『東洋経済』の夫婦別姓の記事ですが、
2ページ目にある以下の指摘は重要だと思います。
現行民法は成立した当時はとても進歩的だったということです。
http://toyokeizai.net/articles/-/51426?page=2
当時は進歩的だった日本の夫婦同姓制度
1947年という早い時期に、このように妻の姓を名乗ることも
可能とする法制度があった国はほとんどなく、
この時点では世界で最も進歩的な民法と言ってよいでしょう。
法的に妻の名字を名乗ることが可能というのは、
当時のほかの国には例がなかったのですよね。
実際には妻の名字を選ぶケースはほとんどないとはいえ、
文言上は男女平等ということもじゅうぶん画期的でした。
欧米諸国の家族法も夫婦の名字に関しては
前時代の家父長制にもとづく仕組みがまだ残っていて、
夫の名字を名乗るのがとうぜんだったのでした。
敗戦直後の日本は、世界でもっとも進んだ
家族法を持つ国だったということです。
現行民法の制定にあたった人たちは、夫婦どちらの名字でも
選べるけれどかならず夫婦同姓としておけば、
従来の社会通念から夫の名字を名乗らせることができるけど、
文言上は男女平等だと言ってGHQを納得させることが
できるはずと考えたのでした。
「現行法は男女どちらの姓も選べるから平等?」
「選択的夫婦別姓のまとめ(10)」
「文言上男女平等」で「妻の名字を選べる」というのは、
当時の基準でかなり進歩的だったので、
「これならじゅうぶん男女平等と言えるだろう」と、
GHQは納得したこともあったのではないかと思います。
欧米諸国では1970年代から、女性もキャリア維持などのため
非改姓結婚をする権利を要求するようになってきます。
アメリカ合衆国の名前闘争はその顕著なものでした。
その後、夫婦別姓や結合姓を認めるなどして、
妻が生来の名字を結婚後も残せるよう、
家族法を改正する国がつぎつぎと出てきます。
1990年代までには、欧米の民主主義国のほとんどが、
夫婦別姓が選択できるなどして、女性の非改姓結婚の
権利が認められるようになります。
21世紀には夫婦別姓が認められず、女性の非改姓結婚をする権利が
保証されない国は、世界中でもほぼ日本だけとなりました。
いまや日本は世界でもっとも遅れた家族法を
持つ国となったということです。
「世界の夫婦別姓」
>現行民法と夫婦別姓訴訟
さらに記事では
日本の場合は、条文上は差別的なものではないので、と書いてあります。
「この規定は性差別」と訴訟を起こすことはできません。
夫婦同姓強制の民法に対する訴訟が、比較的最近までなかったのは、
まさに「夫婦どちらの名字も選べるから男女平等であり憲法違反ではない」
という判決が出ることを懸念したからです。
2011年になって、ようやく夫婦別姓訴訟が起こされます。
2013年に1審判決、2014年に2審判決が出て、
ともに原告は棄却されましたが、
判決では「夫婦どちらの名字でも選べるから」うんぬんは、
さすがに(?)理由にはなっていないです。
名字を含めて夫婦同一の権利の保証を主張し、
委員会が繰り返し勧告している女子差別撤廃条約を
原告が根拠にしたので、「夫婦どちらの名字でも選べるから」は
理由にできないと考えたのでしょうか?