今回は民主党の問題を中心にお話したいと思います。
「金融緩和をどう考えるのか」
(はてなブックマーク)
「民主党支持者としての執行部のアベノミクス批判への愚痴」
(はてなブックマーク)
インフレのときに金融を引き締め、デフレのときに金融緩和をして、
経済の循環を平準化させるという金融安定化政策は、
いわゆる先進国の資本主義国では一般的なことで、
取り立てて変わったことではないです。
森永卓郎氏の記事を見ても、導入していないのは
日本とスウェーデンくらいだとあります。
実際アメリカ合衆国はリーマンショックのとき、
大規模な金融緩和を行ない、不況から脱出しています。
金融緩和政策を行なわないほうが特例ということです。
日本の政治勢力の金融緩和政策に対する賛否ですが、
はなはだやっかいなことに右の政党は賛成、左の政党は反対と、
きっちりと割れてしまっているのですね。
この図は2012年12月の衆院選の前のものですが、
2014年12月現在も、なくなった政党があるとはいえ、
左右で金融緩和に対する状況は変わっていないと言えます。
かくして金融緩和に賛成だけれど、ほかではリベラルな政策を支持するかた、
とくに子育て世代や社会的弱者への再分配も重視するかたの
投票するさきがなくなるのですよね。
じつは民主党も与党時代にデフレ脱却のために、
金融緩和政策を導入する動きがあったのですよ。
「デフレから脱却し景気回復を目指す議員連盟」なるものが
2010年6-7月ごろに作られたのでした。
「新政権で金融緩和、円安進むー民主のデフレ脱却議連事務局長」
「民主デフレ脱却議連、インフレ目標導入など財務相に提言」
2010年の参院選の敗北はデフレ脱却の方策を打ち出さずに
消費税増税の議論を行なったことにあるとして、
金融緩和によって物価上昇率を2-3%にして
失業率の最小化を図り、そのために日銀法を改正するというものです。
「デフレ脱却法案」の提出の準備も行なっていました。
これらはまさにいま安倍政権が「アベノミクス」と称して
実行している金融緩和政策にほかならないです。
かくして金融緩和によって経済を安定化させたために、
ほかの政策がどれもまったく支持できないにもかかわらず、
2年経ったいまもそこそこの支持を保っているのでした。
民主党政権下では結局、金融緩和は行なわれなかったのでした。
その結果デフレ不況が長引き、民主党政権は支持される要素がなくなり、
2012年の総選挙の空前の大敗で幕を閉じたのでした。
民主党が与党時代に金融緩和政策を行なっていれば、
もっと民主党政権は延命されたであろうことは、
安倍政権の支持率が落ちないことから予想がつきます。
そして民主党が金融緩和を行なう機会はじゅうぶんあったのですから、
かえすがえずも残念となるのでした。
議連まで発足させたのに、なぜ民主党政権で金融緩和が
政策として実現することがなかったのかは、
例によって例のごとく(?)ガバナンスの問題のようです。
2013年3月3日エントリで、民主党の意思決定の仕組みは
不透明なトップダウンだというお話をしました。
「脱デフレ」も党内でかなりお話が進んでいたにもかかわらず、
首脳部の数人からかたくなに反対されたのでした。
「“印籠”と化していた「マニフェスト」 落選議員が語る【民主党崩壊】の理由Vol.3」
宮崎:「リフレ政策」という意味では、池田先生と私は
ずっと活動してきたわけですが、やはり、トップダウンの党だから、
トップの人が「リフレは正しいことではない」という考えだったからですよ。
池田:今、与党がやっている金融政策とほぼ同じ内容を
私は2010年の参院選のマニフェストに盛り込むべきだと主張し、
いいところまでいったんですよ。が、最後の最後にダメになってしまった。
トップの側近の長老が歴史を誤解しているような人だった。
高橋是清が戦後のハイパーインフレを起こしたって言う方だったから。
宮崎:我々の実力不足としか言いようがありませんが、
首脳部の数人が頑なだと、党全体の大勢がどうあっても動かないわけですよ。
同時に、リフレ政策については、「官僚政治」の話とも無関係ではありません。
そもそも財務省的感覚に金融緩和への嫌悪感があります。
それに加えて、霞ヶ関一丸となって消費増税を
実現させるという流れの中で、増税の障害となりうる金融緩和は
やるべきではないという意思があったわけです。
はてなの匿名ダイアリーを見ると、金融緩和に対しては、
バブルの時代のトラウマがあって(わたしもかかるバブル時代の
トラウマはわからないのですが)日本銀行や、マスコミ、
識者のあいだにも金融緩和アレルギーが蔓延しているらしいです。
バブル時代に金融緩和をやりすぎた反動で、
とにかくインフレは悪だと思い込むようになり、
金融緩和自体を「自民党的悪政」と考えられるようになったみたいです。
民主党の幹部にいた金融緩和に無理解な人たちも、
おそらく同種のアレルギーに陥っているのでしょう。
上述の財務省の金融緩和への嫌悪感も、同様のものと思います。
それに加えて財務省には、金融緩和が消費税増税の邪魔になるという
目先のもくろみもあったことが指摘されています。
ここで、金融安定化政策を適切に行ないつつ
再分配にも目配せができる政治勢力こそ支持したい
というかたは、たくさんいるだろうと思います。
ところが最初にお話したように、金融緩和に理解があるのは
右の政党であり、左の政党は理解がないところばかりです。
http://anond.hatelabo.jp/20141125174047
私が望む経済政策は、金融政策によって過度なインフレやデフレを抑えつつ、
子育て世代や社会的弱者への厚い再分配や余計な規制の緩和、
同一労働同一賃金を実現して世代間格差の緩和や財政健全化を目指すことです。
そんな政党があれば今すぐ飛びつきます。飛びつきたくてしょうがないです。
そして再分配に理解があるのは左の政党であり
(11月30日エントリで、民主党のマニフェストは
社会的弱者への配慮はできていることをお話しました)、
右の政党は再分配には理解がないところばかりなのですよね。
アベノミクスには再分配に関する政策が欠けていることは、
多くの識者が指摘するところだと思います。
2年前に森永卓郎氏は、リベラル勢力が金融安定化政策に
理解がないので、自分の支持する政党がないと述べていたのでした。
いまもおなじ悩みに突き当たるかたは、
はてなの匿名ダイアリーのかたを含めて多いのでしょう。
http://www.magazine9.jp/morinaga/121212/
私は、リベラル勢力のなかにインフレターゲットを
支持するところが出てきてほしいと切に願っている。
そうでないと、投票する先がなくなってしまうからだ。