)
2. 補助ブログのどこかのエントリにコメントをくださる
http://lacrima09.blog.shinobi.jp/
3. メールで連絡をくださる
http://form1.fc2.com/form/?id=521951
といった方法があると思います。

お手数をおかけしてまことに恐縮ですが、よろしくお願いいたします。
Posted by たんぽぽ at 2014年12月14日 20:48
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